幻想冒険譚:科学世界の魔法使い

猫フクロウ

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局と魔法と原石たち

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「う・・・ん・・・」

視界に入ったのは天井だった。

「ここ!?・・・つー・・・・」

急に起き上ってしまったせいか、身体がに痛みが走る。

「起きたか」

隣には見知った女性が横になっていた。

「ああ、私達は気を失っていたのね」

痛みがまだ残っているのでまた横になった。

「はっ、ギルドマスター様も雑務で腑抜けたな」

ステラは皮肉めいた事実を告げる。

「私達二人が先に倒れるなんてもういい年ね?」

「おい・・・」

「冗談よ、怒らないで」

18の娘を持つアローニャと何十年もマスターを務めるステラの年齢は想像に任せる。

「使い方は知ってるわよね?」

アローニャは腰のポーチから石を取り出し、ステラに渡す。

ソニアは石を受け取り、そのまま身体に押し当て、目を閉じる。

石から淡い光が発せられると光は全身へ回って行った。

アローニャももう一つ取り出して同じようにすると淡い光に包まれた。

「状況は?」

「生憎だが私も目覚めたばかりだ」

今何が起きていてどういう状況なのか知りたかったが、無理のようだ。

「シフォン。隠れてないで出てこい」

呼ばれてビクッとした名前の主は物陰から姿を見せた。

「なぜそこに隠れていたかは聞かないでおこう。その代り状況を教えろ」

「は、はい・・・」

ルーは少し怯えているようだ。だが状況報告はしっかりと伝えてくれたため、今何が起こっているか理解出来た。



「アル」

「アローニャ、目覚めたか」

「ええ、戦えないけど動けるわ。ティーナさんにも感謝しないとね」

身体には目立った外傷がないことから、回復魔法を得意とするティーナが治療したことがわかる。

「セレスは?」

「あの調子だ」

アルフォートが顎で指した先でセレスは座り込み、ガタガタ震えていた。

あの翼を広げたような姿で殺されかけた。昔の記憶を思い出すには十分である。

「アローニャもステラさんも目覚めたんだから、あとはあのガキを大人しくさせるだけだな。
と言っても今の俺たちには何も出来ねぇんだがな」

「ソニアの檻にティーナの壁か。下手に手を出さない方が賢明だな」

だがこうやって手をこまねいているのも時間が惜しかった。

「アローニャ、すまねぇが、荒療治で行くぞ」

「え?アル、何を・・・」

アルフォートの向かった先を見て理解し、黙ることにした。

「おい、セレス」

アルフォートは震えるセレスの肩にそっと手を置く。

その声の主を見るためにセレスは顔を少し上げた。



バチンッ



何かを叩く音と共にセレスは倒れた。

「お前、いつまでそうしてるつもりだ?」

アルフォートは普段よりずっと低い声で話し、セレスの胸倉を掴み起こした。

セレスは今にも泣きだしそうな顔をしていた。

「天使に殺されかけたから怖いのはわかる!だから翼に似た物が苦手なのもわかる!
でもな!お前がやっちまった事の尻拭いを今、仲間達が命がけでやってくれてるんだぞ!
お前は何時からそんな腑抜けになった!お前は何時から仲間を見捨てて逃げるようになった!」

アルフォートの怒声が響き渡る。

「で・・・でも・・・」

「でもじゃねぇ!」

アルフォートはセレスに言い訳を言わせない。

だが次の瞬間アルフォートの態度が急変する。

「だがら・・・だから敵討ちなんて止めろって言ったんだ」

優しく、諭すように、そして頼むように。アルフォートはセレスに言う。

「すまねぇな。俺が天使に負けたから、セレスを守れなかったからこんな思いをさせちまって」

アルフォートの目から涙が落ちる。



(わたしがまどーしになっておとーさんとおかーさん・・・うんん、たいせつなかぞくをまもってあげる)



あれは何時のことだろうか?昔過ぎて忘れていた。

ふと自分が魔道士を目指したきっかけを思い出した。

父は若くして要人などを中心に警護任務を請け負う部隊の隊長に就いていた。

そして母は古代遺跡などから過去の記憶を読み解き、研究するラボに所属していた。

奇しくも起こるかわからない厄災から誰かを守ると言う仕事をしていた両親は、自然と自分の目標へと変わっていった。

私も大切な人を守りたい。大切な家族を守りたい。そう思いながら身に着けた魔法を、復讐のために使おうとしていた。

父から力を奪った、幼き日の友を奪った、私から平穏を奪った、あの有翼の人型生物、天使を抹殺するために。

だがその結果は何だ?無様に怯え、また仲間を犠牲に生き延びるのか?

