210 / 375
第11章・恩赦
◆ 9・時系列と突発事項 ◆
しおりを挟む
「ん」
短い返事と共に始まる落下。
目の端で床を蹴り跳ぶエイベル。同時に彼の衝撃で、船が傾ぐ。必死で吸った息と共に衝撃――覚悟していた以上の痛みが、私から五感全てを失わせた。
目は沁み、思わず飲み込んだ水も咳き込みそうなほど辛い。
〈……リー、チャーリー……!〉
意識がぼやけて、今どこで何をしているのかさえ遠のく。
息、苦しい……。
〈チャーリー!!〉
息が……どうして……?
〈チャーリー! 起きて……っ! しっかりしてっ〉
元天使の叫びの意味が分からない。
何を、騒いで……。
漏れる息が水泡となって下へと降りていくのを不思議な気持ちで見つめる。
〈チャーリー! 水だよっ、ココは水の中だよ!〉
み、ず?
〈ウミだよ! ウミの中!〉
……うみ、海……っ、海! そうだ、落ちたんだったっ!!
ゴポリと漏れる空気。
ヤバい……! 上、上は?! あっち????
口から洩れた空気が下へと流れる様に、あちらが出口なのだと気づく。
必死に水を掻くも、自重が私を沈ませる。焦れば焦るほど、息は苦しく、空気が漏れ出る。
もう、ダメ……っ。
最後に考えたのは、船旅の服は布地の少ない物を着用すべきという事。
◆◇◆
「チャーリー……!」
水も滴るイケメンが私を覗き込んでいた。
これがルーファの顔じゃなかったら、もう少し喜ばしい気分だったかもしれない。悲しいかな、ルーファの残念っぷりを知ってるだけに、ときめく気すら起きない。
「アレックス、イカは?」
思ったよりもしっかりとした声で問う事ができた。起き上がってみれば、マストの折れた船の甲板には死屍累々の様相。生きてはいるが船員も客も転がっているし、船や荷の破損も多く見受けられる。
「エイベルが、吹き飛ばした……よ」
吹き飛ばした?
「オネーサマ、ごめんなさい」
日光を遮って立つエイベルも水滴を落としている。
「強くなぐったら、とんでいった」
アレックスの内容を補填するように付け加える。
うん無理、今は考えたくないわ。
えーっと、今、話しておくべき事は……?
先輩とモニークは船長らしき人と話し込んでいる。
「アレックス、このイカ騒動ってどういう事だと思う?」
「イカは前回の方が大きかったし、おそらくはチャーリーの予見に当たる存在は前回の方だと思うよ? 時間軸的にもね。何より、人間の結界が効いた事が理由かな」
「でも、イカが何体も出るなんて……」
彼は逡巡する。
「そうかな? チャーリーが知らないだけでいた可能性はあるよ。それに……先輩を消す事が目的なら、追加で発注された可能性も。ただそうなると、まだ気が抜けない状態って事になるけど」
「それ……また出るって事?」
「可能性はあるよ」
今度は私が黙り込む。
旅に際して悪漢と戦う事は想定していたし、普通に事件に遭う事も考えた。だが、何体もモンスターの相手をするなど考えてもみなかった。
「それよりチャーリ―」
顔をあげる。
「どこもケガはないの?」
「あんた、人工呼吸してないよね?」
「してないよ! むしろ途中まで泳いでくれたから、ボクは引き上げるだけで……安心したよ」
泳いで?
〈およいだ!〉
お、おぅ……初めて、あんたに礼を言いたい気分だわ。
〈どういたしまして〉
照れたような気配を醸し出し、アーラは朗らかに答えた。
短い返事と共に始まる落下。
目の端で床を蹴り跳ぶエイベル。同時に彼の衝撃で、船が傾ぐ。必死で吸った息と共に衝撃――覚悟していた以上の痛みが、私から五感全てを失わせた。
目は沁み、思わず飲み込んだ水も咳き込みそうなほど辛い。
〈……リー、チャーリー……!〉
意識がぼやけて、今どこで何をしているのかさえ遠のく。
息、苦しい……。
〈チャーリー!!〉
息が……どうして……?
〈チャーリー! 起きて……っ! しっかりしてっ〉
元天使の叫びの意味が分からない。
何を、騒いで……。
漏れる息が水泡となって下へと降りていくのを不思議な気持ちで見つめる。
〈チャーリー! 水だよっ、ココは水の中だよ!〉
み、ず?
〈ウミだよ! ウミの中!〉
……うみ、海……っ、海! そうだ、落ちたんだったっ!!
ゴポリと漏れる空気。
ヤバい……! 上、上は?! あっち????
口から洩れた空気が下へと流れる様に、あちらが出口なのだと気づく。
必死に水を掻くも、自重が私を沈ませる。焦れば焦るほど、息は苦しく、空気が漏れ出る。
もう、ダメ……っ。
最後に考えたのは、船旅の服は布地の少ない物を着用すべきという事。
◆◇◆
「チャーリー……!」
水も滴るイケメンが私を覗き込んでいた。
これがルーファの顔じゃなかったら、もう少し喜ばしい気分だったかもしれない。悲しいかな、ルーファの残念っぷりを知ってるだけに、ときめく気すら起きない。
「アレックス、イカは?」
思ったよりもしっかりとした声で問う事ができた。起き上がってみれば、マストの折れた船の甲板には死屍累々の様相。生きてはいるが船員も客も転がっているし、船や荷の破損も多く見受けられる。
「エイベルが、吹き飛ばした……よ」
吹き飛ばした?
「オネーサマ、ごめんなさい」
日光を遮って立つエイベルも水滴を落としている。
「強くなぐったら、とんでいった」
アレックスの内容を補填するように付け加える。
うん無理、今は考えたくないわ。
えーっと、今、話しておくべき事は……?
先輩とモニークは船長らしき人と話し込んでいる。
「アレックス、このイカ騒動ってどういう事だと思う?」
「イカは前回の方が大きかったし、おそらくはチャーリーの予見に当たる存在は前回の方だと思うよ? 時間軸的にもね。何より、人間の結界が効いた事が理由かな」
「でも、イカが何体も出るなんて……」
彼は逡巡する。
「そうかな? チャーリーが知らないだけでいた可能性はあるよ。それに……先輩を消す事が目的なら、追加で発注された可能性も。ただそうなると、まだ気が抜けない状態って事になるけど」
「それ……また出るって事?」
「可能性はあるよ」
今度は私が黙り込む。
旅に際して悪漢と戦う事は想定していたし、普通に事件に遭う事も考えた。だが、何体もモンスターの相手をするなど考えてもみなかった。
「それよりチャーリ―」
顔をあげる。
「どこもケガはないの?」
「あんた、人工呼吸してないよね?」
「してないよ! むしろ途中まで泳いでくれたから、ボクは引き上げるだけで……安心したよ」
泳いで?
〈およいだ!〉
お、おぅ……初めて、あんたに礼を言いたい気分だわ。
〈どういたしまして〉
照れたような気配を醸し出し、アーラは朗らかに答えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです
志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑!
10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。
もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。
(頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる