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第10章・勇者の胎動
◆ 17・第三王子(後) ◆
しおりを挟むカエルの言葉に弟王子は興味なさそうに唸った。
「んー……でも、ソレって婚約解消の打撃ほどじゃない気もするっていうかぁ。うーーん、怪しいんだよねぇ、ヨーク侯が、そんな痛みを甘んじて受けるとか納得いかないってゆーかーぁ」
それはそうね?
お父様から婚約破棄に関して何の文句もなかった事、私も違和感なのよね。
「ヨーク侯の事はボクも驚いてるね。残念ながらボクから言える事はないかな」
「同じく……」
私もソッと呟く。
「兄上様って、国王にならないでしょ? 嫁ごと僕が貰っちゃっていいの? こっそり刺客送られるのはウザいし」
直球だな?!
「ボクの発言を信じられないだろうし、そういう事を答えても意味がない気がするね」
「それでも一応、答えてもらいたいんだよね。兄上様にとってはさー、僕って有難い存在でしょ? 国王継いであげるんだからさ。おまけに下げ渡しのように、アンタの元婚約者も拾ってあげるんだから。ね?」
最後の「ね?」は私に向けての言葉だった。
随分な言われようだが、言い分には納得しかない。
「ボクは……」
カエルが逡巡するように言葉を止める。
顔を見れば、普通に戸惑って見えた。
「キャメロン、ボクが今日呼ばれた理由はそういう話なのかな? ボクの『後押し』が欲しいのかと思ってココに来たんだけど」
「後押しねぇ、へー、兄上様ともあろう者がしてくれる気あったんだ?」
「あるよ。いくつか条件は提示するけどね」
いや、ココ見合い場なんですけど???? 政治的な話するなら私、帰るけど?
「じゃ、兄上様、教えてよ。ヨーク侯爵って、なんであんなに権力持ってんの? ボク、断るに断れなくて『今』なんだけど?」
「とてもそうは見えないけど……」
チラリと見るカエルに、キャメロン少年は起き上がる。
「じゃ、細かい打ち合わせしよう。兄上様?」
「普通に『兄上』でいいんだけど……」
「いやいや、僕には二人も兄がいるからねー。呼び分けしとかないとだし」
ごちゃごちゃ言いながらも二人でどこかへ去っていく兄弟たち。
残された私は、後ろのメイドたちを振り返る。
「帰っていい?」
本音が零れる。メイドたちが慌てて留める為に言葉を吐く様を、冷静に見つめた。
彼女たちの立場も分かるが、こちらとて、いつ終わるとも分からぬ王家兄弟の会談なんて待ってられない。だが、父の事を考えれば、黙ってココに座るしかないのだろう。
想像上のミランダの怒鳴り声まで聞こえてくる。
「ねぇ……私って婚約した事になってるのよね?」
「それについても……その、この会談後に婚約発表を予定しておりますので、もう少しお待ちください」
メイドたちを困らせた所で事態は変わらない。
私は椅子に座り、テーブルの菓子に手を伸ばした。
「あっそ。じゃ、軽食もお願い。どうせ長々と話すんだろうしね」
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