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第7章・二つの心
◆ 26・転生者の憂鬱(前) ◆
しおりを挟む「転生者? 転生者ってどういう……」
ゴクリと、唾を飲み込み問いかける。
「3回分の記憶があるだけじゃ」
ミルカ・ヘルレヴィは何でもない事のように答えた。
3回分の記憶があるだけで普通ではない。私なんて7回目のはずだが、前世など一つも覚えていない。勿論、この生に限っては何十回と覚えているが、『転生』と言うからにはリスタートの話ではないだろう。
「1回目は人間に叩き潰された虫、2回目は叩き潰した人間の弟に生まれ、3回目は叩き潰した人間が妻となるも不倫され、4回目が今じゃな。その人物ともに4回目の縁があった。ま、過去の清算に殺したぞい」
「……ヤバい人じゃん」
本音を漏らす。
「叩き潰された衝撃と、いびられた過去、永遠を誓った相手による裏切り等々……まぁ色々紆余曲折を経てのぅ」
「そしてミルカは女性不信になり、女への復讐のように軟派なクズ男になったのです」
ミランダがしめる。
いや……うん、ここは難しい問題だ。何せ私もリスタートの度に色々な気持ちを抱き、復讐や逃亡や、先手必勝攻撃をしかけてきた身の上だ。一概に否定できない行動だ。
「まさかソレがミランダの親だったなんて言わないよね?」
「そうじゃが?」
「母がその人物だったようですね。立ち話も何ですし、紆余曲折話は私が料理をしている間にでもどうぞ。大量に豆をもってきましたので」
言うとミランダは、馬車から麻袋を下ろす。子供一人は入ってそうな大きさだ。
「豆、なの?」
「ヘルレヴィ家の紋章は豆ですよ。豆のスープに豆のサラダ、豆パンに……と。お嬢様も楽しみにしていてくださいね」
軽々と持ち上げた拍子に、ザリリッと袋が音を立てる。
家の中へと消えていくミランダを、呆然と見送る。
「えっ……と。じゃあ、とりあえずミランダの親の罪とやらを教えて頂けます?」
「普通そういう所は流すとこじゃろ」
「大事そうな事は聞いて置きたいんで。何が切っ掛けで死へのカウントダウンに繋がるか、分かりませんからね!」
ミルカは「さもありなん」と大きく頷く。
流石は叩き潰された経験があるだけの事はある。
「よかろう。この人生における儂の過去を、かいつまんで説明しよう」
彼に案内されるまま、ミランダの後を追う形で屋内へと入る。そこには一つしか部屋がなかった。
だが全てが揃っている。炊事をする場所に、食卓と2客の椅子、ベッド。食器棚も本棚も各種武器も並べてあった。
そして、屋根裏に続く梯子が一つ。
「屋根裏はミランダの部屋じゃ。バストイレは外じゃぞ」
心を読んだように答えるミルカ。
すでにエプロンをつけたミランダが湯を沸かしている。私は彼と向かい合って座った。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「うむ。何から話すか迷うが、ここはやはり基本情報じゃな! 儂、最強じゃった」
ルーファかな?
「儂、顔は良いし強いし真面目だし騎士団だしで、人気者じゃった」
やっぱりルーファか……。
「あまりの勤勉さに陛下の覚えもめでたく、どこでも顔パスの全方位許可を貰ってたんじゃ」
「へぇ」
気のない返事を返しながらも考える。どこにでもOKという言葉は、城の地下にある封印の書庫や大神殿の扉などにも通じるのだろう。
「ある時、儂は一人の娘に出会った」
あぁ、嫌な予感がしてきた。
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