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第13章・悪役闘争
◆ 22・選ばれる理由 ◆
しおりを挟む「お姉さん! お姉さんにも、これがどういう意味か分かりますよね?」
愉快そうに笑うヘクター。
そんなに賢くない私にだって分かる。ヘクターは殺せないという事だ。
聖女が力を渡す相手は勇者で、その勇者を聖女が選ぶのだ。そして選んでしまった以上は――ヘクターはフローレンスに必要な存在になった。
箱庭刑的に言えば、聖女覚醒がメイン。
聖女覚醒は勇者との兼ね合いがあるわけだから、どう転んでも……この先、ヘクターを害せないっ。どうするのよっ?! 魔王からの命令に、アレックスの忠言。どっちもヘクターを害する事になってるのに……。
「あの……不勉強で、申し訳ないんだけど……、その、……勇者って後からチェンジとかできたり……?」
「できるわけないよね?」
「できないと思いますよ」
二人は真顔で答える。
「……まぁ、……ですよね……」
私も応じる。
分かっていた事だ。
世界のルールに逆らえるような力はない私――悪役だ。
「じゃあ、その……一応は理由を聞いても?」
「理由、ですか?」
可笑しな事を問われたように首を傾げるフローレンス。彼女は困ったようにヘクターを見つめる。頭からつま先までを見上げ見下ろし、周囲をグルリと回る。
「そう、ですね……何でしょう?」
いやいや、そんな……中途半端な雰囲気で?! 勇者って決まっちゃうの?!
「ないわ!!!! マジでないわ!!!! あんたね?! 流石にどうなのよっ、勇者よ?! 世界を救う英雄でしょ!? 最終的には魔王とか打倒しちゃう正義と信念の戦士よ?! そんな……そんっな、……ありなのっ!?」
「でも、お姉様。理由はないけれど、彼が勇者なんです」
「理由ないの?! マジでないの?!」
「はい、ないです」
横で爆笑している声がする。見る気にもならないが目に入ってくるのはヘクターだ。
「まぁー……そういうわけで、お姉さん! どうします?」
彼はひとしきり笑って、涙を拭いながらこちらに向き直る。
「どうって?」
「お姉さん、考えてみてください。現状、悪役の力は枝分かれしてますよね? その一人が勇者に選定されたとなれば、悪役の有資格者は実質二人じゃないですかぁ!」
「……そう、ね? 確かに……」
「つまり、悪役はお姉さんたち、お二人の殺し合いで決まるって事ですよ! 悪役会社に連名していようが、勇者選定されてる以上、もうこちらには関係ない世界の話というか!」
こらえ切れないと笑みがこぼれる彼に、顔を顰める。
なるほど、だから、あんなに簡単に乗ったのね……悪役会社に。
世界システム的にヘクターは守らなきゃいけなくなった……、でもどうして私にこんな話を?
「なんで私に話したの? それが本当なら、あんたたち二人と悪役の私とは敵対関係じゃないの」
二人は顔を見合わせ、笑い合う。
「お姉様、箱庭刑は私を聖女覚醒させる事が全てではありません。何よりも、お姉様を『悪役覚醒』させる意味を持ちます」
「お姉さん、失敗しすぎなんだよね!」
「お姉様は一度、悪役覚醒しています。でも……忘れてしまってますね?」
私に、記憶の欠落があるっていうの??
「バランスを壊したお姉様では、また失敗ですから。死んでやりなおしましょう?」
今度ばかりは、何故だかストンと理解できた。
フローレンスが私を殺そうとしている、今の事情を――。
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