死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第11章・恩赦

◆ 8・時系列って何? ◆

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 旅人として名前と旅券を用意されていた。
 モニークとスライ先輩は名前を変える必要がなかったのでそのままだ。もちろん覚えられない事を踏まえて、ほぼ困らない程度の情報量にされている。流石は父とスライ先輩だ。こちらの頭の程度を理解してくれている。

 私はチャーリー・グリーン、弟はエイベル・グリーン。スライ先輩曰く、目の色が緑だからグリーンにしたとの事だ。共に親戚に会う為に旅行中とされている。
 そして急遽現れたルーファの姿をしたカエルは――只のアレックス。設定は自分で用意しているとの事だったので、追々わかるだろう。
 アレックスとの合流は私にとっても有難い事で、スライ先輩も驚き喜んだ。ただし、戻ってきたモニークはあからさまな疑念を視線にのせている。


 このまま、一晩、同じ部屋で過ごすの辛いな……。


 四人で一室の部屋には、アレックス分のベッドも入れられている。
 微妙な空気を気にもしないアレックスとエイベルが、心底羨ましかった。


◆◇◆


 うん、どうしてこうなった????


 私は甲板から投げ出されて、ブラーンと船縁から垂れ下がっている。
 私を掴んでいるのはエイベルの手だ。お陰で、波に大きく揺れていても、海原に放り出される事はない。
 船に乗るまではスムーズだった。
 本当に、何故こうなったのだろう。首を傾げる余裕すらもない。大きく揺れる船、飛び交う怒号、投げ出される荷――と、人々。その中の一人が私だ。


「チャーリー……! あれはっ、イカ? だよね??」

 アレックスが聞く。
 こちらも傾いた船縁にしがみついての言葉だ。


 そうね、イカよ!!!! 何でよっ?! 時系列的にイカのターンは、もう済んだはずでしょ!?


 海から跳ね上がる白い軟体の足が、高く高く掲げられる。


 ヤバイ……っ!!!!


 息をのんだのは私だけじゃないはずだ。
 船が叩き割られる事を予想し、エイベルに指示を出すべきか悩む。仮に彼に指示した場合、手を離されれば海に没入するし、指示しなかった場合はやはり二人して投下されるのだ。


 どうす……っ。


 目を瞑ろうとした瞬間、しなるイカの足が光の膜にぶつかって空気が揺れる。轟音が響く。
 スライ先輩の結界だ。
 続いて二撃目の衝撃。そして三撃目が降る。

「え、エイベル……!!」

 この際、海に落下は仕方ない。結界が割られるのは時間の問題だ、こんなにも結界内の空気を振動させるなど普通じゃない。

「なに? オネーサマ」
「ヤッて……!」

 不思議そうなエイベルに、再度叫ぶ。

「殺って来てっ、エイベル!!!!」



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