死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第4章・捨てられし者

◆ 7・悪魔の正体 ◆

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 パチリと開いた目に映る青い空。
 ホッと息を吐く。

 もうベッドでの目覚めは体験したくない。家にいる時は仕方なくベッドで眠っているが、このループから抜け出た暁にはベッドを買い換えるつもりだ。
 勿論メイドも一新する。
 いやメイドは要らない。自分の事は全て自分でできるようになったのだから、メイドを雇う必要はないだろう。

「チャーリー、大丈夫?」

 夢のような世界から戻った私を覗き込んでいるのはカエルだ。

「中々目覚めないから心配したよ」
「……アレックス、大体分かったわ。だけど、どうしても分からない事もある。オリガ、あんたがしたい事って結局、何なの? 幼馴染が自殺して世界を救いました、めでたしって行かないのは分かるけどさ。もう復讐果たしたじゃん」

 エルロリスを封じ続けている事はおっさん天使にとっても一番の痛手だろうし、罰というなら充分な期間が過ぎただろう。
 オリガが行きつく先に何を求めているのか分からない。

「まさか妹天使が消えるまでとか? ソレって、おっさん天使ブチ切れるだけじゃない?」
「お前は何もわかっていないな。悪魔が……どうやって生まれるか知ってるか?」
「天使の汚い部分そぎ落としていくんだよね? あ、後は人間が7回ゴミ転生して死んだらなるんだっけ? いや、アレは浄化されるんだっけか?」

 あまり私には関係ないと思ってちゃんと聞いていない部分だ。
 記憶も曖昧になっている。

「天使は世界を構築する無形要素を羽根から取り込んで生きている。世界が消えない限りは永遠の命を持っている存在だ」


 よくわからないが……不老不死ね、了解。


「無形要素の代表格は魔法の元として使用される魔素になるが、天使や悪魔、精霊もコレを接種している。魔素とは生き物が生きる上で出したエネルギーだと、オレの時代は考えられていた。人間は食物から生活動力を得るのが主流で、魔素は魔法という形に変換している」


 生き物は皆、食事大事っと。天使系は魔素が食事ね。
 つか、……話長いのどうにかしてくんないかな。


 白墨を手に書き込んでおく。
 まだ話は続いているが、纏めて見れば簡単な話だった。
 カエル曰く、エネルギーは珈琲だ。

 天使は布製のドリップ紙として、世界のエネルギーを善と悪で振り分けている。悪は珈琲カスの方で、悪魔はコレが好物。人間は汁の方が好みだから珈琲=魔法を使用。
 ドリップすればすればする程に天使は汚れるので、酷い汚れの部分は破って捨てている。だが最後には買い替えに繋がる。

「悪魔は天使から破って捨てたドリップ布の再利用って事ね? たまに人間側から狂ったヤツ出てそっちに転生するパターンもあったりで、って悪魔の作り方は分かったわ。でも天使は?」

 いま聞いた範囲でも天使は消耗するばかりだ。

「天使ってどうやって生まれるの?」
「聖女と魔王が天使に転生する」
「え?! 魔王?!」

 エネルギーの塊だからと言われれば納得もするが、それでも違和感はある。

「そもそも、それ以外で天使は生まれない」

 オリガは祈りから神が作れると知り、ヴィクトリア教を作ったのだという。


 初代聖女ヴィクトリア……オリガの時代に並び立つ最高峰の魔女。でも、エルロリスの記憶ではその前に聖女と勇者がいて、……負けたから『なかった』事になった? 人間に聖女認定されなかったって事?
 あの聖女は、天使になれなかった?


「そういえば、オリガ、勇者って天使にならないの?」
「勇者は人間だ」

 頭の悪い生徒を見るような目で私を見る。

「人間は天使にはなれない。さっきも言ったように天使とは稀有な存在なんだ。勇者はどれほどの功績を摘もうが所詮は他文明を攻め滅ぼす者だ。危険生物認定され、長い時を経て、転生先も『獄』一択。悪魔となる」


 悪魔に……?


「え?」
「勇者は悪魔転生だ。その後は天使に殺されない限りは生きるんだ。悪くない転生先じゃないか?」

 オリガの言葉に呆然とする。


 カエル、あんた悪魔になるらしいよ?!


「シャーロット・グレイス・ヨーク、お前が天使とどんな話をしたかは知らないが……オレの提言を飲め!」
「……内容次第だよね、とりあえず」
「オレは天使悪魔聖女魔王をこの世界から追い出すつもりだ! この際、天使は悪魔、魔王は聖女は……我ら人の理とは別の世界で戦っていてもらおうじゃないか?」
「待ってくださいっ!」

 珍しくカエルが声を荒げる。

「事を成しえるかは後の問題にしたとしても、その先の世界を考えるに、魔素の均衡が壊れるのでは?」
「その通りだとも。魔法は誰もが使える能力ではなくなるだろうな? 能力と才能、バランス感覚そんな一握りの天才以外は使用できず、いずれはそれらも消滅するだろう。だがそれは長い時を経ての事。世界の混乱は小さい物だ」
「そう、でしょうか……」
「いずれ、何百、何千年の先にいる子孫が、『大昔、魔法ってのがあったんだって』って程度の話で済むさ」

 考えるまでもない事だ。


 未来の子孫など知るか、こっちは明日の命どころかこの空間から出た瞬間からDEADメインの生活だぞ?
 独り善がりと言わないでくれ、子孫よ。仕方ないだろう? 私が死んだら、お前らの中の誰かもいなくなるかもしれないんだから。これはきっと正義、うん、正義よ。


「手伝うわ。でも条件がある」
「チャーリー!」
「カエル、あんたには分かんないだろうけど、こっちも命かかってんのよ! いいじゃないの、ホントそれよ、人間様を巻き込むんじゃないわって感じよ! 仮に私たちの感情が云々って言ってもシステム作ったの、あのおっさん天使だし!」
「ほんと、チャーリー……君なにがあったのさ……」

 今度話すと告げ、オリガを見つめる。
 彼女は最初から分かっていたようにパチリと指を鳴らす。
 足元にミランダ他数名の身柄が現れる。
 意識はないらしい。

「……いや、これ要らない」
「何を言うっ! お前、これらを迎えにきたんだろう!」

 私は大きく首を振る。

「言ったでしょ。割れたイノシシの置物が気になってきたんだって、そこらの事は聖女パワーぶち上げ用のスパイスだったって分かったし。もういいわ。そもそもそいつらには命狙われてばっかだし、助けてやる義理もないっていうか」
「……最低か? シャーロット・グレイス・ヨーク、お前最低だぞ?」
「なので、返すなら返すでもいいけど。それよりこっちの要求は別の事よ」

 愕然としているオリガに、カエルが「彼女はあのように言っていますが返してください」と頭を下げている。

「私からの提言よ!」

 オリガの真似をしてふんぞり返る。

「タダで追い出すなんてとんでもない、悪魔を天界に送り込んでズッタズタにしてやるのよ! 二度と私たち人間に関わりたいって思えなくなるようにね! この世界から逃げ出すがいいわ! そうしたら逃がしてやってもいい」

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