別れのときは沈黙で

六道イオリ/剣崎月

文字の大きさ
2 / 7

【02】カイネ一人旅Ⅱ

しおりを挟む
 ごった返しているギルドの中に身を滑らせ、掲示板へと近付いて、森の国の傭兵募集の要項を捜したが”なかった”
 どうしたものか? ギルド職員が顔見知りの傭兵と話しているのをカイネは盗み聞く。

「森の国、は一夜にして火の国に滅ぼされたらしい」

 かなり衝撃的な情報が漏れ聞こえてきた。
 職員はカイネの他、皆が聞き耳を立てていることを知りながら、今届いている情報を語った。
 それによると、森の国の王はすでに処刑され、前線に赴いていた森の国の王子と、城に残っていたはずの王女のどちらも行方不明。
 国を導く者たちがいなくなり、火の国の軍に蹂躙されているという。
 その森の国と国境を隣接するもう一つの国が。いまカイネがいる水の国。
 水の国といっても、カイネがいるのは王都ではなく、水の国の中でも森の国寄り。

 火の国がこのまま引き返せば良いが、勢いに乗って攻め込んできた場合、必ず通る地域。

 そして火の国が引き返しそうかといえば――水の国は森の国に駐留し暴虐を尽くしている火の国の司令官に使者を送ったが、その使者腕を縛られは上空を舞う翼竜から突き落とされ死体となった……という噂も流れているとのこと。

 こういった経緯から、ギルドでは森の国の傭兵募集はなく、水の国の傭兵募集がかかっていた。

 このまま水の国に残っていると戦渦に巻き込まれそうなので、カイネは国を離れることにした。

(どこに拠点を移そうか……っても、国は氷の国しか残ってないんだけどな……久しぶりに、故郷があった所に帰るか?)

 カイネの生まれ故郷は砂の国――だが、その砂の国は十数年前に一夜にして滅んだ。それは比喩などではなく、本当に一晩で滅びた。
 砂の国は女王と共に滅んだが、それから十年以上の月日が流れ、統治する者はいないが、流民が国に移り住み、小さな集落を形成している

”逃げて”

 夫に胸を貫かれ、悲しげな笑みを浮かべて、カイネに優しく言った女王――
 その時、その場にいて唯一生き残ったカイネ。
 カイネが物心ついた頃には、女王は実父を無言のまま愛おしげに見つめていた。

 幼い頃には分からなかったが、もう分かっている――

「…………」

 カイネはギルドへと向かった時と同じようにのんびりと歩いて宿へと戻り、国を出る準備を整え、敢えて火の国へ向かうことにした。

 無謀とも思えるカイネの行動だが、カイネ本人には自信があった。
 カイネは身が軽く、足が速い。そして自惚れているわけではないが、剣の腕がたつ――砂の国の民は戦端が少し反り返った片手剣を得意とする者が多く、カイネもその一人だった。
 なによりカイネは魔法使い相手に優位に立てる特殊な能力を持っていた。特殊能力というよりは、特殊な体質といったほうが正しく、それは血筋を表す特殊なもので、できることなら使いたくはないが、無条件で発動するものなので、魔法使いに近づかないくらいしか、対処方法がないのも事実だった。

 火の国は氷の国の次に魔法を得意とする民族が多い国。そんな国に近づけば危険そうだが、

(一晩で滅ぼしたは、言葉の綾だろうから、魔道師の大編成で攻め込んだんだろう)

 魔道師の多くは進軍に従い、残りは王宮に詰めていると予想し、王都から少し離れた場所で火の国の実情を眺めたあとに、本格的に拠点を決めることにし、多くの人の流れとは反対方向に歩を取った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

貴方に復讐しようと、思っていたのに。

黒狐
BL
 前世、馬車の事故で亡くなった令嬢(今世は男)の『私』は、幽霊のような存在になってこの世に残っていた。  婚約者である『彼』が私と婚約破棄をする為に細工をしたのだと考え、彼が無惨な末路を迎える様を見てやろうと考えていた。  しかし、真実はほんの少し違っていて…?  前世の罪や罰に翻弄される、私と彼のやり直しの物語。 ⭐︎一部残酷な描写があります、ご注意下さい。

仲良くなったと思った相手は、どうやら友達なんて作りたくないらしい

たけむら
BL
仲良くなった相手は、どうやら友達なんて要らないっぽい 石見陽葵には、大学に入ってから知り合った友人・壬生奏明がいる。少し冷たそうな第一印象から周りの学生に遠巻きにされている奏明に、とある提案をしてみると、衝撃的な一言が返ってきて…?

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

可哀想は可愛い

綿毛ぽぽ
BL
 平民、ビビり、陰キャなセシリオは王立魔術学園へ入学を機に高校デビューを目指したが敢え無く失敗し不良のパシリをさせられる毎日。  同室者の男にも呆れられ絶望するセシリオに天使のような男が現れるが、彼もかなりイカれた野郎のようで……?セシリオは理想の平和な学園生活を送る事が出来るだろうか。また激重感情を抱えた男から逃げられるだろうか。 「むむむ無理無理!助けて!」 ━━━━━━━━━━━ ろくな男はいません。 世界観がごちゃごちゃです。余り深く考えずに暖かい目で読んで頂けたら、と思います。 表紙はくま様からお借りしました。

生意気Ωは運命を信じない

羊野迷路
BL
小学生の時からかっていた同級生と、進学校(自称)である翠鳳高校で再会する。 再会した元同級生はαとなっており、美しさと男らしさを兼ね備えた極上の美形へと育っていた。 *のある話は背後注意かもしれません。 独自設定ありなので1話目のオメガバースの設定を読んでから進んでいただけると理解しやすいかと思います。 読むのが面倒という方は、 1、Ωは劣っているわけではない 2、αかΩかは2つの数値によりβから分かれる 3、Ωは高校生以上に発覚する事が多い この3つを覚えておくと、ここでは大体大丈夫だと思われます。 独自設定部分は少しいじる事があるかもしれませんが、楽しんで頂けると幸いです。 追記 受けと攻めがくっつくのはまだ先になりますので、まったりお待ちください。

【完結済】王子を嵌めて国中に醜聞晒してやったので殺されると思ってたら溺愛された。

うらひと
BL
学園内で依頼をこなしていた魔術師のクリスは大物の公爵の娘からの依頼が入る……依頼内容は婚約者である王子からの婚約破棄!! 高い報酬に目が眩んで依頼を受けてしまうが……18Rには※がついています。 ムーン様にも投稿してます。

処理中です...