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第12章・秘密は舞台
◆ 21・生贄会議(後) ◆
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「どう、して……それを……」
呆然と令息が呟く。
口ぶりからして、この家の当主は死んでいるのだろう。
でもソレって、私たちに関係ない話じゃない? この感じなら死んで間もなくて、跡取り問題かなんかで揉めてるって事も察しはつくけど……。
アレックスの意図が分からず見つめる。
「モンスターを意のままに従えるには条件があるそうですね。悪魔と契約を交わすように、モンスターと……」
「どうして、よそ者が……!」
父に似ていると思った男は、今や見る影もなく動揺を露にしている。
アレックスは優美に立ち上がる。
「実を言いますと、そこまで詳しい事は知りません。ごくわずかな事です」
これは私でも分かる。アレックスはおそらく相当調べ込んできている。
「たとえば、生成者の血族からは定期的な生贄が輩出されている事。そう、病気や怪我で死に瀕した場合、老いや不調、そういった事で選別され、生贄となる。その為、ヨルク家では妻子を多数持たねばならず、幼子に至るまで生贄選別からは逃れられないと」
令息は震える手で顔を覆う。
「ですが、ヨルク伯の子は一人……カシム・クシュム・カミール・シャプール・スィナン・ティメル・アララ・カドリ・ヨルク殿のみ。正確には二人でしたか。あなたには姉君がおられ、すでに身罷ったと聞き及んでおります」
「……そ、んな事まで……」
膝をつくカシム・中略・ヨルク。
「今回、シャーロット・グレイス・ヨークが選ばれたのは、あなたのご子息の代わりですね?」
「子息……、子供?」
思わず聞けば、カシムは顔を背けた。代わりにアレックスが説明する。
「そうだよ。ヨルク伯が亡くなったのは最近の話だろうね、本当は血肉を捧げる事になっていたんだろうけど、計算が逸れたのか、死の方が先に来てしまったんだろうね。生贄としての価値が失われ、次の生贄が必要となった。まだ彼の子らは皆……若い。彼らを養育する上で自己犠牲的に身を差し出すわけにもいかなかったのかな」
……そこに、ちょうどよく……親戚の私が来たと……。
「でも、私の血肉でイケたの? 私なんてこっちに親戚がいる事も知らないくらいだったんだよ。それって血族的にもヨーク家にとっては重要度低いって事でしょ?」
「それでも、可能性に懸けたかったんだろうね」
そこは、なんか……胸にズシンと来る。生贄にされかけた手前、納得はできないけど……可能性には縋りたくなるものだし……むしろ縋って当然だわ。
「って、あのさ……カメ死んだじゃない? なんで今、毒盛った?!」
もう生贄に差し出す必要はなくなったはずだ。今までの理屈をすっ飛ばした行動だ。どう考えても可笑しい。
混乱する私に、アレックスが抑揚のない声で答える。
「代替わりだよ」
代替わり? え、……まさか……!
呆然と令息が呟く。
口ぶりからして、この家の当主は死んでいるのだろう。
でもソレって、私たちに関係ない話じゃない? この感じなら死んで間もなくて、跡取り問題かなんかで揉めてるって事も察しはつくけど……。
アレックスの意図が分からず見つめる。
「モンスターを意のままに従えるには条件があるそうですね。悪魔と契約を交わすように、モンスターと……」
「どうして、よそ者が……!」
父に似ていると思った男は、今や見る影もなく動揺を露にしている。
アレックスは優美に立ち上がる。
「実を言いますと、そこまで詳しい事は知りません。ごくわずかな事です」
これは私でも分かる。アレックスはおそらく相当調べ込んできている。
「たとえば、生成者の血族からは定期的な生贄が輩出されている事。そう、病気や怪我で死に瀕した場合、老いや不調、そういった事で選別され、生贄となる。その為、ヨルク家では妻子を多数持たねばならず、幼子に至るまで生贄選別からは逃れられないと」
令息は震える手で顔を覆う。
「ですが、ヨルク伯の子は一人……カシム・クシュム・カミール・シャプール・スィナン・ティメル・アララ・カドリ・ヨルク殿のみ。正確には二人でしたか。あなたには姉君がおられ、すでに身罷ったと聞き及んでおります」
「……そ、んな事まで……」
膝をつくカシム・中略・ヨルク。
「今回、シャーロット・グレイス・ヨークが選ばれたのは、あなたのご子息の代わりですね?」
「子息……、子供?」
思わず聞けば、カシムは顔を背けた。代わりにアレックスが説明する。
「そうだよ。ヨルク伯が亡くなったのは最近の話だろうね、本当は血肉を捧げる事になっていたんだろうけど、計算が逸れたのか、死の方が先に来てしまったんだろうね。生贄としての価値が失われ、次の生贄が必要となった。まだ彼の子らは皆……若い。彼らを養育する上で自己犠牲的に身を差し出すわけにもいかなかったのかな」
……そこに、ちょうどよく……親戚の私が来たと……。
「でも、私の血肉でイケたの? 私なんてこっちに親戚がいる事も知らないくらいだったんだよ。それって血族的にもヨーク家にとっては重要度低いって事でしょ?」
「それでも、可能性に懸けたかったんだろうね」
そこは、なんか……胸にズシンと来る。生贄にされかけた手前、納得はできないけど……可能性には縋りたくなるものだし……むしろ縋って当然だわ。
「って、あのさ……カメ死んだじゃない? なんで今、毒盛った?!」
もう生贄に差し出す必要はなくなったはずだ。今までの理屈をすっ飛ばした行動だ。どう考えても可笑しい。
混乱する私に、アレックスが抑揚のない声で答える。
「代替わりだよ」
代替わり? え、……まさか……!
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