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第13章・悪役闘争
◆ 21・ヘクターとフローレンス(後) ◆
しおりを挟むえ、何? ……マジ怖いんだけど……。
引くし、マジでキモい。どうしよう、妹がキモすぎる……っ!
だが悲しいかな、放置するわけにはいかない。箱庭刑を解除するには、このダメな――闇属性強めな妹が聖女として覚醒する事こそが命題なのだ。
グッと堪えて、妹にかける言葉を探した。
だが、彼女は一歩早く驚くべき事を口にした。
「お姉様は……、『わたし』を変える事が『使命』ですものね?」
流石に手から力が抜ける。
振りほどいた彼女はクルリと半回転し、私と向き合う。
私のリスタートの理由、……知ってたの?
白い頬に一筋の血が垂れる様さえ優美だ。聖女と言われても誰でも納得するほどのおとぎ話のプリンセスはどこにもいない。
今、私の目の前にいるのは白いだけの醜悪な魔女だ。
「あんた……、なんで?」
「ヘクターが教えてくれました」
彼女の言葉に側に立つ男に目を向ける。
嫌な予感が増していく。
「お姉様は『聖女』を覚醒させる為に、何度もやり直しているそうですね……。でも、それはとても難しい事だと思います。だって、『わたし』は変わる気がないんです」
「……何ですって?」
「お姉様が知らなくて、とても重要な事があるんです。とても残念なお報せになるかと思いますが、お心を強く持ってくださいね? お姉様」
明らかな煽り文句に、それでも先を促す。
「それで、何を知らないって?」
彼女は満を持して宣言した。
「聖女と魔王って、記憶があるんですよ!」
記憶が……?
え? リスタート時のって事?
「それに、心も魂も色と光で見えるんですよ!」
聖女も、魔王も……記憶があって、心が読めるって事?!
彼女の発言から鑑みるに、心を読めると言っても天使ほどの精度ではないのだろう。怒ってるか不審がっているかなどの、大きな感情は伝わる危険がある。
つまり、今……フローをキモいと思った私の悪い感情とかは伝わったって事よね……。それに、エイベルにも……気付かれてる微妙な感情が多々あると……!
これは最悪じゃないの?!
彼女はフフッと笑って、額の血を手の平で拭った。
「この血、いろんな方に差し上げました。個人的に差し上げたのは……ヘクターだけですね」
「とても良い血だったよ!」
聖女の血をヘクターが飲んだの!?
「お姉様、一つだけ針を進められますよ? 聖女として私『勇者』を決めました」
「待って待って待って!!!! ソレってダメよ、絶対反対よ!!」
叫ぶ。
答えなんか分かり切っている。
この狂った妹は、きっと一番勇者にしてはならない男を選んだのだ。
「ヘクター・カービー、それが今代の勇者です」
恍惚とした表情で、彼女は告げた。
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