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第12章・秘密は舞台
◆ 14・オアシスの守護神vs栄養失調な魔王(中) ◆
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「よし、チャーリー、血を流せ」
ルーファが当たり前の事のように口にする。
「はぁ?」
何言ってんだ、コイツ。カエルの体使ってなきゃ、エイベルにぶっ飛ばしてもらってるからね??
私の気持ちを悟ったわけではないだろうが、弟は拳を握りしめた。
「オネーサマがケガをするのは困る」
「勝てねぇぞ? 見りゃ分かる、絶対量が足りてねぇ」
「血は……死ぬくらい、いる。オネーサマの命がなくなるのはケーヤク的に困る」
まさかここで父と彼の養育に関する契約が、私を救うとは皮肉だ。
「大丈夫だ。悪役令嬢ってのは聖女における勇者に等しい。普通とは違うぜ? 一滴もらいな」
何を勝手に……!
甲高い鳴き声と共に地が揺れる。カメが鳴いたのだ。小動物的な可愛らしいキューという音だが、なにぶん大きすぎるし耳に痛い。
小山が揺れるようにカメが前進を始めた。
「……お、おっけぇ……やりましょうっ」
まるで昔話に出てくる吸血鬼だが、こんな状況だ。一滴なら許すに決まってる。
私はエイベルの口に掌を押し付けた。
「傷は小さめで一滴分よ! さっさとやって!」
驚いた顔の弟から目を逸らす。
ガッツリかみついたらキレるからっ。
エイベルの手が震えながら、私の手を押しやった。
「へいき。さっき一匹入れたし、勝てる」
警備兵の死体が頭に浮かぶ。
再び地を蹴る弟は、風を切り裂くようにカメとの距離を詰める。
「……姉弟愛でも芽生えたか? だがな、チャーリー、お前は分かってるだろ? 良くも悪くもお前らの行きつく先を考えれば、お前の方は情を捨てるべきだぜ?」
ルーファの目を見ればわかる、これは憐憫だ。カエルの表情を読む事に慣れていた弊害だ。
甲羅から噴き出る風が少年の小さな体を吹き飛ばす。
そうね……本当にそうだわ。
でも……ダメ。あんたの狙いはアーラで、どんなに親しく見えて、友情を感じても『私』にとっては敵になる存在。おっさん天使も、あんたも皆が求めてるのはアーラだ。
先ほど壊れた壁のひとかけらを掴み左の掌に押し当て、歯を噛み締める。
覚悟、しなさいよ……シャーロット・グレイス・ヨーク!
私の敵は天使やら悪魔やらいて、味方なんてマジでいないんだからっ。あんな化け物、しかも魔王にとっては本来雑魚でしょ?! こんなトコで足止め食らってどうするのよっ。さっさとアレを片付けて、……あぁ……くそっ。
呼吸を止め、掌に押し付けた破片に力を込めた。
肉が破れ、血が滲む。
「……った、い……!!」
突き通したわけでもないのに、痛みに歯が鳴る。
再び叩きつけられていた魔王が立ち上がる。
「エ、イベル……!」
彼は驚いた顔でこちらを見ている。
現状……魔王は仲間、だったら……っ! あんたには最強でいてもらわないと、私自身が安心できないのよっ。
「あげるから、さっさと来なさい!」
少年の姿をした魔王は葛藤するように動かない。
「あんた……誰のために、切ったと思ってるの!? 姉、命令よ!!!!」
劇的には程遠いゆっくりとした足取り――少年魔王は私の前で立ち止まる。
「いいの?」
「くどい!」
彼の顔に、血濡れた掌底を叩きつけた。
ルーファが当たり前の事のように口にする。
「はぁ?」
何言ってんだ、コイツ。カエルの体使ってなきゃ、エイベルにぶっ飛ばしてもらってるからね??
私の気持ちを悟ったわけではないだろうが、弟は拳を握りしめた。
「オネーサマがケガをするのは困る」
「勝てねぇぞ? 見りゃ分かる、絶対量が足りてねぇ」
「血は……死ぬくらい、いる。オネーサマの命がなくなるのはケーヤク的に困る」
まさかここで父と彼の養育に関する契約が、私を救うとは皮肉だ。
「大丈夫だ。悪役令嬢ってのは聖女における勇者に等しい。普通とは違うぜ? 一滴もらいな」
何を勝手に……!
甲高い鳴き声と共に地が揺れる。カメが鳴いたのだ。小動物的な可愛らしいキューという音だが、なにぶん大きすぎるし耳に痛い。
小山が揺れるようにカメが前進を始めた。
「……お、おっけぇ……やりましょうっ」
まるで昔話に出てくる吸血鬼だが、こんな状況だ。一滴なら許すに決まってる。
私はエイベルの口に掌を押し付けた。
「傷は小さめで一滴分よ! さっさとやって!」
驚いた顔の弟から目を逸らす。
ガッツリかみついたらキレるからっ。
エイベルの手が震えながら、私の手を押しやった。
「へいき。さっき一匹入れたし、勝てる」
警備兵の死体が頭に浮かぶ。
再び地を蹴る弟は、風を切り裂くようにカメとの距離を詰める。
「……姉弟愛でも芽生えたか? だがな、チャーリー、お前は分かってるだろ? 良くも悪くもお前らの行きつく先を考えれば、お前の方は情を捨てるべきだぜ?」
ルーファの目を見ればわかる、これは憐憫だ。カエルの表情を読む事に慣れていた弊害だ。
甲羅から噴き出る風が少年の小さな体を吹き飛ばす。
そうね……本当にそうだわ。
でも……ダメ。あんたの狙いはアーラで、どんなに親しく見えて、友情を感じても『私』にとっては敵になる存在。おっさん天使も、あんたも皆が求めてるのはアーラだ。
先ほど壊れた壁のひとかけらを掴み左の掌に押し当て、歯を噛み締める。
覚悟、しなさいよ……シャーロット・グレイス・ヨーク!
私の敵は天使やら悪魔やらいて、味方なんてマジでいないんだからっ。あんな化け物、しかも魔王にとっては本来雑魚でしょ?! こんなトコで足止め食らってどうするのよっ。さっさとアレを片付けて、……あぁ……くそっ。
呼吸を止め、掌に押し付けた破片に力を込めた。
肉が破れ、血が滲む。
「……った、い……!!」
突き通したわけでもないのに、痛みに歯が鳴る。
再び叩きつけられていた魔王が立ち上がる。
「エ、イベル……!」
彼は驚いた顔でこちらを見ている。
現状……魔王は仲間、だったら……っ! あんたには最強でいてもらわないと、私自身が安心できないのよっ。
「あげるから、さっさと来なさい!」
少年の姿をした魔王は葛藤するように動かない。
「あんた……誰のために、切ったと思ってるの!? 姉、命令よ!!!!」
劇的には程遠いゆっくりとした足取り――少年魔王は私の前で立ち止まる。
「いいの?」
「くどい!」
彼の顔に、血濡れた掌底を叩きつけた。
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