死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

文字の大きさ
313 / 375
第14章・灰は撒かれた

◆ 21・断罪者(後) ◆

しおりを挟む

 静まり返った空間で、畳み掛けるように続ける。

 「そもそもわたくしに出席の意思はありませんでした。この場にいるのはそこの者による暴力によるもの!」

 女を指さす。
 真っ当な集団の中にも狂った輩はいる。どこまでが上の指示かは分からないが、糾弾される彼女を立場上は放置するだろう。

「これが……国と秩序を守る長老会の意向によるもの、とは思いたくありませんが……」

 長老席の一人が手を挙げ、私は口を閉ざした。

「それは本当か?」

 女が進み出て、跪く。

「はい、相違ありません」


 み、とめ……るの早い!


「では裁きの覚悟も出来ていような。お前の行為は長老会の信念と品位を汚した」
「はい、償います」

 彼女は頭を差し出すように、伸ばす。
 脇から抜き身の大剣を手にした男が現れる。剣に目が吸い付くも、男の方も異様な風体だ。
 白い被り物が背まで掛かり、半裸の上半身、白いスカートのようなズボンにサンダル。
 もちろん仮面だ。
 彼は彼女の真横に立つ。


 え、まさか……!


 振り下ろされる刃。
 やけに大きく――その音は耳に届いた。

「罪は贖われた」

 気弱そうな長老の声。
 目の前で起きた現象に、頭がクラクラする。

「シャーロット・グレイス・ヨークに異存がなければ、屍は土に返そう」


 え……、私が決めるの??


「異存、あったらどうなるので……?」

 不安と恐怖から問う。

「いくつかの選択肢がある。うち一番選ばれるのは、鳥葬だ」


 勘弁してよ……っ。
 これ、今の流れ! 完全に裁判スタートな流れじゃない?! 私が言った事で裁判が行われ、刑が執行されてるわけだから、私は事実上この会を受け入れたようなものじゃないっ。


 その上、罪の判定から刑の執行まで何もかもが早すぎる。


 どうする?! どう答えても裁判参戦状態っ。
 せめて……恨みを深めないように……。


 屍を見ないように長老席を一心に見つめる。

「異存はありません。どうぞ、遺族の方の良いようになさってください」
「寛大なる対応、同胞として礼を言う」

 彼らの合図で刃をふるった男や同じような恰好の男たちが場の『片付け』を始めた。しばし、ざわめきが観客席の方から漏れる。
 暗いものではない。明るい声だ。
 まるで観劇の休憩タイムのような――。
 ぼうっと虚ろに床を見る。赤いものが水で洗い流されていく様を見ていると、何が正しくて間違っているのかも分からなくなってきた。


 今回の……色々は、やっぱりミスしてるって事なの? フローの言う通りだって言うの?


 こんな時に昔話なら勇者たちが助けにくるのだろう。
 だが、私は悪役なのだ。救いになど誰も来ない。味方は堕天使と腹ペコ栄養失調魔王。

「……たすけ……っ」

 ポツリと漏れかけた言葉を飲み込む。


 いいえ、違うわ……。
 私が助けを求めるのは可笑しい、助けに来るべきなのだ、アイツが!


「魔王の癖に……何してるの……っ」

 湧き上がる怒り。
 額も目も体も熱い。
 仕方ない、全てあの弟が私の護衛一つこなせていない事が発端だ。

「【 エ・イ・ベ・ル 】」


 さっさと来なさいっ!!!!


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

勇者の後物語

波動砲
ファンタジー
表面上とはいえこの世界は平和になった。至って平穏無事で退屈な日常を人々は送れるようになった。そんな平和が来たゆえに、一つの疑問が持ち上がってしまった。 今の世界に『勇者』は必要か否か 勇者とは 曰く。魔王を打ち倒す者 曰く。人類の希望 曰く。救世主 曰く。曰く。曰く しかし、悲しいかな。魔王が死に世界が平和になって数十年。勇者に対する敬意も感謝の気持ちも人々にはなくなり始めていた。平和な世界に勇者はもはや不必要な存在となっていた。この世界に魔王はいない。故にこの世界に絶望はなく。だから希望も必要なく。救世主も必要とされないのだ そして勇者は一通の書き置きと共に忽然と姿を消した 『旅に出ます。探さないでください by勇者』 これは役目を終えた勇者のお話。 ※この作品は筆者が学生の頃に書いた作品です。折角なので投稿しました

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
ファンタジー
公爵令嬢として生まれながら、子ども時代からメイドや周囲の陰謀で、次々と濡れ衣を着せられ、「悪女」扱いされてきたミリアム。 第3王子との婚約を聖女に奪われ、聖女への嫌がらせの冤罪で国外追放された後、平民として生き延びる中で、何度も5年前へのロールバック(逆行)を繰り返すことに。 生計をたてる為に、追放後の平民生活で極めた針仕事が、ロールバックが繰り返されることで、針仕事の能力だけは引き継がれ、天才的な実力を手に入れる。 その時女神「アテナ」の加護を得て、2つの力を手にすることに。 「加護縫い」 (縫った布に強力な祝福を込められる) 「嘘のほころびを見抜く力」 (相手の嘘を布のほころびとして視覚的に捉え、引き抜く、または繕うことで、真実を暴いたり修正したりする) を手にしたミリアムは、5歳の幼女時代まで遡り、2つの力で悪評をぬりかえ、仲違いしていた家族も、加護の力を与えることで協力な味方へと変貌。 さらに、女神から可愛いしもべ「アリアドネ」を授かり、元婚約者と聖女にザマァを狙う中、加護縫いの能力が最も高い人間を王太子妃に迎える決まりのある大国、ルーパート王国の王太子が近付いて来て……?

蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。 魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。 人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。 そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。 物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...