38 / 375
第4章・捨てられし者
◆ 7・悪魔の正体 ◆
しおりを挟むパチリと開いた目に映る青い空。
ホッと息を吐く。
もうベッドでの目覚めは体験したくない。家にいる時は仕方なくベッドで眠っているが、このループから抜け出た暁にはベッドを買い換えるつもりだ。
勿論メイドも一新する。
いやメイドは要らない。自分の事は全て自分でできるようになったのだから、メイドを雇う必要はないだろう。
「チャーリー、大丈夫?」
夢のような世界から戻った私を覗き込んでいるのはカエルだ。
「中々目覚めないから心配したよ」
「……アレックス、大体分かったわ。だけど、どうしても分からない事もある。オリガ、あんたがしたい事って結局、何なの? 幼馴染が自殺して世界を救いました、めでたしって行かないのは分かるけどさ。もう復讐果たしたじゃん」
エルロリスを封じ続けている事はおっさん天使にとっても一番の痛手だろうし、罰というなら充分な期間が過ぎただろう。
オリガが行きつく先に何を求めているのか分からない。
「まさか妹天使が消えるまでとか? ソレって、おっさん天使ブチ切れるだけじゃない?」
「お前は何もわかっていないな。悪魔が……どうやって生まれるか知ってるか?」
「天使の汚い部分そぎ落としていくんだよね? あ、後は人間が7回ゴミ転生して死んだらなるんだっけ? いや、アレは浄化されるんだっけか?」
あまり私には関係ないと思ってちゃんと聞いていない部分だ。
記憶も曖昧になっている。
「天使は世界を構築する無形要素を羽根から取り込んで生きている。世界が消えない限りは永遠の命を持っている存在だ」
よくわからないが……不老不死ね、了解。
「無形要素の代表格は魔法の元として使用される魔素になるが、天使や悪魔、精霊もコレを接種している。魔素とは生き物が生きる上で出したエネルギーだと、オレの時代は考えられていた。人間は食物から生活動力を得るのが主流で、魔素は魔法という形に変換している」
生き物は皆、食事大事っと。天使系は魔素が食事ね。
つか、……話長いのどうにかしてくんないかな。
白墨を手に書き込んでおく。
まだ話は続いているが、纏めて見れば簡単な話だった。
カエル曰く、エネルギーは珈琲だ。
天使は布製のドリップ紙として、世界のエネルギーを善と悪で振り分けている。悪は珈琲カスの方で、悪魔はコレが好物。人間は汁の方が好みだから珈琲=魔法を使用。
ドリップすればすればする程に天使は汚れるので、酷い汚れの部分は破って捨てている。だが最後には買い替えに繋がる。
「悪魔は天使から破って捨てたドリップ布の再利用って事ね? たまに人間側から狂ったヤツ出てそっちに転生するパターンもあったりで、って悪魔の作り方は分かったわ。でも天使は?」
いま聞いた範囲でも天使は消耗するばかりだ。
「天使ってどうやって生まれるの?」
「聖女と魔王が天使に転生する」
「え?! 魔王?!」
エネルギーの塊だからと言われれば納得もするが、それでも違和感はある。
「そもそも、それ以外で天使は生まれない」
オリガは祈りから神が作れると知り、ヴィクトリア教を作ったのだという。
初代聖女ヴィクトリア……オリガの時代に並び立つ最高峰の魔女。でも、エルロリスの記憶ではその前に聖女と勇者がいて、……負けたから『なかった』事になった? 人間に聖女認定されなかったって事?
あの聖女は、天使になれなかった?
「そういえば、オリガ、勇者って天使にならないの?」
「勇者は人間だ」
頭の悪い生徒を見るような目で私を見る。
「人間は天使にはなれない。さっきも言ったように天使とは稀有な存在なんだ。勇者はどれほどの功績を摘もうが所詮は他文明を攻め滅ぼす者だ。危険生物認定され、長い時を経て、転生先も『獄』一択。悪魔となる」
悪魔に……?
「え?」
「勇者は悪魔転生だ。その後は天使に殺されない限りは生きるんだ。悪くない転生先じゃないか?」
オリガの言葉に呆然とする。
カエル、あんた悪魔になるらしいよ?!
