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24.婚約破棄に至る何かなのでは?
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フローラ姫の言葉に唖然とした。
私とフローラ姫のどちらが大事かとカールが責めるから。 いや、どうでもいいのだけど……なんでそんな事を言うのかな? って、その質問って、それっておかしくない? って。
ほら、一応、一応は、私が婚約者だし。
カールの愛情なんて欲しくはないけど。
絶縁したいくらいだけど。
「ノーラは私の婚約者ですよ? ですが、それでも……姫様もノーラも私にとっては大事な方です。 ただ、大事にも色々ありまして「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさぁああああああい!! はっきりしてよ!! その女の前で、ハッキリと言ってちょうだい私が大事だって!!」」
カールの表情はかたまり、その後、カールの視線は一度私に向けられ、溜息と共にやれやれと肩を竦めて見せたのだ。 まるで、仕方がない人なんですよ。 そう言っているかのように。
だから……許してください……違う、気にしないで下さいかな? そんな事を言われているように感じた。
カールは、フローラ姫の前に膝をつき、優雅に手をとり口づけだす。
「貴方は、私を導く女神のような方です」
「そう言う上っ面の言葉ばかりを聞きたい訳じゃないの!! 私は、その女と私どっちが大事なのかはっきりしてと言っているのよ!! 私は、国を捨てて貴方についてきたのよ!! どうして、私の愛情に報いてはくれないのよ!!」
駄々っ子のように甲高い声でカールに訴えるフローラ姫を、唖然としながら見てしまっていた。
「えっと……、おめでとうございます。 お幸せになってください」
ソレで出て行ってくれるなら楽でいい。
そう思ったのだ。
「違います。 勘違いしないでください」
これは私に向けられたカールの言葉。
「何よ!! 私の事を大切だと言ったくせに!!」
カールを責めるフローラ姫。
で、カールと言えば私に対して必死にアピールしてくるわけだ、秒単位で冷える~~。
「私達を……この国の大切な方々を理不尽から救うために、フローラ姫は故国を捨てた方なのです。 今はただ、環境の違う地に頼れる相手もおらず不安定なのでしょう。 居場所もなく不安なのです。 自分の居場所を見つけ、寄りべを見つければ姫様も心穏やかとなり落ち着くはずです。 私は姫君を休ませて差し上げたいただソレだけなのです。 私とノーラの話は後日改めてでよろしいでしょうか?」
そんな事をマジマジと言うのだから、フローラ姫は怒りまくっている。 怒りが溢れすぎていて、私は物凄い眼光で睨まれた。 なのにカールは私に言うのだ。
「モラン・ランドール殿、エクス、その二人が戻れたのは姫様のお陰なのですよ」
子供に言い聞かせるような言葉。
加護の強制力は全く発動していないから……私は私の意志でどうするか決めなければいけないのだ。
カールに好意等欠片も無いのだから、さっき言った言葉が全て『お幸せに』と言う奴。
首をかしげて考える。
「どうぞ、お好きになさってください。 ですが、貴方が、私の邸内で勝手をするのは違いますよね?」
「これは、社交界を知らない貴方には分からない事なのでしょうが、必要な事なのです。 全てが貴方のためなのですよ」
「そうかしら? だって、私は経済を通じて王族、貴族達と上手くやっているわ。 ここに庭園を造り、お茶会を開く必要なんて感じません」
「それがずれていると言うのですよ。 貴族社会にとって、情報、人との関わりは何よりも重要なものなのですからね。 それに、彼女は先ほども言いましたが、あのモラン・ランドールと、貴方の付き人であるエクスの恩人でもあるのですから、彼女がこの国で上手くやっていくための自立を助けるべきではありませんか?」
「お爺様は戻らなかったわ……。 それに伯父様もエクスも、それこそお爺様も自分の身一つであれば戻るだけの力はお持ちです」
「その考えが、アラホマの乱を起こしてしまったのですよ!!」
声高に責められた。
「とにかく!! 庭はもう荒らさないで」
