勇者科でたての40代は使えない

重土 浄

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第五話 復活祭 「若者たち、晴れ舞台に立つ。おじさん、筋肉痛で休み」

1 【第五話 開始】

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 上野駅は改修工事の騒音で満たされていた。

 ダンジョン入り口と山手線ホーム、それをつなぐエントランス部分のみではあるが、長い間、廃墟であった上野駅は新たな役割、冒険者たちのプラットホームとして生まれ変わろうとしていた。

 ホリーチェたちのパーティーがダンジョン内のルートを開通して一週間が経っていた。

 上野駅で一番広い改札前のスペースには、仮設のイベント用ステージが組まれている。

 本日の「上野駅復活祭」のメインステージだ。

 多くのスタッフが音響施設や照明、ネットワーク機器の準備に忙しそうな中、ホリーチェたちパーティーのメンバー一行が所在なさげに立っていた。

 「尾地が逃げた理由が少しわかったな」

 リーダーで最年少のホリーチェがこぼす。

 「まさかこんな格好させられるとはな…」

 スイホウも自分の着ている服をいじりながら答える。

 「礼服、もしくはそれに準じたフォーマルな服、なんてもってるわけないだろ」

 ジンクも文句を言う。式典への出席を求められ、そのさいのドレスコードにみな困り果てていた。そこで政府側から貸し出されたのが、今彼女たちが着ている礼服だ。

 彼ら冒険者はその装備にこそ金を使い、フォーマルな服などとは一生縁がないものと思っていたので、一着もそれに準じたものがなかった。やむなく貸し出された服を着ている。白とブルーのおしゃれなものであったが、ボディラインがはっきりと見え 

 「チョットスカート短いよね」

 シンウも腰をかがめてスカートを押さえつけている。

 「ま、私はたまにはこういうのもいいかなーって」

 ニーは普段着れない物を着れて楽しそうにくるりと回る。短いスカートに他のメンバーはヒヤヒヤとしている。

 「なんで俺だけ短パン?」

 「なんで私だけ子ども用なのだ?」

 ジンクとホリーチェが文句を言う。

 ジンクはともかく、ホリーチェのは明らかに子供用で、彼女の愛らしさが前面に出てしまうお洋服だ。

 思わず他の女性メンバーの目がハートになるくらい愛らしい。なんども抱きつかれてホリーチェは辟易としている。

 「たしかにあの中年にこの服は酷だったかもな」

 スイホウはその姿を想像して笑う。

 「ほんとに来ないんだね、尾地さん」

 シンウは残念がる。

 「借りにしといたから、いつかタダでこき使ってやろう」

 ホリーチェが悪い顔で言う。尾地は働くほどに借りが増えていくようだ。



 本日の彼女たちパーティーの予定は、「上野駅復活祭」のメイン会場でのルート開通者への表彰式で表彰を受け。その後は彼女たちと関係のない、

 山手線レール復興式、鉄道寺社の長による開通宣言。改札口設置式。

 ギルド長による挨拶と、冒険者ギルド上野事務所の開設宣言。

 お昼になってようやく出番が来て、山之手ダンジョン上野口のテープカット式典に出席してテープカットを行う。

 つまり表彰とテープカットだけが彼女たちの本日の仕事だ。

 「今日はダンジョンなしだね」

 ニーは携帯を確認しながら聞いた。

 「今日はなし。明日は…入るつもりだから、みんなそのつもりで」

 リーダーのホリーチェの通達に全員賛成の返事を返す。

 「今日は入れないのは残念だな」

 スイホウはダンジョン開通当日に参戦できないことが残念なようだ。

 「そりゃ!俺たちルート開通者なんだからさ~。名誉の不参戦だって」

 ジンクは特権の優越に浸っている。

 上野ダンジョン口はまだ正式開通していないので閉じられた状態だ。さらにその隣りにある西日暮里のダンジョン口も臨時閉鎖されている。これは式典の日からさかのぼって一週間前からそうなっている。

 新たな上野ダンジョンという狩場を、ギルドによる解禁以前に、不届きな冒険者によって荒させないための措置だ。

 久々の新ダンジョン。冒険者たちの盛り上がりは高く、新たなゴールドラッシュになると期待されている。

 そのゴールドラッシュを期待して上野駅周辺の開発は進んでいる。宿泊施設に様々なアイテムショップ、娯楽施設に酒場。新たなダンジョン城下町だ。

 ただ、未だ物流の大動脈である鉄道が復活してないため、物資はほとんどない。今日の鉄道復活から、全ては始まる。

 シンウは上野駅の改修をしている職人たちの仕事をボーッと眺めていた。

 彼ら職人は、崩れて廃墟になった売店にメモリーを吹きかけ、ひたすら念じる。すると、店舗は徐々に徐々に、破壊前の新品の姿をジリジリと取り戻していく。

 「あれがメモリーの正しい使い方なんだよね…」

 彼女のつぶやきにスイホウが答える。

 「メモリーの再生能力か。あれだって使ってるあの職人が、元の形をよく知っているからできることだからな。知らないとあんなに上手くはいかない。ゲドゲドな壁とか作っちゃうだろうな、私だったな」

 「ゲドゲドって、どんなんそれ」

 「私の剣もニーの魔法も、正確なイメージが出来なければゲドゲドになっちゃう。メモリーの取り扱いは冒険者も建築家も、イメージが正確でないと成り立たない仕事だ」

 「私達がメモリーを取ってきてるから、みんなの仕事が回ってるって、誇っていいんだよね?」

 「ったりめーよ。俺らがドカンとモンスターを倒して、ドカンとメモリー持ってくりゃ、ドカンドカンと駅が復活する。もーう、この上野駅は俺らが建てたみたいなもんよ!」

 姉のやや気弱な発言を弟のジンクが馬鹿みたいな発言で陽気に返してあげた。

 「そうだよね。今日は表彰までされちゃうんだもんね」

 シンウも自分がナイーブになっていたのを自覚した。普段とは違う今日の普通じゃなさに少し気持ちが揺れていたようだ。

 「おい、中継見てみろ、もうすぐらしいぞ」

 会話に加わってなかったホリーチェが自分の携帯を見ながら言った。

 各自が携帯で式典中継のチャンネルを開くと、鉄道寺社による線路再生の式典列車の中継をしていた。

 



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