死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第8章・侵入者

◆ 3・父の封書(前) ◆

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 夕焼けの空の下、満面の笑みで父達に見送られる。
 ミランダと二人、馬車が目指す先は王宮である。


 切ないわ……。


 どんなに胡乱な目で父を見ても、結局はその権威に縋る身だ。我儘を言おうとも父の最終決定からは逃れられない。
 過去の逃げ道は出奔だけだったのだから――。

「何かな、これ」

 渡された封書をヒラヒラと揺らす。ミランダは肩を竦めた。

「分かりませんが、殿下はいらっしゃらないのに……あの男に見せるので?」


 そうなのよね。カエルに届け物って言ってもルーファだし、意味ないのよね。


 封書は随分と薄く軽い。
 好奇心と、手渡す相手の不在が背を押した。私は乱暴に封を開ける。
 二つ折りの紙が二枚。
 流麗な父の文字。


〈チャーリー、それはチャーリーの物じゃないのに〉
 お父様が、カエルに何の悪巧みを持ち掛けてるのか気になるし?
〈でも、勝手に見るのは……〉
 カエルはいないんだし、勝手に見ても怒らないわ。
〈でも……〉
 あんたは善意の声?! ちょっと黙ってて!


「お嬢様、人の手紙ですよ」
「ミランダ……あんたもなの」
「は?」

 怪訝な顔をするミランダから視線を逸らす。
 指摘しながらも気になるのか、彼女は紙を見つめる。

「で、なんと書いてあるんですか?」
「気になるの?」
「私の立場を考えて頂ければ当然かと。現在人間を辞めていますが、立場を忘れたつもりはありませんから」


 つまり、まだまだスパイって事ね。


 手紙は、本当に只の手紙に見えた。
 季節の挨拶から始まり、娘の養育関係を未来の夫へ報告といった形をとっている。
 王子であるカエルと役持ちの父だ。
 社交場でいくらでも会う機会がある者同士のやり取りにしては、違和感がある。


 会った時に話せば良いし、私とカエルは定期的に会ってたし? わざわざお父様が報告するような事、ある?


「暗号でも入っているのでは? ちょっと袋の方を見せて頂いても?」

 ミランダも手紙を覗き込み、不思議そうに言う。手紙を全て手渡せば、封蝋から筒内まで丁寧に見ていく。
 やがて彼女は、糊付けされた部分を剥がした。

「やはりこちらですね」

 得心がいったように微笑む。
 差し出されたノリの部分はテカりながらも、文字が見て取れる。

「えーっと『センプク』と『クルウ』かな? あとこっちは『チンニュウシャ』ね」

 ミランダが、ため息をつく。

「恐らくですが、闖入者があり、潜伏計画が狂ったのでしょう」


 この場合、『誰が』じゃない。『どこに』が問題よ。
 カエル……あんた何してたのよ? このタイミングで暗殺されかけたなら、この手紙に関連してるでしょうよ!?


「カエルとお父様が何を結託して、しでかそうとしてるのか、知らなきゃだわ」

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