157 / 375
第9章・思惑の行方
◆ 16・反組織の試験(中) ◆
しおりを挟む
個室に通された私たち三人は、無言で担当者を待っている。
新規であることよりも、ほぼ壊した施設の修理費弁償の話である。
「ごめん……」
父の誘拐騒動の時とて、エイベルがここまで気落ちしたことはない。
この子、金の亡者すぎるっ。ある意味、お父様の跡継ぎに相応しかったりして。
「お待たせ致しました」
入ってきたのは中肉中背の優男。
緩やかなカーブを描く金髪と青い瞳、ちょっとした動作悠然優雅だ。
それでも違和感を感じて見つめていると、モニークが口を開いた。
「この子が『チャーリー』よ」
いきなり愛称の方で紹介され、混乱するも一瞬だ。
コイツが『すげかえ』王子か。
「紹介します、ヨーク嬢。こちらがアレクサンダー殿下、あなたの婚約者です」
ちょっとカエルなめんなよ? プリンス・オブ・コンクエストがどんなものだと?
内心の不快感を押し殺す。男は何やら自己紹介をしているが知ったことではない。
男はアレックス気取りで表面上は貴公子を、装っている。
「では自己紹介も済みましたし、本題に入りましょう。試験と、補修工事はヨーク家でいいですね?」
頷く。
「では早速広場に行きましょうか。あ、私は普段は試験官をしていますので、お相手仕ります」
人好きのする笑みを浮かべる男は、確かに誰が見ても好感を持つだろう。
その顔はカエルには無理な相談だ。
ルーファは逆に『顔』だけで持っている。
それでも、……カエルの良さはそういうところじゃなくて。
眉をひそめかけ、顔を伏せる。
「チャーリー、どうしたんだい?」
男はすでにカエルのトレースをしている。
台詞も気づかわし気な声も知っている婚約者に近い。
「チャーリー?」
呼ぶな……私は『あんた』とそんなに親しくないっ。
〈チャーリー……〉
私は過去のいくつかの軸で、仮面をつけたアレックスと結婚している。
とんでもないドS開眼したアレックスだと思ってきたが、アレらがもし目の前の人物だったとしたなら――繋がってしまった王家と『民衆』の戦争を止めなければならない。
そしてアレックスの『すげかえ』をどう行うかが問題だ。
モニークの言葉の雰囲気から、アレックスを生かしたままでもいいということは分かったわ。でもそれを受け入れるかどうかはアレックスの問題。先に待つものを知れば、彼は絶対にOKしない。
そうなれば、こいつらは殺す判断をするかもしれない……現状の王子様はルーファだから問題はないけど。でも……。
敵は近くに置け、ですよね……お父様?
私は顔を上げて笑顔を作る。
「弟のこと、よろしくお願いします。この子は父から、私の警護を命令されています。そのため、離れられません。ですから、試験中は私も立ち会わせてください」
男はモニークに視線を向け、彼女の会釈をうけた後「いいでしょう」と答えた。
弟の視線を感じて、目を向ける。
ガラス玉のような目が、私を見ている。
「オネーサマ、いいんですか?」
彼が何について『いいのか』を聞いたのかは分からない。
現状、やるべきことは決まっていて、その方向を向いて歩くしかないのだ。
新規であることよりも、ほぼ壊した施設の修理費弁償の話である。
「ごめん……」
父の誘拐騒動の時とて、エイベルがここまで気落ちしたことはない。
この子、金の亡者すぎるっ。ある意味、お父様の跡継ぎに相応しかったりして。
「お待たせ致しました」
入ってきたのは中肉中背の優男。
緩やかなカーブを描く金髪と青い瞳、ちょっとした動作悠然優雅だ。
それでも違和感を感じて見つめていると、モニークが口を開いた。
「この子が『チャーリー』よ」
いきなり愛称の方で紹介され、混乱するも一瞬だ。
コイツが『すげかえ』王子か。
「紹介します、ヨーク嬢。こちらがアレクサンダー殿下、あなたの婚約者です」
ちょっとカエルなめんなよ? プリンス・オブ・コンクエストがどんなものだと?
内心の不快感を押し殺す。男は何やら自己紹介をしているが知ったことではない。
男はアレックス気取りで表面上は貴公子を、装っている。
「では自己紹介も済みましたし、本題に入りましょう。試験と、補修工事はヨーク家でいいですね?」
頷く。
「では早速広場に行きましょうか。あ、私は普段は試験官をしていますので、お相手仕ります」
人好きのする笑みを浮かべる男は、確かに誰が見ても好感を持つだろう。
その顔はカエルには無理な相談だ。
ルーファは逆に『顔』だけで持っている。
それでも、……カエルの良さはそういうところじゃなくて。
眉をひそめかけ、顔を伏せる。
「チャーリー、どうしたんだい?」
男はすでにカエルのトレースをしている。
台詞も気づかわし気な声も知っている婚約者に近い。
「チャーリー?」
呼ぶな……私は『あんた』とそんなに親しくないっ。
〈チャーリー……〉
私は過去のいくつかの軸で、仮面をつけたアレックスと結婚している。
とんでもないドS開眼したアレックスだと思ってきたが、アレらがもし目の前の人物だったとしたなら――繋がってしまった王家と『民衆』の戦争を止めなければならない。
そしてアレックスの『すげかえ』をどう行うかが問題だ。
モニークの言葉の雰囲気から、アレックスを生かしたままでもいいということは分かったわ。でもそれを受け入れるかどうかはアレックスの問題。先に待つものを知れば、彼は絶対にOKしない。
そうなれば、こいつらは殺す判断をするかもしれない……現状の王子様はルーファだから問題はないけど。でも……。
敵は近くに置け、ですよね……お父様?
私は顔を上げて笑顔を作る。
「弟のこと、よろしくお願いします。この子は父から、私の警護を命令されています。そのため、離れられません。ですから、試験中は私も立ち会わせてください」
男はモニークに視線を向け、彼女の会釈をうけた後「いいでしょう」と答えた。
弟の視線を感じて、目を向ける。
ガラス玉のような目が、私を見ている。
「オネーサマ、いいんですか?」
彼が何について『いいのか』を聞いたのかは分からない。
現状、やるべきことは決まっていて、その方向を向いて歩くしかないのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです
志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑!
10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。
もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。
(頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる