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第14章・灰は撒かれた
◆ 15・罪人の味(前) ◆
しおりを挟む「これって……」
袋から転がり出たのは人間の頭で、それも一つではない。いくつあるのか数える勇気もない。
中でも、目を引くのはやはり知人の顔――モニークだ。見間違いだと思いたかったが、カッと見開いた目や容貌の怖さを差し引いても、彼女だ。
「……アレックス?」
問うように見るも、彼は病状を崩さない。むしろ穏やかな顔でフローレンスに視線をやる。
「君の要求は魔王のレベルアップ、という事でいいよね? 人間じゃない君の事だ、見ればわかるかな? これらは悪徳値の高い人間だよ」
悪徳値の高い……、私みたいな? いやいや、どうやって悪徳値とか調べたのよ?
「エイベル、カトラリーを用意できなくてごめんね。急いでたから」
「いい。平気。たべていい?」
「いいよ」
いやいやいや!? ココで、人間の生肉の、しかも知人の頭を?!
サッと目を逸らす。
フローレンスを退けるためには、食べてもらうしかないと分かっているが、正直きつい。何をおいても自分の命は大事で、その為なら多少の事には目を瞑れる自信はある。
でもコレって、多少のレベルじゃない……。それに、この状態になってるモニーク……つまり、それってアレックスが殺したって事で……、アレックスが……。
「チャーリー、今はあまり考えないで」
「……あんたが……やったの?」
エイベルが立てる音が、食事の合図だと分かる。
長いリスタート人生でも出くわしたことのない、とんでもない事が始まろうとしている。
「そうだよ」
「モニークは、好きじゃなかったけど……でも」
一応は旅の仲間だ。
「ボクは好悪で人を殺したりしないよ。もともと反組織の人員は調べられるところまでは調べていたんだ。歌姫モニークは看板のようなものだったから、調べは充分だったしね」
「あんた……ルーファに良心も汚されたの? いくらなんでも頭を……っ」
言葉が出てこない。彼がした事が私を救うと分かっている。責められる事ではない。
「うま……」
途切れた言葉の合間をぬって、エイベルの声。
歯を食いしばる。
「姉様、これを全て食べたとしても、今の魔王では私にはかないません。今生の流れは、姉様の失策です」
そんな……っ。
「先ほど仰ったように、魔王と協議戦争を行うメリットは理解しましたし、次回はそのように致しましょう」
淡々という妹。
「フローレンス・メイ、これは君に見せるためのショーだよ? ボクが用意した『食事』がこれだけと思わないで欲しいな」
「どういう意味でしょう?」
「あんた……まさかっ」
まだ死体があるのか、とアレックスを見れば彼は頷く。
「この町の人間は旅行者を生贄に捧げていたからね、罪のない市民というわけにはいかないよ。悪徳値は充分に積んできている。だから……」
彼はエイベルに手を差し出す。
「エイベル、あちらに『必要分』を用意しているから、今日中に処理してくれるかい?」
だが動いたのはフローレンスだ。
「では、足りているか確認にいきます」
「いいよ。こちらだ」
妹を伴って出ていくアレックスが、戸に遮られて見えなくなり――私はその場に座り込んだ。
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