幻想冒険譚:科学世界の魔法使い

猫フクロウ

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局と魔法と原石たち

仲間でしょ

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「終わったわね~」

ティーナのほんわかした言い方に、こちらも気が緩んでしまった。

「Sランクの暴走がこの程度で助かったわね」

ソニアがドカッとその場に座り込む。

「この子が前もって教えてくれたのがよかったですね」

ポーラは膝元で横になっているトウヤの頭を撫でる。

そしてティーナと共に簡単な診察を始める。

「外傷は主に擦り傷で特に酷いものはありませんね」

「でも骨は幾つか折れてるみたいね~。全部魔法でなんとかなるわね~」

ティーナは魔方陣を展開し治療を始める。

「怪我はなんとかなるとしても心の方が・・・心配ですね」

身を挺して止めたルーに大けがを負わせてしまった。それを知ったらこの子はどう思うだろう?

仲が良くなった者を自身で傷つけてしまったことに強く責任を感じるだろうか?

他人に対しては簡単に切り捨てる彼は、身内に対してはかなり深い愛情を持って接する。

そんなアンバランスな彼にこの十字架は重く感じるだろう。

「その話は・・・私が彼に話させてくれ」

そう申し出たのはセレスだった。

今回の暴走の発端はセレスが不用意に封印を解いてしまったことから始まった。

そのことに責任を感じている彼女は、事の流れを全て伝え全ての責任を負って謝罪するつもりだろう。

「わかった。でもその時は私も同席するわ。あんた一人じゃ心細いでしょ?」

「わ・・・私は一人でも平気だ」

セレスは少し照れながら視線を横にずらした。

「しっかしあんたが鳥が苦手だなんて知らなかったな」

「鳥じゃない。・・・翼が生えた人型の生き物だ・・・」

セレスはごもごもしながらも初めての告白をした。

「ま、苦手な物ぐらい誰にでもあるわよねぇ」

ポーラはニヤニヤした顔を抑えようとするが止まらない。

「お・・・おまえ」

セレスは恥ずかしさと怒りでプルプル震え始めたが、必死で抑える。

「でも、もっと早く教えて欲しかったよね」

ニヤニヤした顔から一気に真剣な顔になる。

好敵手ライバルとか言われてたけど、それ以前に・・・仲間でしょ?」

お互い負けたくない気持ちが、弱みを見せたくない気持ちが、素直に言えない気持ちが、
周りからの声や目が、互いを知ることを遠ざけてしまっていた。

それが仲間であることを曇らせてしまっていたのかもしれない。

「ご・・・ごめん」

呟くように言った言葉は、ようやく言えた素直な気持ちだった。

「ってことはさ。ポーラもセレスに苦手な物を話さないといけないんじゃない?」

水を差すようにニヤニヤした顔のソニアが割って入った。

「え!?何でですか!?」

「だって片方だけ苦手な物を知ってるなんて不公平でしょ?」

「え・・え~」

そう言われて素直に言えるほど人は単純ではない。

「あらあら~、ならソニアちゃんも話さないといけないわね~」

「え!?」

ソニアの言う通り不公平だと言うなら、ティーナの指摘通りソニアも話す必要がある。

「え~・・と、兎に角、ギルドは違えど仲間なら互いを信頼し、支え合えってことよ」

小柄ながら精一杯ふん反り返るソニアに「逃げた」と全員で冷ややかな目を送った。



黒く大きな輪が視界を狭め、輪の中に女の子が数人見える。

身体は動かない。いや自分の腕が動いているのは見える。自分の思い通りに動いていないだけだ。

その腕が女の子の腕や足を引き千切っている。

「やめろ!」

そう思っても止めることは出来ない。

返り血で視界が一瞬妨げられると、そこに知った顔の女の子がいた。

「ルー!」

