死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

文字の大きさ
276 / 375
第13章・悪役闘争

◆ 15・穢れと天使と猟奇問題 ◆

しおりを挟む
〈チャーリー……〉


 久々のアーラの声だ。
 同じ体を利用しているだけあって、姿は見えない。脳内での声の調子から相手の様子をはかるしかないが、元気がない。
 自由にならない体がどうなっているのも分からない。
 世界は真っ暗だ。
 記憶を辿ってみれも、ベッドに入った所までしか覚えていない。


〈あのね、チャーリー……、チャーリーはねてるの〉
 あ、やっぱりそうなの?
〈こうやって話せるのも後少しだと思って、話しておかないとってことを話そうって思って〉
 え? 死ぬの?!


 驚きのあまり叫ぶ。
 方々に問題が起きかねない事態だ。主におっさん天使とルーファに、だが。


〈ううん、でもチャーリーから見たら近いのかな?〉
 いやいやいや! 困るんですけど?!
〈あのね、チャーリーが悪役に近づいて時が回り始めたんだけど、わたしはね、ダメなの。天使だから、ケガレが強くてね、あっ、チャーリーのね〉


 天上の生物である元天使だ。堕天したとはいえ、悪役はきついのだろう。


 私が汚すぎるって事よね?
〈うん、そう! 分かってくれた、良かった!〉
 ……かなり失礼な態度なんですけど??


 ツッコミを無視して彼女は続ける。


〈チャーリー、下の魔王と約束したでしょ? えーっと、ヘクター君をこわすって〉


 言われてみて、初めて何かを忘れていた事に気付く。頭が熱い。


 そうだわ、確かに……そうだ。なんか約束したわ。
〈わたしたちは、悲しさや苦しさを止めたくて……したの。こちらの世界に……だから、死なないで、ヘクター君とも手をとりあえるよ! 力はね、集められるから……しなくても〉


 所々が欠けている気がする。地上の言葉が苦手なアーラは毎度大事な事をしっかり伝えられない残念な子だ。
 それでもかろうじて分かる。


 ヘクターを壊すなって?
〈うん! ヘクター君の『なかみ』をとりだして……〉
 中身?! かっさばけって?!
〈うん? うん、体を開いて、胸のあたりにある赤い」


 彼女は一生懸命伝えようとしてくれているが、天使の穢れの感覚が分からない。
 聞く限り猟奇じみた話をしている。


 え、……と、ヘクターを切り開いて胸から赤い核っぽいのを引っ張り出して……『食え』と?
〈うん! 良かった、伝わった!〉


 嬉しそうな声色ながら、こっちの気持ちはだだ下がっている。


 それ、ヘクター、生きてるの? あんた、壊すな的な。
〈チャーリーの中に入るから平気だよ? 壊さないで、一体化するの。しばらく入れ物チャーリー、他の人も入れられる、しんぞー? 食べるといいかな?〉


 当然、私は言葉を失った。


〈もし入れ物になりたくなかったら……と、……か、いいかなって思うよ〉
 いや、そこ大事なとこ!!!!
〈チャーリー、チャーリーは今までの悪役の中でも、すごくないけど、とっても気持ちが強いし、がんばれると思うの!〉
 褒めてないよね?
〈セイジョにしたように、魔王にも心を与えてあげて? そうすれば道は……〉


 それっきり彼女は黙した。
 私は一人、夢だか分からない暗闇の中でアーラを呼び続けた。


 いやいや、中途半端に消えるなよ!!!!
 ちゃんと大事なとこ、伝えていってーー!!!!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...