「シャーロット・グレイス・ヨーク、お前が天使とどんな話をしたかは知らないが……オレの提言を飲め!」
「……内容次第だよね、とりあえず」
「オレは天使悪魔聖女魔王をこの世界から追い出すつもりだ! この際、天使は悪魔、魔王は聖女は……我ら人の理とは別の世界で戦っていてもらおうじゃないか?」
「待ってくださいっ!」
珍しくカエルが声を荒げる。
「事を成しえるかは後の問題にしたとしても、その先の世界を考えるに、魔素の均衡が壊れるのでは?」
「その通りだとも。魔法は誰もが使える能力ではなくなるだろうな? 能力と才能、バランス感覚そんな一握りの天才以外は使用できず、いずれはそれらも消滅するだろう。だがそれは長い時を経ての事。世界の混乱は小さい物だ」
「そう、でしょうか……」
「いずれ、何百、何千年の先にいる子孫が、『大昔、魔法ってのがあったんだって』って程度の話で済むさ」
考えるまでもない事だ。
未来の子孫など知るか、こっちは明日の命どころかこの空間から出た瞬間からDEADメインの生活だぞ?
独り善がりと言わないでくれ、子孫よ。仕方ないだろう? 私が死んだら、お前らの中の誰かもいなくなるかもしれないんだから。これはきっと正義、うん、正義よ。
「手伝うわ。でも条件がある」
「チャーリー!」
「カエル、あんたには分かんないだろうけど、こっちも命かかってんのよ! いいじゃないの、ホントそれよ、人間様を巻き込むんじゃないわって感じよ! 仮に私たちの感情が云々って言ってもシステム作ったの、あのおっさん天使だし!」
「ほんと、チャーリー……君なにがあったのさ……」
今度話すと告げ、オリガを見つめる。
彼女は最初から分かっていたようにパチリと指を鳴らす。
足元にミランダ他数名の身柄が現れる。
意識はないらしい。
「……いや、これ要らない」
「何を言うっ! お前、これらを迎えにきたんだろう!」
私は大きく首を振る。
「言ったでしょ。割れたイノシシの置物が気になってきたんだって、そこらの事は聖女パワーぶち上げ用のスパイスだったって分かったし。もういいわ。そもそもそいつらには命狙われてばっかだし、助けてやる義理もないっていうか」
「……最低か? シャーロット・グレイス・ヨーク、お前最低だぞ?」
「なので、返すなら返すでもいいけど。それよりこっちの要求は別の事よ」
愕然としているオリガに、カエルが「彼女はあのように言っていますが返してください」と頭を下げている。
「私からの提言よ!」
オリガの真似をしてふんぞり返る。
「タダで追い出すなんてとんでもない、悪魔を天界に送り込んでズッタズタにしてやるのよ! 二度と私たち人間に関わりたいって思えなくなるようにね! この世界から逃げ出すがいいわ! そうしたら逃がしてやってもいい」
0
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
ファンタジー
公爵令嬢として生まれながら、子ども時代からメイドや周囲の陰謀で、次々と濡れ衣を着せられ、「悪女」扱いされてきたミリアム。
第3王子との婚約を聖女に奪われ、聖女への嫌がらせの冤罪で国外追放された後、平民として生き延びる中で、何度も5年前へのロールバック(逆行)を繰り返すことに。
生計をたてる為に、追放後の平民生活で極めた針仕事が、ロールバックが繰り返されることで、針仕事の能力だけは引き継がれ、天才的な実力を手に入れる。
その時女神「アテナ」の加護を得て、2つの力を手にすることに。
「加護縫い」
(縫った布に強力な祝福を込められる)
「嘘のほころびを見抜く力」
(相手の嘘を布のほころびとして視覚的に捉え、引き抜く、または繕うことで、真実を暴いたり修正したりする)
を手にしたミリアムは、5歳の幼女時代まで遡り、2つの力で悪評をぬりかえ、仲違いしていた家族も、加護の力を与えることで協力な味方へと変貌。
さらに、女神から可愛いしもべ「アリアドネ」を授かり、元婚約者と聖女にザマァを狙う中、加護縫いの能力が最も高い人間を王太子妃に迎える決まりのある大国、ルーパート王国の王太子が近付いて来て……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる