死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

文字の大きさ
282 / 375
第13章・悪役闘争

◆ 21・ヘクターとフローレンス(後) ◆

しおりを挟む

 え、何? ……マジ怖いんだけど……。
 引くし、マジでキモい。どうしよう、妹がキモすぎる……っ!


 だが悲しいかな、放置するわけにはいかない。箱庭刑を解除するには、このダメな――闇属性強めな妹が聖女として覚醒する事こそが命題なのだ。
 グッと堪えて、妹にかける言葉を探した。
 だが、彼女は一歩早く驚くべき事を口にした。

「お姉様は……、『わたし』を変える事が『使命』ですものね?」

 流石に手から力が抜ける。
 振りほどいた彼女はクルリと半回転し、私と向き合う。


 私のリスタートの理由、……知ってたの?


 白い頬に一筋の血が垂れる様さえ優美だ。聖女と言われても誰でも納得するほどのおとぎ話のプリンセスはどこにもいない。
 今、私の目の前にいるのは白いだけの醜悪な魔女だ。

「あんた……、なんで?」
「ヘクターが教えてくれました」

 彼女の言葉に側に立つ男に目を向ける。
 嫌な予感が増していく。

「お姉様は『聖女』を覚醒させる為に、何度もやり直しているそうですね……。でも、それはとても難しい事だと思います。だって、『わたし』は変わる気がないんです」
「……何ですって?」
「お姉様が知らなくて、とても重要な事があるんです。とても残念なお報せになるかと思いますが、お心を強く持ってくださいね? お姉様」

 明らかな煽り文句に、それでも先を促す。

「それで、何を知らないって?」

 彼女は満を持して宣言した。

「聖女と魔王って、記憶があるんですよ!」


 記憶が……?
 え? リスタート時のって事?


「それに、心も魂も色と光で見えるんですよ!」


 聖女も、魔王も……記憶があって、心が読めるって事?!


 彼女の発言から鑑みるに、心を読めると言っても天使ほどの精度ではないのだろう。怒ってるか不審がっているかなどの、大きな感情は伝わる危険がある。


 つまり、今……フローをキモいと思った私の悪い感情とかは伝わったって事よね……。それに、エイベルにも……気付かれてる微妙な感情が多々あると……!
 これは最悪じゃないの?!


 彼女はフフッと笑って、額の血を手の平で拭った。

「この血、いろんな方に差し上げました。個人的に差し上げたのは……ヘクターだけですね」
「とても良い血だったよ!」


 聖女の血をヘクターが飲んだの!?


「お姉様、一つだけ針を進められますよ? 聖女として私『勇者』を決めました」
「待って待って待って!!!! ソレってダメよ、絶対反対よ!!」

 叫ぶ。
 答えなんか分かり切っている。
 この狂った妹は、きっと一番勇者にしてはならない男を選んだのだ。

「ヘクター・カービー、それが今代の勇者です」

 恍惚とした表情で、彼女は告げた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...