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第35話 紅蓮の女海賊の引退宣言と、黄金の野獣
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【視点:ローズマリー】
リバティ・カジノのVIPルーム。
そこは、銀河の裏社会を牛耳る魑魅魍魎たちが集う、欲望の坩堝。
わたくしは今、その中心で、群がる有象無象の男たちに囲まれていた。
会話の内容は、多岐にわたる。
「新たな密輸ルートの件ですが……」
「ブラッディ・ローズ様、今夜はぜひ我が船で……」
下卑た視線、粘つくような声。
ああ、なんて退屈で、不潔な時間。
わたくしの心はもう、ここにはありませんのに。
「皆様、長らくのご愛顧、誠にありがとうございました」
わたくしは、シャンパングラスを掲げ、凛とした声で宣言した。
「この度、わたくしは『血生臭いお仕事』から足を洗わせていただきましたの」
どよめきが広がる。
無理もありませんわね。
泣く子も黙る女海賊の引退宣言ですもの。
「これからは、ただの『ローズマリー』として。もしご縁がございましたら、真っ当なお取引をしていただけると幸いですわ」
「そ、そんな…!ブラッディ・ローズ様!あなた様は、我々、宇宙海賊たちの、輝ける広告塔なのですよ!男も女も、種族さえも問わず、誰もが、あなた様の、その美貌と、強さ、そして、何よりも、その自由な生き様に、憧れているのです!どうか、どうか、お考え直しを…!」
脂ぎった顔の小太りの商人が、泣きそうな声で、食い下がってきた。
「ふむ。女海賊『ブラッディ・ローズ』を、引退なさる、と。それは、実に、惜しい話だ。だが、もし、そうなのであれば、我が、アステリア第3自治区の、統治者の一人として、その辣腕を振るってみる気はないかな?君のような、圧倒的なカリスマと、美貌の持ち主であれば、我が自治区の住民も、きっと、狂喜して、君を迎え入れるだろう。もちろん、私という、頼れる『パートナー』と共に、だがね、ぐふふふ」
爬虫類人の男が、鱗に覆われた手をわたくしの肩に伸ばしてくる。
あら、汚らわしい。
「あらあら、光栄なお言葉ですこと」
わたくしは、その手を蝶のように軽やかに躱した。
「ですが、残念ながらお断りさせていただきますわ。わたくし、この身を捧げるべき『殿方』は、既に心に決めておりますので」
仮面の下で、愛しいあの人の顔を思い浮かべる。
不器用で、粗野で、けれど誰よりも優しい、赤髪の海賊様。
あの方の隣に立つためには、わたくしも身ぎれいにしなければなりませんもの。
そのあとも、退屈な事務作業でもこなすかのように、次々と群がってくる欲望に塗れた男たちを、微笑みで、あしらっていく。
大半の有力者との挨拶を終え、ようやく一息つこうとした、その時。
VIPエリアの扉が蹴破られるように開き、野獣の咆哮が響き渡った。
「―――ブラッディ・ローズゥゥゥゥッ!!!」
現れたのは、黄金のスーツに身を包んだ、巨大な獅子の獣人。
獣人海賊団「ゴールド・ライオン」の首領、レグルス。
ああ、また面倒なのが来ましたわね……。
「あらあら、これはレグルス様。いつもながら、百獣の王のようなお元気さ、感服いたしますわ」
「フンッ! 貴様ごときに世辞を言われる筋合いはない!」
レグルスは血走った目でわたくしを睨みつけた。
「勝手に『引退』などとふざけたことを! この俺様が許すと思うか! 今すぐその戯言を撤回し、俺様と、雌雄を決する、正々堂々たる決闘をしろ!」
「まあ、決闘ですって?」
わたくしは肩をすくめる。
「ここは紳士淑女が集う大人の社交場ですわよ? そのような血生臭く無粋な真似、いかがなものかしら?」
「フンッ! ならば、この場所に最も相応しい『勝負』があるではないか!」
レグルスは鋭い牙を剥き出しにして、ニヤリと笑った。
「『スターカード』で勝負だ! もし俺様が勝ったら……貴様は今日から、このレグルス様の『妻』となるのだ! どうだ、不足はあるまい!」
妻、ですって?
このわたくしが、あなたのような野獣の?
冗談も休み休み言っていただけませんこと?
わたくしが妻となる『殿方』は、既に心に決めておりますのに!
ですが……。
そうですわね……。
これ以上つきまとわれるのはしゃくですわね。
わたくしは扇子で口元を隠し、冷ややかな計算を巡らせる。
この場で叩き潰し、完全に黙らせる必要がありますわね。
それに……。
「ふふ、よろしいでしょう」
わたくしは妖艶に微笑む。
「その熱烈な『勝負』、このローズマリー、謹んでお受けいたしますわ。ただし、このわたくしが勝った暁には、金輪際、わたくしの前に、そのお顔を見せないと、この場で、フォワードの大いなる御力に誓ってくださいますかしら?」
「フハハハハ! 面白い! それでこそ俺様が見込んだ女だ! いいだろう、始めよう!」
カジノ中が沸き立った。
「紅蓮の薔薇」対「黄金の獅子」。
世紀の対決。
群衆が波のように押し寄せる中、わたくしはふと、視線を感じた。
ルーレットテーブルの隅。
腕を組み、心配そうにこちらを見つめる、赤い髪の男。
ベレット様……。
ふふ、見ていてくださいまし。
これは、わたくしたちの『勝負』。
「さあ、参りましょうか」
わたくしはドレスの裾を翻し、戦場へと向かう。
愛する人のために、この身を賭ける。
ああ、なんて甘美で、刺激的なギャンブルでしょう。
リバティ・カジノのVIPルーム。
そこは、銀河の裏社会を牛耳る魑魅魍魎たちが集う、欲望の坩堝。
わたくしは今、その中心で、群がる有象無象の男たちに囲まれていた。
会話の内容は、多岐にわたる。
「新たな密輸ルートの件ですが……」
「ブラッディ・ローズ様、今夜はぜひ我が船で……」
下卑た視線、粘つくような声。
ああ、なんて退屈で、不潔な時間。
わたくしの心はもう、ここにはありませんのに。
「皆様、長らくのご愛顧、誠にありがとうございました」
わたくしは、シャンパングラスを掲げ、凛とした声で宣言した。
「この度、わたくしは『血生臭いお仕事』から足を洗わせていただきましたの」
どよめきが広がる。
無理もありませんわね。
泣く子も黙る女海賊の引退宣言ですもの。
「これからは、ただの『ローズマリー』として。もしご縁がございましたら、真っ当なお取引をしていただけると幸いですわ」
「そ、そんな…!ブラッディ・ローズ様!あなた様は、我々、宇宙海賊たちの、輝ける広告塔なのですよ!男も女も、種族さえも問わず、誰もが、あなた様の、その美貌と、強さ、そして、何よりも、その自由な生き様に、憧れているのです!どうか、どうか、お考え直しを…!」
脂ぎった顔の小太りの商人が、泣きそうな声で、食い下がってきた。
「ふむ。女海賊『ブラッディ・ローズ』を、引退なさる、と。それは、実に、惜しい話だ。だが、もし、そうなのであれば、我が、アステリア第3自治区の、統治者の一人として、その辣腕を振るってみる気はないかな?君のような、圧倒的なカリスマと、美貌の持ち主であれば、我が自治区の住民も、きっと、狂喜して、君を迎え入れるだろう。もちろん、私という、頼れる『パートナー』と共に、だがね、ぐふふふ」
爬虫類人の男が、鱗に覆われた手をわたくしの肩に伸ばしてくる。
あら、汚らわしい。
「あらあら、光栄なお言葉ですこと」
わたくしは、その手を蝶のように軽やかに躱した。
「ですが、残念ながらお断りさせていただきますわ。わたくし、この身を捧げるべき『殿方』は、既に心に決めておりますので」
仮面の下で、愛しいあの人の顔を思い浮かべる。
不器用で、粗野で、けれど誰よりも優しい、赤髪の海賊様。
あの方の隣に立つためには、わたくしも身ぎれいにしなければなりませんもの。
そのあとも、退屈な事務作業でもこなすかのように、次々と群がってくる欲望に塗れた男たちを、微笑みで、あしらっていく。
大半の有力者との挨拶を終え、ようやく一息つこうとした、その時。
VIPエリアの扉が蹴破られるように開き、野獣の咆哮が響き渡った。
「―――ブラッディ・ローズゥゥゥゥッ!!!」
現れたのは、黄金のスーツに身を包んだ、巨大な獅子の獣人。
獣人海賊団「ゴールド・ライオン」の首領、レグルス。
ああ、また面倒なのが来ましたわね……。
「あらあら、これはレグルス様。いつもながら、百獣の王のようなお元気さ、感服いたしますわ」
「フンッ! 貴様ごときに世辞を言われる筋合いはない!」
レグルスは血走った目でわたくしを睨みつけた。
「勝手に『引退』などとふざけたことを! この俺様が許すと思うか! 今すぐその戯言を撤回し、俺様と、雌雄を決する、正々堂々たる決闘をしろ!」
「まあ、決闘ですって?」
わたくしは肩をすくめる。
「ここは紳士淑女が集う大人の社交場ですわよ? そのような血生臭く無粋な真似、いかがなものかしら?」
「フンッ! ならば、この場所に最も相応しい『勝負』があるではないか!」
レグルスは鋭い牙を剥き出しにして、ニヤリと笑った。
「『スターカード』で勝負だ! もし俺様が勝ったら……貴様は今日から、このレグルス様の『妻』となるのだ! どうだ、不足はあるまい!」
妻、ですって?
このわたくしが、あなたのような野獣の?
冗談も休み休み言っていただけませんこと?
わたくしが妻となる『殿方』は、既に心に決めておりますのに!
ですが……。
そうですわね……。
これ以上つきまとわれるのはしゃくですわね。
わたくしは扇子で口元を隠し、冷ややかな計算を巡らせる。
この場で叩き潰し、完全に黙らせる必要がありますわね。
それに……。
「ふふ、よろしいでしょう」
わたくしは妖艶に微笑む。
「その熱烈な『勝負』、このローズマリー、謹んでお受けいたしますわ。ただし、このわたくしが勝った暁には、金輪際、わたくしの前に、そのお顔を見せないと、この場で、フォワードの大いなる御力に誓ってくださいますかしら?」
「フハハハハ! 面白い! それでこそ俺様が見込んだ女だ! いいだろう、始めよう!」
カジノ中が沸き立った。
「紅蓮の薔薇」対「黄金の獅子」。
世紀の対決。
群衆が波のように押し寄せる中、わたくしはふと、視線を感じた。
ルーレットテーブルの隅。
腕を組み、心配そうにこちらを見つめる、赤い髪の男。
ベレット様……。
ふふ、見ていてくださいまし。
これは、わたくしたちの『勝負』。
「さあ、参りましょうか」
わたくしはドレスの裾を翻し、戦場へと向かう。
愛する人のために、この身を賭ける。
ああ、なんて甘美で、刺激的なギャンブルでしょう。
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