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第2章・快進撃への道
◆ 8・悪魔との会議 ◆
しおりを挟むあっさり帰っていく天使。
その時計をこそ置いていけ、などと言う文句は完全無視だった。
残された側は動き出した時間と共に、本来のプログラムを済ませていく。
宴の終盤、やはりと言うべきかライラ予想の通り、父と王妃がグラスを掲げ結婚予定日の発表となった。
拍手喝采と王子と王妃、ひいては国や神を称えるハレルヤコーラス。
つまり、これで卒業後の結婚確定ルート……。
ミランダ戦を味方堕ちにさせたお陰で、宴での殺害計画は阻止できたと言える。
ライラもそうだ。
殺害理由がはっきりした上、誤解からの殺害だったのだ。今回のことで、誤解は解けたといっていいだろう。
とりあえず、ミランダとライラの死亡ルートは回避って思っていいよね?
今までもこの二人の殺害タイムを逃れた事自体はあったし、その結果の成婚日発表も経験済みだ。
だから知っている。
怒涛の殺害ラッシュはまだ済んではいない。
問題はフローレンスが入学する4月だ。
ベッドに入り、一日を思い出してみても長い長い一日だったと痛感する。
「おい」
枕元にはクッションに埋もれるように乗る小蛇の悪魔ルーファ。
「天使野郎の言ってた事からすると、お前を殺したヤツが鍵なんだろ? 覚えてんのか? 全員」
「もちろん!!! 殺されてんだから、こっちだってそれなりの恨みを持ったりもしたからねっ。全員覚えてるし」
「理由は分かってんのか」
「毎回チェックしてきたつもり、だったんだけど。思ってた理由と違ったり……あるね」
小蛇はあくびを数度くりかえした。
「ダメだ、……久々の食事は眠くなるんだよな。んー、早めに殺したヤツらに接触してだな、何で殺したか、ちゃんと把握してけよ」
「加害者たちとコンタクト……そうよね、あと3人はいるし……」
「おま……どんだけ恨み買ってきたんだよ」
「ハハハ、まだ増えたりしてね……」
「こぇーこと言うなっ。……ったく、人間の悪徳には悪魔も逃げ出すぜ」
むしろ問題は、『私を殺した』人が正解ルートに必要って方だ。どう必要なのか、生きてさえいればいいのか、謎は多い。
助言があの天使ってのが、一番の問題よ。
現状の相談相手は、悪魔……。
天使と悪魔も、どっちを信じるべきか悩ましいし。
「ちなみに殺害最多、上位3名は?」
ルーファに問いかけられ、少しだけ考える。
「ミランダ、スライ先輩、狂った研究者」
「狂ってんのか……」
「そりゃもぅ……ぶっとんだ人だった。そこが4月からの問題点よ。フローレンスと同じく入学してくる後輩になる」
「ミランダってのはメイドで実は聖女あがめるヤバい教団員だよな? 『スライ先輩』ってのはさっきの男か。そっちの理由は何だったんだ? 見たところ、お前への恨みはなさそうだったが?」
今は、悪魔でも相談相手は貴重だし……。知ってることの共有はしとくか。
「今日、理由が分かった。けど、避けようがない」
「どういう事だ? 理由が分かったなら先回り阻止できるんじゃねぇか?」
「先輩の事業は、運送業のお手伝いって事だよね? 自作で傭兵団で作って、護衛的なのに派遣っていう」
これはライラの父にも繋がる事案だ。
「1カ月後、海に巨大イカが出る。で、先輩の家族が死ぬ。今日ので分かったけど、多分この死んだ中に妹さんがいたんだわ。先輩自身、仕事で海に出てたって噂もあったし、補償問題とかで大変な事になったってのも」
「じゃ、海に行かせなきゃいいだろ」
「ところが、その1週間~2カ月の間に先輩の実家がある町ごと消える。大騒ぎになって、でも段々おちついていって、日常は戻ってくる」
「ふむ」
「フローレンスたちの入学式がきて、忘れた頃、先輩に殺される。期間も理由もバラバラ。でも結局は、あの巨大イカで死んだ妹の事が原因だったんじゃないかな? 病んでたもん、私たちを殺しに来た先輩は」
「イカ討伐パターンは?」
ルーファは事もなげにいう。
もちろん、私とてイカや先輩の実家の町を守った方が先だと色々やった。ある時は父の権力で避難警報発令したし、ある時は一番力のある傭兵団を雇っても守護にも当たらせた。
結果は惨敗。
イカは強かった。
そして、海に出る船を止めた場合が最悪だった。イカを誰も認知しないのだから、町への避難警報での強制避難は怒りを買い、我が家は没落。
親族の矢面にたった父は殺され、私も暗殺まがいの方法で殺された。
その後に町が破壊されようが、『あの避難は本当に必要だったんだ』と死んだ後で想われて何になる。
というか、死んだ時点で強制リセットのスタートだしな。
「イカ強すぎる……私も傭兵になって実物見に行った事あるけど、瞬殺されたわ」
「……ふむ。そういう事なら俺様の出番だな!」
「幼児悪魔に何ができるのよ」
「おい!! 天使野郎の言葉受け売りすんじゃねぇよ! 確かに俺様は若いが、人間よりずっと大人なんだからな!!」
「へぇ。まぁ……天使が片づけていったっていう中にイカも入ってれば問題ないんだけどね」
私にできた事といえば、なるべく先輩やイカ関連に関わらずにスルーしてやりすごし生存を勝ち取っていく事くらいだった。
卑怯と言われても仕方ない。
生き残り戦略として妥当だったと信じている。
ルーファが不思議そうに鎌首をもたげた。
「イカはモンスターだろ? 悪魔じゃねぇよ。天使と悪魔は殺し合うが、天使はモンスターや人間には無関心だぞ」
「モンスターも悪魔も似たようなものでは?」
「全然ちげーよ!!!」
つまり、あのイカはまだいるのか……この世界のどこかに……。
で、1カ月後……ことが起きると。
「俺様の飢餓が掛かってるから、討伐手伝ってやるよ。まぁ? それに俺様は天使じゃねぇからな」
ちっともわからない悪魔のプライドに、頷く。
「倒せるの?」
「若いけど俺様、結構な高位なんだぞ」
それっきりルーファは口を閉ざし、頭を横たえた。
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