幻想冒険譚:科学世界の魔法使い

猫フクロウ

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局と魔法と原石たち

よくわかる魔法教室

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「そういえばポーラってマスター候補だったんだよな?
セレスってのは同じマスター候補ならポーラと同じくらいの強さと見ていいのか?」

トウヤがそう質問するとポーラ、ファイゼン、リーシャからジトッとした嫌な目で見られた。

「そうか、まずはそこから教えないといけないんだな」

「めんどくせぇ」

「まぁ魔法世界のルールを知らないんだからしょうがないよ」

三人ともやれやれという感じで、なんだかとても不愉快な気分になった。

「一応魔法世界のルールで、地球のように魔法の概念が無い世界では、制限を受けるのよ」

つまり地球では環境に加えて制限で魔法が思うように使えないらしい。

「数字で言えばおよそ十分の一くらいになるはずよ」

つまりトウヤはあの時、本来の十分の一の強さのポーラ達と戦ったということだ。

「マジ!?え?俺、大丈夫?」

今更ながら、模擬戦で自分の十倍強い人と戦うとんでもない状況になっていることを理解した。

「だから修行すんだよ」

そんな急に強くなるだろうか?

「幸いなことに二日後、トウヤにとっては四日後、今日を入れて五日あるから基礎くらいは十分でしょうね」

「基礎だけで埋まる差ではないと思うが?」

「いや、だからこそ基礎は大事だぞ」

そこへミナが話に加わる。

「乗算って意味わかるかい?魔法の基礎は能力を二倍三倍に増やしてくれるんだ」

「マジで!?」

周りのみんなを見渡すと一人を除いて一様に首を縦に振った。

そしてその一人に注目が集まる。

「そういやぁお前もかなり雑な魔法使ってたな」

リーシャが怖い目で詰め寄った。

「うにゃ、い・・・いやあ、おいらはにゃんの事かわからにゃいにゃ」

リンシェンの目が泳ぐ。

「お前も修行だ!」

「うにゃあ!嫌にゃ!おいら研究があるにゃ!」

「うるせえ!!」

「にゃああああぁぁぁぁ!」

そうしてリーシャはリンシェンをどこかに連れて行った。

「大丈夫なのか?」

「あいつ鬼教官として有名だからな」

話の途中だったが、リーシャとリンシェンのやり取りで呆気にとられてしまった。



「まずはこれだな」

休憩室の椅子に座るとテーブルの上に水の入ったコップが人数分用意された。

水には何か紙が浮いている。

「これはただのコップと水、そこに魔力の属性を感知する紙よ」

「何に使うの?」

トウヤ以外は何をするか理解しているようだ。

すると全員、両手でコップを挟むようにかざすと、水と紙に変化が現れた。

ポーラのは紙がしわくちゃになり、水が黒っぽい色に変化した。

ファイゼンのは水量が減って、水中に何かが現れ、渦を巻いている。

ティアのは紙が燃え、水が黒っぽい色に変わり渦を巻いている。

ミナのは紙が燃え、渦を巻いた状態で固まっている。

ルーのは紙が燃え、水が黒っぽい色に変わり渦を巻いた状態で固まっている。

「魔力を目に集めて見てごらん」

ポーラの指示に従うと両手に魔力が集まっていることがわかった。

「これは?」

「これは“水見式魔力判断法”と言って、最も手軽に出来る魔道士のタイプと属性を見極める方法よ」

とトウヤの問いにポーラが答える。

「水はタイプによって動きが変化するんだ。強化系は水が固まる。放出系は水の色が黒っぽく変化する。
操作系は水が渦を巻き、具現化系は水中に不純物が出来る。そして変化系は水が甘くなるんだ。ポーラのを舐めてみな」

ファイゼンに言われ水を舐めてみるとかなり甘かった。

「ほとんどの人が二種類の変化が現れるが、リーシャとルーは例外だな」

ミナが例外の説明を始める。

「リーシャは強化系一つだから水が固まるだけ、ルーは放出、操作、強化系だから三つ現れるんだ」

「例外があるってことは全タイプ得意の場合もあるのか?」

「一つの場合は力が集中しただけだからたまにある話だが、三つ以上は特別な理由が無いとありえない」

「特別な理由?」

「これよ」

ルーは左手の甲を見せた。そこには何かの模様が書かれている。

「これはうちの一族が受けている呪印よ」

「呪印って呪いかよ」

「そうよ。昔ご先祖様が凶悪なモンスターを倒した時に受けた呪いと聞いているわ。
もっとも、ある人が呪いを上書きして力としてくれたおかげで、三つのタイプ持ちになれたのだけど」

「へぇ~」とど定番の設定が来たなと感心してしまった。

「そしてこの感知紙は魔力の属性ごとに変化するの。私、ミナ、ルーは炎だから燃える。
ポーラは雷だから皺くちゃになる。ファイゼンは土だから乾燥し水を吸い上げるの」

続けてティアが属性の判別について説明した。

「こっちは沢山あるからやってみて判断するしかないわね」

ポーラはトウヤの前にコップを置く。話の続きはやってからと言う事だろう。

トウヤは皆と同じように手を翳した。






「と言うことだけど、上の意図が全く分からないの。だからやり過ぎないように気を付けてちょうだい」

「わかりました」

セレスはアローニャの言い分に了承した。

「不満そうだな」

部屋にはもう一人、男がいた。

「いえ、そんなことは・・・・」

「まるで噛ませ犬だな」

二人が言わないようにしていたことを男は言う。

「そんなことないわ!」

「そう言ってんだよ!!」

アローニャの声よりも大きい声で男は言った。その声には怒りの感情が入っているのがわかる。

未知の新人魔道士がどれだけ戦えるか、どれだけの力があるのか知りたい。

上のその考えは理解できる。

しかしその役目を数千いる魔道士の中から、パースレールの次期マスター候補であるセレスが選ばれる理由がわからない。

強さが近い魔道士は他にもいる。力が足りないなら複数人でチームを組ませることも出来る。

それなのになぜセレスだけなのか?それが納得できない。

三人とも考えることは同じだった。

「私も抗議したけど、決定事項だと繰り返すだけだったわ」

「チッ!」と舌を鳴らし、乱暴に椅子に座る男。

「そいつ殺しても文句言われねぇよな?」

「試験を見た限り、それは難しいかもしれないわ」

「チッ!」とまた舌を鳴らすと、今度は片手で頭を掻き毟った。

「責任とかは俺が受ける。セレス、お前殺す気でやれ」

「アル!」

アルと呼ばれた男、アルフォート・ハーディは今回の件でかなり怒っているようだ。

「こっちはな、大事な一人娘が危険な目に会うかもしれねぇってんだ。つべこべ言わせねぇよ」

アルフォートがこんなにも怒っている姿を見るのは、セレスがまだ小さかった時のあの事件以来である。

アローニャとアルフォートはまだ言い争っているが、セレスの耳には届かない。

両親が言い争いをしている。その原因がセレスであることが明確だ。

自分が未熟だから?自分の能力が低いから?自分がまだマスター候補だから?

だから噛ませ犬に最適だと思われた?

そう思われたことに激しい怒りを感じた。

「私は・・・・」

セレスの呟きに、言い争っていたアローニャとアルフォートが黙りセレスの様子を伺う。

「私は誰が相手だろうと全力で叩き潰すだけです」

その言葉には強い殺意を含まれていた。
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