死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

文字の大きさ
187 / 375
第10章・勇者の胎動

◆ 16・第三王子(中) ◆

しおりを挟む
「いい、んですか?」

 搾り出すような声になった。
 王子はけだるそうに、皿のプルプルしたゼリーを鷲掴み、口に運ぶ。

「いいよいいよ。めんどーだなぁ、今度は何なのさ、今回長すぎ、しかも兄上の婚約者が相手とか」

 ブツブツと呟き、テーブルの上で立ち上がる。

「で? 兄上とは何が問題で別れたの? 十文字でヨロシク」
「じ、じゅう?!」
「充分でしょ」

 想定外すぎる対応に、必死で頭を回す。


 父との不仲?! 主義主張の相違?! う、浮気とかしとく?! 何て言えばいいのよ!


「こ、こ……に、もめるチチあり!」
「は?」

 焦ったあまり可笑しな発言をしていた。案の定、彼はポカンとしている。
 だが、口にしてしまった以上はこれで押すしかない。

「そ、れ以上に、重要な事が……ありますか、殿下?」

 少年は「ふむ」と顎に手をあてる。

「新たな提案、でも質問には答えてないので不合格にしたい。おまけに僕はフトモモ派だ」


 性癖の不一致!? 失敗したっっ!!


「正直、そこまで別れた原因に興味があるわけでもなかったし、あんたからの情報とか少しも期待してなかったけど、誤魔化す態度が気に食わないな。やっぱり婚約止め……」
「殿下!! 週一膝枕で、どうでしょう?!」

 キャメロン王子の言葉に割り込んでの発言。
 彼は言葉を止めたまま、私をジッと見つめる。

「毎日」

 彼が言った。
 毎日は無理がある。

「週二でどうでしょう」
「いいよ」


 いいのかよ!!!!


「じゃそういう事で、婚約成立」

 想像以上に早い反応に、こちらが混乱してしまう。
 おまけに早速報酬と宣い、地べたに座らされ、膝枕をする羽目に陥っている。少年の軽い頭を乗せて、呆然と空を見上げる。


 私、何してんだ??


 述懐は長くは続かなかった。
 背後のざわめき――メイドたちの喧噪が思考に耽っていた私を覚ましたのだ。
 振り返れば、カエルの姿。


 え?


「やぁやぁ、兄上様、いらっしゃいませぇ」

 そちらを見もせずにキャメロンが挨拶をする。

「君から招待してくれるなんて驚いたよ、キャメロン」

 婚約解消後、初の邂逅だ。別に仲違いをして別れたわけでもないので、どう反応するのが正しいのか悩む所だ。

「別れた理由を聞こうと思いましたのでー、お招きしたわけでー、でも、今はいいかなぁ、うーん、悪くない、悪くないぞ、このフトモモ」


 そりゃどうも。今後の私のスキルには、膝枕も入れて置こう。


「ヨーク侯との対立が原因だよ。ボクが意見を変えられなかったので、関係破綻にもつれ込んでしまったんだ。チャ……」

 珍しい事に、カエルは一瞬言葉に詰まった。

「彼女には、悪い事をしたと思ってる」


 成程ね……。


 関係破綻した以上、愛称で呼ぶのは障りがあると判断したらしい。いかにもカエルの考えそうな事だ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...