死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第6章・喪失と再生

◆ 9・聖女の息吹(後) ◆

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「聖女『たち』です」

 再度言葉にするフローレンスに、説明を求めるように見つめた。彼女も最初から説明する気があったらしく、言葉を続ける。

「この世界は、今までの聖女たちの命で守られてるんですって。それは光で、次代の聖女はそれらを吸収する事で、より聖女として高次元の存在になるそうです」
「なんだ、聖女は継承制なのか?」

 先輩が不思議そうに首を傾げる。

「聖女という器があって、もっと継ぎ足すイメージだそうです。私は聖女らしいので、この世界に満ちている……聖女たちの魂をより分けて、吸って、力を高めなさいと言われました」
「聖女も大変ね」
「聖女代はしっかり払ってもらえよ?」

 二人の言葉に、フローレンスも頷く。

「私のこの『働き』への報酬は父様に支払われるそうです。でも……可笑しいと思いませんか? どうして私が聖女なんでしょう? 聖女と認識した理由を、誰も教えてくれないんです。それに私、おとぎ話に出てくるような聖女の能力、それっぽい能力……何もないんですよ? 回復魔法だって使えません」

 そこで彼女の目が改めて、私を見る。

「可笑しい事はいっぱいあります。どうして同時に、姉様は姉様じゃなくなったんでしょうか。あなたは『だれ』ですか? 姉様じゃない事が私にはわかります。アレックス殿下も、前の殿下と同じとは思えません」
「そうだろう!? 俺もそう思っていた」

 先輩も勢い込む。


 記憶があれば、何か分かったんだろうか……。


「私、思うんです」

 フローレンスが私の手を取る。

「あなたを取り出したら、姉様は戻ってくるんじゃないかなって」
「とり、だす?」
「そうです。世界に満ちる目に見えないモノから聖女の魂を取り出すように、あなたを取り出したいと思います」

 言い知れぬ恐怖に身体が震える。
 振りほどこうにも、フローレンスの手は予想以上の力で押さえつけている。

「その身体は、姉様のものです。中身だけが違う……私には分かる。もしかしたら……聖女の魂をいくつか吸ったからでしょうか?」

 彼女の青い瞳がキラキラと輝いている。

「大丈夫です。魂を吸っても、私と同化するだけで、消えないそうですから」



 なんだろう、ダメな気がする……。これはダメだと、どこかで、何かが……!
 私は、これをしてはダメなんだ。

『……っ、ィ……』

 誰?
 誰かが言った。昔……、『彼女』が言ったっ。

『……の魂を吸うというものは、……にとっては……に等しい』

 誰、あなたは……。


 フローレンスに触れられた瞬間からだ。
 ぞわぞわと私の中の何かが警告している。

「いや、それはちょっと違うだろ!」

 先輩が声を上げる。
 ライラがフローレンスの腕をつかんだ。

「待ちなさい。彼女がチャーリーである可能性が少しでもあるなら、反対ですわ!」


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