ふぅ……やれやれと言わんばかりの溜息が私を責めていたが……それでもカールの加護は感じなかった。 そして、私自身の加護もなんだか調子が悪い。
「だから!! 私の話を聞きなさいって言っているでしょう!! カール、カール、どうしてそんな女ばかり気にするのよ!! 私を、愛していると言ったでしょう」
ひんやり……。
「……お邪魔なようなので行きますが、庭、これ以上なにかしたら……いえ、お二人とも」
屋敷から出ていけと言おうとしたところ、姿を隠したままの黒狼が私の服をクイクイと引いて止められ、私は溜息をつく。
「じゃぁ、庭は触らないで」
冷ややかな視線で、未だカールとカールに抱き着くフローラ姫へと視線をチラリと向けただけでその場を去る事にした。
「ド田舎臭い庭から、最先端の庭園に変えようって言っているんだから!! 恩知らずの事を言わないでよ!! 侯爵ごときが!!」
う~ん
色々と悩ましい。
旧館へと戻り、私は風呂に入った。 と言うか、エクスも黒狼を風呂に入るよう、アミタに叱られた。 何しろ庭で盛大に焚火(?)をされた訳だから、皆が灰で黒くなっている。 まぁ、お兄ちゃんは元々黒いけど……。
不意に私は自分の言葉に心の中で笑っていた。
婚約者を略奪された?しようとされている? そんな状況のはずなのに何も思わなかったし衝撃的な物も無かった。 数日前まではカールを好きになっていた気がして、それが加護の強制力だと知ってなんだか傷ついた気分になったけれど、今は妙にスッキリとしていた。
湯につかりながら私は、婚約破棄のための条件を指折り数えた。
「これぐらいあれば十分かな?」
なんて思っていたんだけど、現実は甘く無かった。
「カールと殿下が、何をやらかそうとしているのかを知るためにも、現状を維持し、無知な弱者を演じて下さい。 と言うのがモラン様、そして王族議会との決定となりました」
王族議会と言うのは、政治を離れた年配の王族達が国や貴族を監視するシステムで、王族全員の意見が一致した時には、国王よりも強い権力が発動される組織とされている。 祖母が国王や王太子、王宮内の要人をたぶらかした時に定められたルールだそうだ。
ややこしい……。
そんな感じで、私達は仕方なく現状を見守る事になった。
私とフローラ姫のどちらが大事かとカールが責めるから。 いや、どうでもいいのだけど……なんでそんな事を言うのかな? って、その質問って、それっておかしくない? って。
ほら、一応、一応は、私が婚約者だし。
カールの愛情なんて欲しくはないけど。
絶縁したいくらいだけど。
「ノーラは私の婚約者ですよ? ですが、それでも……姫様もノーラも私にとっては大事な方です。 ただ、大事にも色々ありまして「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさぁああああああい!! はっきりしてよ!! その女の前で、ハッキリと言ってちょうだい私が大事だって!!」」
カールの表情はかたまり、その後、カールの視線は一度私に向けられ、溜息と共にやれやれと肩を竦めて見せたのだ。 まるで、仕方がない人なんですよ。 そう言っているかのように。
だから……許してください……違う、気にしないで下さいかな? そんな事を言われているように感じた。
カールは、フローラ姫の前に膝をつき、優雅に手をとり口づけだす。
「貴方は、私を導く女神のような方です」
「そう言う上っ面の言葉ばかりを聞きたい訳じゃないの!! 私は、その女と私どっちが大事なのかはっきりしてと言っているのよ!! 私は、国を捨てて貴方についてきたのよ!! どうして、私の愛情に報いてはくれないのよ!!」
駄々っ子のように甲高い声でカールに訴えるフローラ姫を、唖然としながら見てしまっていた。
「えっと……、おめでとうございます。 お幸せになってください」
ソレで出て行ってくれるなら楽でいい。
そう思ったのだ。
「違います。 勘違いしないでください」
これは私に向けられたカールの言葉。
「何よ!! 私の事を大切だと言ったくせに!!」
カールを責めるフローラ姫。
で、カールと言えば私に対して必死にアピールしてくるわけだ、秒単位で冷える~~。
