死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

文字の大きさ
106 / 375
第7章・二つの心

◆ 25・騎士ミルカ・ヘルレヴィ(後) ◆

しおりを挟む

 木戸からヨタヨタと出て来たのは、老人だった。
 ボサボサの白髪、眼鏡。ひょろりとした長身ながら、腰を折り曲げて歩く為に身長は低く見える。
 ミランダの前で盾のようになっていた私は、ポカンとして見つめる。


 これが、ミルカ・ヘルレヴィ?
 叙勲受けた有名人? すごく強いって話じゃなかった? ヨボヨボのお爺さんじゃないの!?


 ミルカ・ヘルレヴィが叙勲を受けたのは、今から10年以上昔の話だ。そう考えれば、年をとっていても違和感はないのだが――。
 気付けばミルカ・ヘルレヴィことお爺さんは間近く迫っていた。

「ミルカ……ただいま帰りました」

 彼はミランダを視界に入れ、一つ頷く。

「そちらは?」

 声は案外年齢を感じさせないハリをもっていた。

「お仕えしているお嬢様です」

 契約も躱しているし、メイドという意味だけではなく『お仕え』はしているだろう。

「シャーロット・グレイス・ヨークです」

 礼儀正しく挨拶をすれば、途端老人の顔がしかめっ面に変わる。

「ヨーク……っ、ヨークの娘か!」


 うん、多分、これ……100%でお父様関連の、いざこざな気がする……。


 流石にいきなり殺人行為は働かないだろうと思いながらも、安心安全第一な私はミランダの後ろへと下がった。危険からは遠ざかるべきなのだ。
 父が何をしたかも聞く気はない。下手に突っついて寝た子を起こすわけにはいかないのだ。


 最高峰の騎士に、一体何したの、お父様っ!!!!


「補足しますと、旦那様はミルカの元恋人たちを全員寝取ったそうです」


 おぅふ……お、お父様……!!!!


「あんな男を『旦那様』などと呼ぶな!」
「更に補足しますと、浮名のレベルMAXだった養父の地位を奪ったのが、旦那様です」
「そんな地位……いる?」

 思わず漏らす。
 父も父だが、こんな老人に熱をあげていた女たちも女たちだ。

「どこから命を狙われてもいいように、見通しの良い敷地と壊れてもすぐに立て直せる家にしていたそうです。ですが、それも旦那様に人気を取られた事で、ただの貧乏騎士の侘しい館。いえ、掘っ立て小屋ですね」
「うるさい!」

 ミルカが反論する。

「儂は特に不自由もしておらんし、充分じゃ。大体、久々に帰ってきたと思ったら……人の悲しい過去を暴露するとは、どういうつもりだ」
「今日はミルカの誕生日ですから、顔見せに戻りました。どうせ一人っきりだったんでしょう? 哀れな老人への優しさですよ。ごちそうを作ります」

 淡々と言うミランダに、老人が鼻を鳴らす。


 意外と、……イイトコあるじゃん。


「補足しますと」

 ミランダがまた何か追加する気らしい、と顔をあげる。

「ミルカは転生者だそうです」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
ファンタジー
公爵令嬢として生まれながら、子ども時代からメイドや周囲の陰謀で、次々と濡れ衣を着せられ、「悪女」扱いされてきたミリアム。 第3王子との婚約を聖女に奪われ、聖女への嫌がらせの冤罪で国外追放された後、平民として生き延びる中で、何度も5年前へのロールバック(逆行)を繰り返すことに。 生計をたてる為に、追放後の平民生活で極めた針仕事が、ロールバックが繰り返されることで、針仕事の能力だけは引き継がれ、天才的な実力を手に入れる。 その時女神「アテナ」の加護を得て、2つの力を手にすることに。 「加護縫い」 (縫った布に強力な祝福を込められる) 「嘘のほころびを見抜く力」 (相手の嘘を布のほころびとして視覚的に捉え、引き抜く、または繕うことで、真実を暴いたり修正したりする) を手にしたミリアムは、5歳の幼女時代まで遡り、2つの力で悪評をぬりかえ、仲違いしていた家族も、加護の力を与えることで協力な味方へと変貌。 さらに、女神から可愛いしもべ「アリアドネ」を授かり、元婚約者と聖女にザマァを狙う中、加護縫いの能力が最も高い人間を王太子妃に迎える決まりのある大国、ルーパート王国の王太子が近付いて来て……?

処理中です...