その時、大きな揺れと同時に室内の灯りが消えた。

「何が起きた!?」

真っ暗な室内の中、アルフォートの声だけが響く。

「檻が破られました。砲撃の余波で会場のシステムがダウンして照明と拡大の魔法が消えました」

ティアの報告に一同に緊張が走る。

その報告はすなわち、魔法で広大な土地にしていた会場内が一気に狭まり、元の大きさに戻ったことだ。

魔法で作った土地は魔法が消えれば一緒に消える。

問題は会場にいた人間達の方だ。

何百mと距離をとっていたものが一気に数mまで縮まる。

すなわち暴走状態のトウヤが一気に迫ってくることになる。

それは安全地帯となっていた観戦席も危険になることを意味していた。

元の大きさは50m四方の土地の中いっぱいに円を描いたような形で、高さも最大50mだったはずだ。

50m。それはほとんどの魔道士が一瞬で移動できる距離だった。

「・・・行かなきゃ」

ふとセレスはアルフォートの前から消えた。

「セレス!どこへ!?」

アローニャがポーチから石を取り出し、光らせて視界を照らす。

セレスは淵に立って会場を見下ろしていた。

「セレス!今のままでは死にに行くようなものよ!」

行こうとするセレスをアローニャは止める。

「違う、助けに行くの。上手く戦えるかわからないけど、今助けに行かなきゃ後悔する。みんなに顔向けできない!」

「で・・・でも」

戦いに行こうとするセレスをアローニャは止めようとするが、それをアルフォートが肩に手を置き制止する。

「お前が選んだ道だ。後悔しないように信じて進め。でもな、俺たちはお前の親だ。
心配だけはさせてくれ。そしてちゃんと俺たちの元へ帰ってきてくれ」

アルフォートはセレスを後押しする。

「うん。みんなを守って帰るよ」

恐怖心はまだあるだろう。でもそれを隠すように精一杯の笑顔で答えるセレス。

それは昔見た希望を胸いっぱいに抱いていた頃の顔のようだった。

「援護お願いね、相棒」

「安心して行ってきな、相棒」

戦いの相棒に合図を送ると、セレスは飛び下りた。



カチャっとガラスを踏む音がした。

音の方向を確認するとルーがゆっくりと会場に近づいていた。

「シフォン、お前も行きたきゃ行けばいい」

ソニアはそう言うが、まだ迷いがあるルーはなかなか足が進まない。

「あたしは・・・殺せない・・・殺したくないんです」

ルーの目からは涙が溢れていた。

殺す覚悟の無いなら戦場に出ない方がいい。殺したくないという彼への強い気持ちが判断を鈍らせ死に至る。

いつも一緒にいる彼女にそう言われたのだろう。

心配で居ても立っても居られない。でも覚悟が無いから戦場にも出られない。それが今の彼女の状態だ。

「ならそうやっていつまでも悩んでいるがいい。・・・アルフォートの言葉はお前には届かなかったのだな」

「貴族が・・・アルカナフォートの魔道士が・・・あんな平民魔道士に・・・」

「その程度で揺らぐ気持ちなら捨てておけ!」

ソニアが一喝する。

貴族であろうと、上流階級の出身であろうと、平民を大切に思ってはいけない理由は無い。

どんな出自を持とうが、どんなことをしようが同じ人間には変わりないのだから。

「あたしも・・・こんな道を・・・選んでいいのですか?」

「二度も言わせるな」

ルーは会場を見下ろす。

真っ暗な中に所々赤色の炎と黄金色の雷が見える。

それを見てルーは覚悟を決めた。
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