腕は意思とは裏腹に襲い掛かる。

「ルー!逃げろ!やめろ!やめてくれ!」

そう叫ぶと同時に起き上がると、激しい痛みで我に返った。



「い!?・・・つぅぅ・・・」

あまりの痛みに頭を抑えながらうずくまった。

「トウヤ!?大丈夫?」

見舞いに来ていたポーラが声をかける。

「こ・・・ここは・・・病院?」

「そうよ。あんた気を失ってたのよ」

「そうか」

ポーラに促され再び横になる。

ポーラの後ろにもう一人人影があった。

「セレ・・ス?大丈夫だったのか」

「えぇ、みんな無事よ」

「ルーも?」

「・・・やっぱり覚えてるのね」

「いや、ルーを殺した夢を見た。・・・ほぼ現実だったんだな」

「意識を取り戻してるけど、動くにはもう少しかかるそうよ」

「・・・・・」

トウヤは安心したが複雑な気分だった。

「ご・・・ごめんなさい、私が勝手に封印を解いたせいで、こんなことになってしまって」

セレスは地に頭を付けて謝罪する。

「こうなることは伝えていた。死人が出なかっただけ全然良いよ」

トウヤにセレスを責める気は無いが、逆にそれが辛い。

「でも責任は私にある。何でも償うから何でも言ってくれ」

責任感が強いのは魔道士の特徴だろうか?

トウヤはあまり気に病むことはしたくなかったが、きっかけを作った本人は皆それをさせてくれないようだ。

真面目で面倒だとトウヤは溜息を吐きながら諦めた。

「なら暴走した時の話を聞かせてくれ。あと謝るならルーにしな。俺には怪我が無いから大丈夫だ」

「そんなんじゃ・・・・」

「あと・・・また暴走した時は全力で止めて欲しい。頼む」

全力で止める。それは常にトウヤよりも強い存在であることを示す。

チートレベルの能力を持つ彼より強くいることは、途方もない鍛錬を積まなければならないだろう。

だがもしまた暴走することがあれば、セレスにも協力してもらえる。

トウヤ自身が強くなっても犠牲者が出る確率は減る。

そしてセレスは暴走を止めるために協力するという償いの枷がつく。

互いに利点しかない及第点だ。

「わかった」

それはお互いに仲間と認めた、仲間だからこその償い方なのかもしれない。






「今回はそちらの言う通り、不用意に封印を解いてしまったから暴走したと言うことにしておこう」

「しかしあれ程とは・・・危険ですぞ」

「何かしらの対策をしろ!」

「いや、下手に刺激すると恨まれるぞ」

「じゃあ放っておけというのか?」

ガヤガヤと言いたい放題の高齢の男女の声が響く。

ガン!ガン!

槌で叩く音が響く。

その音で言いたい放題だった声が静まる。

「テアトリーヌ、二度目は無いと心得よ」

「・・・承知しました」

「下がってよいぞ」

「待て!対策案を・・・」

最も権力の強い人間が強制的に退出させたことで、誰かの叫びは消えて行った。

ふう。

思わず溜息が漏れてしまった。

相変わらず騒ぐだけの人達は煩わしい。だが、ある程度融通の利く人が長で良かったと思う。

報告が済み、部屋を退出しようとすると人影が現れた。

「相変わらずだな」

「はい。ステラさんの上手な躱し方を教わりたいです」

「ふふっ。うちにも似たようなのがいるからな。慣れだよ。嬉しくはないがな」

二人で歩きながら世間話をする。

「で?私の報告が終わるのを待ってくれてた理由は何ですか?」

「なに、後で私の所にあの子の情報を送ってほしいだけさ」

「構いませんが、珍しいですね?」

「仮にも私を一撃で倒したからね。内輪で厄介事を避けるためにも欲しいんだよ」

「あはは・・・大変ですね」

「普段は参加しないのに、こういう時だけ積極的になって、勝手な連中だよ」

今回の暴走は各ギルドに嵐の種を撒いたようだった。
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