死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

文字の大きさ
159 / 375
第9章・思惑の行方

◆ 18・姉弟 ◆

しおりを挟む

 どうしよう、巨大な怪物を飼っているよう気分。


 なにせエイベルは魔王だ。
 だが、魔王だという感覚は見た目のこともあり、あまり意識できていなかったように思う。今も隣に立つエイベルの一挙手一投足に震えないようにするのが精いっぱいだ。

 親はどういうつもりでこの子と接していたのだろう。

 魔王は、所詮魔王なのだ。味方をしようとも最終的には一人で立ち、一人で世界を相手取る。
 その間に、味方だったはずの悪役連中とは大体不仲になり、魔王の力の前に消えていくのが世の常だ。これは私がわざわざ調べなくても世界が当たり前に受け入れている事実のようなものだ。
 結末の変わらないおとぎ話に近い。


 方向性としては二つあるよね?
 一つ目はひたすらエイベルを愛して愛させてズッブズブに私に堕とす。そうすれば、愛を裏切らない限り、命の保障はされるはずだ。
 二つ目は魔王討伐側に私も加わる。あくまで聖女覚醒までの生かし、その後は……って、待って、まだそんなレベルじゃないし、それができれば苦労はないか。


 そもそも私自身、魔王と聖女をどうしたいのか結論が出ていない。

「オネーサマ」

 エイベルの瞳を見下ろす。
 陽炎はない。

「オレを、殺したい?」

 息が止まりそうになった。
 それは頭の端をかすめた遠い先の話だ。

「でも『うん』って言われても、オレは生きたいから」


 そりゃそうだ。


「エイベル、あんた心が読めるの?」
「ううん、オフクロがさぁ、言ったんだ。オレが悪いコトをしたら殺すって」


 バイオレンス親子……。


「良いコトをしたら好きなモノ作ってくれたんだ。まぁオフクロの方が先に死んじゃったけど」

 何気ない話を装っているが、こちらが悲しくなってくる。
 きっと母親は、この怪物みたいな子をそれでも愛していたんだろう。そしてこんな怪物みたいな子でも、母親から何かを感じ取ってはいたんだろう。
 それが分かったところで、私のプラスになるわけではないが少しだけ胸が温かくはなった。

「じゃあ、今後は私が指針ね」
「シシン?」
「あんた、良いコトと悪いコトの区別がまだ分かんないんでしょ? あんたのお母様が良いコトをしたとか、悪いコトをしたとか教えてくれてたわけだし」
「……え、そうなの?」


 おい!!!!


「言われてみれば、そっか、良いコト側が多い方がいっぱい食べられるなってくらいだったけど」


 親の苦労なんて子供には伝わらないものよね。


「これからは私が良いコトをしたら手料理をたべさせてやるわ! 悪いコトしたら食事は抜きよ! で、今回のは」

 チラリと運ばれていった青年と去っていく治療師たちを見遣り頷く。

「良いコトね。私の嫌な気持ちをあんたが気を回してくれたわけだし、ちゃんと生きてるみたいだしね」
「……オネーサマ」

 やっと分かり合えた気がして微笑む。


「オネーサマって料理、ちゃんとできるの?」


 このクソガキ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
ファンタジー
公爵令嬢として生まれながら、子ども時代からメイドや周囲の陰謀で、次々と濡れ衣を着せられ、「悪女」扱いされてきたミリアム。 第3王子との婚約を聖女に奪われ、聖女への嫌がらせの冤罪で国外追放された後、平民として生き延びる中で、何度も5年前へのロールバック(逆行)を繰り返すことに。 生計をたてる為に、追放後の平民生活で極めた針仕事が、ロールバックが繰り返されることで、針仕事の能力だけは引き継がれ、天才的な実力を手に入れる。 その時女神「アテナ」の加護を得て、2つの力を手にすることに。 「加護縫い」 (縫った布に強力な祝福を込められる) 「嘘のほころびを見抜く力」 (相手の嘘を布のほころびとして視覚的に捉え、引き抜く、または繕うことで、真実を暴いたり修正したりする) を手にしたミリアムは、5歳の幼女時代まで遡り、2つの力で悪評をぬりかえ、仲違いしていた家族も、加護の力を与えることで協力な味方へと変貌。 さらに、女神から可愛いしもべ「アリアドネ」を授かり、元婚約者と聖女にザマァを狙う中、加護縫いの能力が最も高い人間を王太子妃に迎える決まりのある大国、ルーパート王国の王太子が近付いて来て……?

処理中です...