幻想冒険譚:科学世界の魔法使い

猫フクロウ

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最低世界の最強魔道士

風打ち

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「今度はこっちから行くぞ」

トウヤはそう宣言すると斧のデバイスを突き出した。

すると斧頭の下部が離れ垂れ下がるような形になった。

そしてブーンと言う音と共に白っぽい紫色の牙のようなものが現れた。

(斧じゃなくて鎌だったのか。しかも可変式デバイスとはね)

形状が変化し扱い方や性質が変わる可変式デバイスは、具現化系魔法でも上位とされ、数が限られ高価な物だった。

それを地球で拝めるとは皮肉なものである。

そして刃を担っていた雷の光線が黄色から白っぽい紫に変化している。

魔法世界にも色の違う雷は存在し、それぞれ性質が変化する。

黄色は感電、紫は斬撃、となっているがこの子のはその通りだろうか?



「風打ち・第四座・・・」

トウヤが何か呟いている。魔法の詠唱だろうか?

ポーラは構え、トウヤを注視した。

またたき!」

そう言うと一瞬にして消えた。いや、一瞬でポーラの前に移動したのだ。

トウヤは低い姿勢から一気に鎌を振り抜く。付加魔法の効果で始めよりもずっと速い。

しかしそれはポーラも同じ。

付加とは違うが魔法により身体能力を上げているので見切れなくはない。

鎌の柄の長さはトウヤの身長より少しだけ短かったので、およそ140cm。

柄の中腹を持っているのでさらに短くなる。

ポーラは的確に間合いを測りかわした。これで反撃のチャンスが生まれた。

そう思ったがトウヤはさらに間合いを詰めてきた。鎌は先の方にしか刃が無い。

なので間合いを詰めてもデバイスが使いづらいはず。

何をする気かわからないが嫌な予感しかしない。ここは離れた方がいいだろう。

そう思い離れようとしたが、腹部にトウヤの手が伸びていた。

「風打ち・第五座・ふるえ!」

そう聞こえると景色がゆがんで見えた。それと同時に全身に激痛が走る。

「・・・かっ・・・・は・・・」

ポーラは声にならない叫びを上げその場で倒れ込む。

バリアジャケットがあるにも関わらず、あの風の魔法の比でない痛みが全身を貫いた。

「あんたの空間を揺らしたんだ。死ぬほど痛ぇだろ」

空間が揺れる。体の可動域に関係無く揺らされたことで、体の内側から痛みが走ったのだ。

外からの衝撃を想定したバリアジャケットでは防げない攻撃である。

「呆気なかったな」

そう言い残しトウヤは背を向け、元の場所に戻ろうとする。



不意に食らったといえなんてザマだ。

この子の未知の能力は警戒すべきだとわかっていた。それなのに・・・・

自分を戒め、冷静に考える。痛みは魔道士の仕事につきもの。ある程度なら耐えられる。

痛みから回復するまでに頭の中にある情報を整理する。



さっきトウヤは魔法名をふるえと呼んでいた。

そして効果は特定の空間を振動させ、体を無理やり揺らし痛みを与えた。

痛みに対しては対象が変われば変化するので無視すると、
ふるえとは特定の空間を振動させるというシンプルな効果だろう。

効果は魔法のことわりに合っているし、名前も効果と合っている。

ということは魔法の仕組みとしては魔法世界で知られている魔法の常識と同じである。

そして風打ちとは彼の空間操作魔法全般の呼称だろう。

そうなると厄介なのが第五座と言っていたこと。

それは少なくとも風打ちには五種類以上あると言うことだ。

現に最初のは第四座と呼び、移動の一瞬の時間を示していた。

この瞬間移動は他人に対しても有効だろうか?

監視の時に見た人が消える方法はこれなら説明出来る。

さらに彼の飛行魔法は空間操作から生まれたものだから、この風打ちの一つだろう。



ポーラはある程度情報がまとまると、反撃に出るために瞬時に立ち上がる。

「プラズマ・ランサー!」

一瞬で魔方陣を展開しトウヤに向けて雷の槍が放たれる。

普段使い慣れているので黙ってても出来たが、トウヤに気付かせるためにあえて名前を言う。

即座に反応したトウヤはデバイスを向ける。

はじき!」

そう言うと盾のようなものが現れ雷の槍を受け止めた。

すこし競り合うとトウヤが何も持っていない手を突出し拳を握った。

すると槍は中央から歪み、その歪みに吸い込まれるように消えた。

(さすが)

そう思いつつポーラは一気に距離を詰めた。

トウヤの腹部に拳をお見舞いしようとしたが、それは見切られ蹴りが飛んできた。

さっきのふるえを警戒し即座に距離をとるが、これはトウヤに読まれていた。

きり!」

そう名前を言うと振り上げた足の軌道上から風の刃が飛んできた。

名前からして斬撃と思われるので受けずに避ける。

するとトウヤはすごい体制で宙返りをし、身体を直すとすぐに追撃の蹴りを放つ。

ぬき!」

今度はレーザービームのような光線が放たれる。しかも速い。

慌てて避けようとするが速すぎて避けきれない。

間一髪で腕の籠手に当て弾いたが籠手が破壊された。

どうやら貫通力の高い光線のようだ。もし籠手で受け止めていたら腕が飛んでいただろう。

だがまだ攻撃は止まない。

トウヤは身体を大きく回し、デバイスを振り回す。

「ザンバー!」

今度はデバイスから光線が飛んできた。鎌の刃の部分だけが回転し飛んでるようだ。

これは厄介なタイプか。

魔法世界でもよく見る攻撃だったのでしっかりかわし飛んでいるものに警戒する。

「いい動きね」

戦いの素人とはいえ、これだけの連続攻撃に感心する。

「よく動けるな」

「魔道士はね、ある程度の痛みに耐える訓練を行うのよ。
命を懸けた戦いで痛みに怯んでいたら助かる命も助からないからね」

そう言いながら背後から帰ってきた刃を叩き落とす。

動きとしてはまだまだ未熟。しかし魔法の性能を生かして使う戦い方については高く評価できる。

さらに名前から察するに風打ちがさらに三種、デバイスの能力、そして未知の能力の手がかりが見えた。

ついでに言うともう一つ風打ちを使っていたと思われるので、計七種類の風打ちが確認できたと思う。



(これだけの性能をよく考えたわね)

彼の魔法は創る魔法と言っていた。

それは風打ちと言う空間操作魔法も、あのデバイスの性能も全て自分で考えたということだ。

この魔法という概念が存在しない世界でよく考えられている。

そして動きの基礎は日々の喧嘩の賜物だろう。

彼は魔法で圧倒的な未知の力でねじ伏せることはせず、ごく自然に環境に合った使い方をしていた。

そこで相手がどう動くか学び、どう動けば勝てるか考えているので、ここまで戦えている。

もちろん素人相手なので動きの無駄などは多いが、高い評価を得るためには申し分ないだろう。



そしてここまでやっても相手の命を脅かすようなことはやっていない。

殺さないで制圧する方法をしっかり考えている証だ。

これはもう合格とみて間違いないんじゃないかな?

あとはあの子が納得するれば全て解決するだろう。

ポーラはそう考えていた。
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