「私達を……この国の大切な方々を理不尽から救うために、フローラ姫は故国を捨てた方なのです。 今はただ、環境の違う地に頼れる相手もおらず不安定なのでしょう。 居場所もなく不安なのです。 自分の居場所を見つけ、寄りべを見つければ姫様も心穏やかとなり落ち着くはずです。 私は姫君を休ませて差し上げたいただソレだけなのです。 私とノーラの話は後日改めてでよろしいでしょうか?」
そんな事をマジマジと言うのだから、フローラ姫は怒りまくっている。 怒りが溢れすぎていて、私は物凄い眼光で睨まれた。 なのにカールは私に言うのだ。
「モラン・ランドール殿、エクス、その二人が戻れたのは姫様のお陰なのですよ」
子供に言い聞かせるような言葉。
加護の強制力は全く発動していないから……私は私の意志でどうするか決めなければいけないのだ。
カールに好意等欠片も無いのだから、さっき言った言葉が全て『お幸せに』と言う奴。
首をかしげて考える。
「どうぞ、お好きになさってください。 ですが、貴方が、私の邸内で勝手をするのは違いますよね?」
「これは、社交界を知らない貴方には分からない事なのでしょうが、必要な事なのです。 全てが貴方のためなのですよ」
「そうかしら? だって、私は経済を通じて王族、貴族達と上手くやっているわ。 ここに庭園を造り、お茶会を開く必要なんて感じません」
「それがずれていると言うのですよ。 貴族社会にとって、情報、人との関わりは何よりも重要なものなのですからね。 それに、彼女は先ほども言いましたが、あのモラン・ランドールと、貴方の付き人であるエクスの恩人でもあるのですから、彼女がこの国で上手くやっていくための自立を助けるべきではありませんか?」
「お爺様は戻らなかったわ……。 それに伯父様もエクスも、それこそお爺様も自分の身一つであれば戻るだけの力はお持ちです」
「その考えが、アラホマの乱を起こしてしまったのですよ!!」
声高に責められた。
「とにかく!! 庭はもう荒らさないで」
ふぅ……やれやれと言わんばかりの溜息が私を責めていたが……それでもカールの加護は感じなかった。 そして、私自身の加護もなんだか調子が悪い。
「だから!! 私の話を聞きなさいって言っているでしょう!! カール、カール、どうしてそんな女ばかり気にするのよ!! 私を、愛していると言ったでしょう」
ひんやり……。
「……お邪魔なようなので行きますが、庭、これ以上なにかしたら……いえ、お二人とも」
屋敷から出ていけと言おうとしたところ、姿を隠したままの黒狼が私の服をクイクイと引いて止められ、私は溜息をつく。
「じゃぁ、庭は触らないで」
冷ややかな視線で、未だカールとカールに抱き着くフローラ姫へと視線をチラリと向けただけでその場を去る事にした。
「ド田舎臭い庭から、最先端の庭園に変えようって言っているんだから!! 恩知らずの事を言わないでよ!! 侯爵ごときが!!」
う~ん
色々と悩ましい。
旧館へと戻り、私は風呂に入った。 と言うか、エクスも黒狼を風呂に入るよう、アミタに叱られた。 何しろ庭で盛大に焚火(?)をされた訳だから、皆が灰で黒くなっている。 まぁ、お兄ちゃんは元々黒いけど……。
不意に私は自分の言葉に心の中で笑っていた。
婚約者を略奪された?しようとされている? そんな状況のはずなのに何も思わなかったし衝撃的な物も無かった。 数日前まではカールを好きになっていた気がして、それが加護の強制力だと知ってなんだか傷ついた気分になったけれど、今は妙にスッキリとしていた。
湯につかりながら私は、婚約破棄のための条件を指折り数えた。
「これぐらいあれば十分かな?」
なんて思っていたんだけど、現実は甘く無かった。
「カールと殿下が、何をやらかそうとしているのかを知るためにも、現状を維持し、無知な弱者を演じて下さい。 と言うのがモラン様、そして王族議会との決定となりました」
王族議会と言うのは、政治を離れた年配の王族達が国や貴族を監視するシステムで、王族全員の意見が一致した時には、国王よりも強い権力が発動される組織とされている。 祖母が国王や王太子、王宮内の要人をたぶらかした時に定められたルールだそうだ。
ややこしい……。
そんな感じで、私達は仕方なく現状を見守る事になった。
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