死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第11章・恩赦

◆ 5・入れ替え(前) ◆

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 港町まで、特に問題なく行程を進められた私たちは宿を取った。
 西の大陸に向けて多くの船の出入りがあるこの港町は、王都から馬車で7時間の距離。すでに日は夕方の様相を呈している。
 スライ先輩は今後の行程を説明すると言って私たちを一つの部屋へと集めた。

「船の予約便は明日の夕方だ。シャーロット・グレイス、それまでにして欲しい事は荷減らしだ」
「は?」

 目的地は海向こうの大砂漠とあって、馬車に積まれた荷も全て、砂漠に入る事を念頭に用意されている。

「お前の家が用意した荷が多すぎる。必要ない物だらけだ! 俺とモニークで道中いくつか見たが、必要だと思える物は五に一、いや十に一だ! 勝手に捨てるわけにはいかないからな、売り払うなり送り返すなり考えてほしい」
「お父様は必要な物を揃えたって言ってたはずよ」

 途端、モニークが眉を吊り上げる。

「夜会用のドレスなんて絶対いらないわ! 馬鹿なの?」

 父よりは庶民の生活に馴染みがある私は、言葉に詰まる。

「……わ、かった。選別して送り返すわ」
「俺は商売柄、旅や交渉ごとに長けている。そこを見込んで今回雇われた。モニークの方は出身が西の大陸という事で雇われたらしい。交渉担当は俺、道案内はモニーク、戦闘はエイベル、と……お前になっている」
「はぁ……」


 戦闘って言われても、何とよ? 海賊とでも戦えって? 物語じゃないんだから、そうそう出ないわよ。イカ探しの時、アレだけ船出して海賊船一艘すら出なかったんだから。


「じゃ、キャメロン殿下は何のためにいるの?」

 ベッドで寝そべる少年に話を振れば、気のない素振りで溜息をつく。

「行かなーい。建前だよ、建前ぇー。あんたと避暑旅行ってやつ。ついでに荘園管理って『イイワケ』で貴族のお勤めに来てる設定だからねー」


 成程。


「あんたと行くのは、別のヤツに任せた。こっちは風邪で臥せってるって『設定』にしておくからさ。まぁ? 精々? あんたは長生きしてくる事だね」

 皮肉たっぷりに言う言葉の意味を、正しく理解しているのは私だけだ。

「別のヤツって?」
「……あっちは金持ってるから、遠距離移動陣とか使ってくるだろうし? 合流待ってればー」

 彼は起き上がり、部屋を出ていく。続いてモニークが後を追った。

「モニークはお前のフリをして、殿下と別荘まで行って戻る予定だ。それまでに荷物の整理をしろ」


 モニークが私のフリ? 出来るの??


 しぶしぶ頷けば、先輩は表情を緩める。

「しかし、安心したぞ」
「何が」
「うまく行ってないみたいで。……俺はアレックスの友達だからな」
「いやいや、破棄してきたのアッチなんですけど?」
「それでも、だ」


 実情、うまく行く行かないの前に憎まれているんですけど?


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