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第6章・喪失と再生
◆ 8・聖女の息吹(前) ◆
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スライ先輩とライラの案内でついた大聖堂は陽があたり輝くように白い。
その人は大聖堂の前にいた。
白亜の大聖堂の前で、子供たちに囲まれて立っている。白い装束をまとった彼女はこちらに気づき、驚いたような顔をした。
子供たちに何事か言い、駆け寄ってくる。
金髪に青い目、フローレンス・メイ・ヨーク――当代の聖女。そして義妹。
「お姉様!」
彼女の事、なんて呼んでいたんだろう。
「お待ちしていました」
彼女は穏やかな笑みで告げる。目を合わせないようにして、頷く。途端、彼女の腕が私を抱きしめた。
久々に会った姉への抱擁なのだろうと思ったのも束の間、密やかな彼女の声。
「あなた、だぁれ?」
虚を付かれて、固まる。
「わたしの姉様をどこにやったの? 帰さないから……」
彼女が少しだけ体を離し、微笑む。
瞳が合う。
「覚悟してね」
心の声が、……ない。
ルフスのように見えないのではなく、本当に心の声が存在しないのだと分かった。
そこには空虚な心がある。
空っぽの心。
「さあ、こちらへ。ティータイムをしましょう、お姉様」
彼女の手に引かれ、私たち三人は神殿へと入った。
たくさんの扉をくぐり入れば、大聖堂らしい作りの最奥に白金の女神像がある。初めて、とても懐かしいと思えた。大聖堂、礼拝堂、女神像、音楽を鳴らす楽器。
歌。
歌だわっ。
子供たちが歌う声は天上の雅楽にも等しく耳をうつ。
あぁ、そうだわ。私『ここ』を知ってるっ。
「姉様はココがお嫌いでした」
心を読んだように彼女が言う。
「姉様は『神は勝手だ』と仰ってました」
聞かないと……。
「私、聖女らしいですよ。モンスターが町を襲って、私も姉様も町の支援に。そんな折でした。大神官様が、私が聖女だと確信する何かがあったそうです。何かは分かりません。私は決定された後でしたし」
「ごめんなさい、フローレンス。私、何も知らなくて」
謝罪を口にするが、彼女はゆるりと頭を振る。
「大丈夫ですよ。知らない方に気にしていただかなくても。それにまだ私のターンですから、あなたは最後まで聞くのが仕事ですよ? 私のお友達はみんなそうですし?」
「待て、フローレンス・メイ・ヨーク! こちらとしては無駄話をしている場あ……っ」
フローレンスの強い視線に黙り込むスライ先輩。
「私、動物には命じる事ができるんです。人間にもたまにできるんですよ? それで、あぁ、そうでした。えーっと、私は聖女だと言われて『ここ』に連れてこられました。アレックス殿下の呪いは、最初から私という『聖女フローレンス』のセンセーショナルなデビュー用だったと言われました。呪いは私が解いた事にするのだと」
何と言っていいか分からず、とりあえず頷く。
彼女も相槌以上を期待していないのか、続ける。
「私に彼らは言うんですよ? 覚醒するために『聖女たち』を吸えって』
「聖女、たち?」
フローレンスは昏い目で頷いた。
その人は大聖堂の前にいた。
白亜の大聖堂の前で、子供たちに囲まれて立っている。白い装束をまとった彼女はこちらに気づき、驚いたような顔をした。
子供たちに何事か言い、駆け寄ってくる。
金髪に青い目、フローレンス・メイ・ヨーク――当代の聖女。そして義妹。
「お姉様!」
彼女の事、なんて呼んでいたんだろう。
「お待ちしていました」
彼女は穏やかな笑みで告げる。目を合わせないようにして、頷く。途端、彼女の腕が私を抱きしめた。
久々に会った姉への抱擁なのだろうと思ったのも束の間、密やかな彼女の声。
「あなた、だぁれ?」
虚を付かれて、固まる。
「わたしの姉様をどこにやったの? 帰さないから……」
彼女が少しだけ体を離し、微笑む。
瞳が合う。
「覚悟してね」
心の声が、……ない。
ルフスのように見えないのではなく、本当に心の声が存在しないのだと分かった。
そこには空虚な心がある。
空っぽの心。
「さあ、こちらへ。ティータイムをしましょう、お姉様」
彼女の手に引かれ、私たち三人は神殿へと入った。
たくさんの扉をくぐり入れば、大聖堂らしい作りの最奥に白金の女神像がある。初めて、とても懐かしいと思えた。大聖堂、礼拝堂、女神像、音楽を鳴らす楽器。
歌。
歌だわっ。
子供たちが歌う声は天上の雅楽にも等しく耳をうつ。
あぁ、そうだわ。私『ここ』を知ってるっ。
「姉様はココがお嫌いでした」
心を読んだように彼女が言う。
「姉様は『神は勝手だ』と仰ってました」
聞かないと……。
「私、聖女らしいですよ。モンスターが町を襲って、私も姉様も町の支援に。そんな折でした。大神官様が、私が聖女だと確信する何かがあったそうです。何かは分かりません。私は決定された後でしたし」
「ごめんなさい、フローレンス。私、何も知らなくて」
謝罪を口にするが、彼女はゆるりと頭を振る。
「大丈夫ですよ。知らない方に気にしていただかなくても。それにまだ私のターンですから、あなたは最後まで聞くのが仕事ですよ? 私のお友達はみんなそうですし?」
「待て、フローレンス・メイ・ヨーク! こちらとしては無駄話をしている場あ……っ」
フローレンスの強い視線に黙り込むスライ先輩。
「私、動物には命じる事ができるんです。人間にもたまにできるんですよ? それで、あぁ、そうでした。えーっと、私は聖女だと言われて『ここ』に連れてこられました。アレックス殿下の呪いは、最初から私という『聖女フローレンス』のセンセーショナルなデビュー用だったと言われました。呪いは私が解いた事にするのだと」
何と言っていいか分からず、とりあえず頷く。
彼女も相槌以上を期待していないのか、続ける。
「私に彼らは言うんですよ? 覚醒するために『聖女たち』を吸えって』
「聖女、たち?」
フローレンスは昏い目で頷いた。
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