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第9章・思惑の行方
◆ 15・反組織の試験(前) ◆
しおりを挟む案内された先――試験会場とやらは、傭兵組合だった。
煉瓦作りの広い敷地を持つ入口を見つめ、溜息をつく。何のことはない登録して来い、ということだ。
「登録してないでしょう?」
モニークの言葉に弟を見る。十代前半で登録している方が稀だが、念のため確認を取る。
「してないよね?」
「うん」
確かに、登録時には組合が定めた最低限の試験受けなければならない。それは点数を競うものではならく、あくまでランク分けと職業系統の確認に使われている。
実力を見る意味でも理にかなっている。
「一人でいける?」
「……ゴエイ」
「あぁ、そうか……ついていくわ」
保護者のようにエイベルと共に建物中に入る。四つの窓口は全て人がズラリと並んでいるし、依頼を貼りだした仕事を吟味する為たむろする人々や、パーティーを募集する人々。
みな、年齢性別装束、様々だ。
その中でも一際小さく場違いなのは、このエイベルだろう。
あからさまな排他的視線を受け、私は溜息をついた。
「オネーサマ」
「ん?」
「スイッチ入る」
スイッチ????
なんの?
基本が無表情なエイベルは、床を蹴った――揺れる視界。
身体は大きく揺れ、尻もちもつく。
地鳴りを受けた後のように気分が悪い。
誰かの息をのむ音と、悲鳴。
「え?」
エイベルの周囲が陥没している。
「トーロクしたいな」
エイベルの言葉。
人垣が割れる。通路のあいた窓口に向かおうとして、彼は思い出したように私に手を差し伸べた。
「オネーサマ、行こう」
「お、……おぉ、そ、そぅね?」
促されるまま手を借りて立つ。モニークが小さく「逸材」と呟いたのが聞こえたが、今は無視をする。
ヤ、バ、イ、よね????
〈チャーリー、どうしたの?〉
アイツ、地面を抉ったのよ?! 修理代はウチにくるのに、ノープランよ!? 何も考えずに蹴りあけて、建物の常識的マナーから教えなきゃいけないってことじゃないの!!
〈わたしたちの、弟だもの。教えてあげましょ?〉
馬鹿!!!! そうじゃないでしょっ、あのガキ、とんでもない力だってことよ!!!! あのガキが暴れたら、誰が止めるのよっ。
〈それは……〉
元天使もかばえなかったらしく、口ごもる。
姉の私よね?! わかる、わかるよ? わかりますとも! だって私のいいなりになってた弟が、キレて人殺して街壊して、それって誰を追求する?! ウチと私よね?! 腹いせに私にくるよね?!
〈落ち着いてチャーリー〉
落ち着けるかぁあぁあ!!!! 結局、死亡ENDへのカウントダウンはこういうことだったのよ、小さなことの積み重ねが、死に繋がっていくのよ。アイツの行動が巡り巡って、悪役令嬢と悪役令息みたいな扱いになって、私たちは一緒に首吊りの未来、待ったなしよ!!
占いは当たるのだと痛感した私は弟の隣で震える。
弟の前に立つ職員も怯えている。
そんな二人など我関せずとばかりに、エイベルは「トーロクに来ました」と言った。
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