死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第12章・秘密は舞台

◆ 13・オアシスの守護神vs栄養失調な魔王(前) ◆

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 地上に走り出て、思考停止――明るい空。
 深夜の空は明けるように白んでいる。遠くは星空が広がっているのだから、可笑しな事が起きようとしているのだと分かった。
 後ろから影が被さり、見上げる。

「……なん、だ、山が……、おい、山が生まれるぞ?!」

 先輩の声音が全てを表していた。
 背後に大きな半円。
 山にしては小さいし、巨岩のようなソレは六角の文様が浮かんでいる。時折ゆさりゆさりと揺れる。

「……まさか、よね?」

 誰に問いかけたわけでもない。
 でも誰かに否定して欲しかった。

「オネーサマ?」


 大きすぎる……。


 その巨大なモノが何を意味するか、本能が理解してしまっている。
 カメだ。
 恐らくはカメなのだ。
 もちろん、イノシシもイカも大きかった。だが、イノシシは距離感が遠かったし、イカは身体の大半が海の中でその姿の全容を見たわけではない。


 この距離で、このサイズ! 普通に死ぬでしょ?!
 いやいや、エイベルはイカもぶっ飛ばしたし……? そ、そうだわ、イカ殺してたよね? イカ殺してて寝込んだって事はやっぱカメじゃダメって事? いや、今は考えるなっ。


 岩山の裾野から、ぬぅっと覗く顔。
 もう見紛いようもないカメその物だ。
 赤い瞳がこちらを捉える。

「エイベル……!」

 指示を含ませた声に、彼が飛ぶ。
 地を蹴り、宙に舞った体――だが姿なき何かに突き飛ばされ、地面に叩き戻された。凄まじい衝突音と共に地面を削り、民家の壁に激突する。

「え?」
「は?」

 私とモニークの声がハモった。

「ちょ、ちょっと……エイベル?!」

 ルーファが溜息をつく。

「まぁ、今の状態じゃ納得の結果だな」
「どういう意味よ! 説明、すぐに説明して!」

 ルーファの胸倉を掴み揺する。

「だかーらー……単純にエネルギー不足ってヤツだよ。アイツ、ロクに食ってねぇんだろ? つーか、さっきの見る限り、喰い方もなってねぇけど」
「だからっ、どういう意味よ!?」

 食事なら充分すぎるほど食べさせてきた。

「悪魔の食事は知ってんだろ? 形はどうあれ、人間から接種するのが一番のてっとり早い。アイツは栄養失調が続いてる状態だな。人間一匹の死程度じゃなぁ」

 ルーファの食事は生気や欲を吸い取る形だった。

「さっきも、吸い取りが少なかったしな」
「吸い取り?」
「しょうがねぇな……」

 呆れたような彼の呟き、同時に頬に衝撃。


 なぐ、られた?!


「は……、い……?」

 混乱からカエルの顔を見つめる。

「おい、魔王! さっさと動かねぇと、お前の姉貴が死ぬぞ?」


 な、なるほど!? 使命感に訴えかけるパターンねっ。


 即座にルーファの意図を理解し振り返る。雰囲気次第では泣き叫んでやってもいいと思うも、エイベルはクールな態度で立ち上がった。

「痛みが足りねぇのか、栄養になってねぇな。痛み、血、肉、恐怖、どれが食事だろうな」
「肉、困る……!」

 慌てて抗議する。

「つっても、アイツのエネルギーが足りねぇと話にならねぇだろ」
「いやいやいやっ!」


 そのために痛めつけられるなんて冗談じゃないっ!


 必死で立ち上がり、弟の後ろに逃げ隠れる。さぞかし無様な姿だったらしく、ルーファが愉快そうに笑った。


 ルーファ、覚えてなさいよっ。


「血かな?」

 私の怒りをスルーして、栄養失調魔王が答えた。


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