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第14章・灰は撒かれた
◆ 30・死について(後) ◆
しおりを挟む「チャーリー……、ボクは君の傲慢な姿勢が好きだ」
は……?
顔を上げる。
今の流れでどうしてそんな告白が始まったのか分からない。私は自害の為の剣を求めたはずだ。あまつさえ、彼は剣を鞘にしまっているし、こちらも見ない。
「君の傲慢で自分勝手な振る舞いを好ましいと思ってきたんだ」
「……えー……っと、聞こえなかった? 剣を貸せって言ったのよ、私」
「うん」
「うん?! うんって、いやいや分かってないよね??」
「分かってるよ」
だが、彼は落ち着いた声で再度言う。
「ボクは君の自分勝手さが好きだ」
「……変わってるわね?」
他に言いようもない。
「そうかもね。でも、ボクは小さい頃から規範の中で生きてたから……君の自由を通り越した我儘さや、矜持を越えた傲慢で不敵な色々が」
「けなしてるよね????」
「とても好ましかった」
彼は私のツッコミも無視する。
「君はボクが大らかで懐が広いと言っていたけど、そんな事はないよ。ボクにはできなかった事を平気でしてしまえる君を通して、追体験をしているようなものだったと思う。とても清々しかったしね?」
やっぱり褒めてると思えないんだけど……。
「そんな君が、こうして何かに縛られている様は辛いよ。自由を奪われて欲しくないし、自分の好きなように生きてほしいとも思う」
他のタイミングなら、さぞかしありがたい言葉だったろう。
だが、私の心臓にナイフを突き立てたも同然の行為をしたのは彼だ。フローレンスを殺したのだ。どうやってここから自由に生きろと言うのかとなじりたい。
それをしないのは彼の所為だと言い切れないからだ。
私を救いたいと思ってくれてるのは、分かってる……っ。でも、この状態じゃ……、救えてない、……救えないのよ、アレックス……。
言葉にはしない。恐らく私の中に彼に対する情があるからだ。
唇をかみしめ、ただ言葉を飲み込んだ。自分の招いた悪行から今があるのだとするなら、たった一度の彼のミスを責めたくはなかった。
「結論から言うと、君が死を選ぶ必要はないよ。聖女は人間の手では死なない」
「は?」
「あ、ボクは確かにルーファの、悪魔の身体を借りてるけど一応は人間だからね? 人間の手には変わりないんだ」
「いやいや、そうじゃなくて……首、今あんたが拾ったじゃないの……」
「そうだね。でも死んでないよ」
アレックス……狂ったの??
「本当だよ、今は分からないかもしれないけど、今までのボクを信じてほしい」
「信じるって言ったって……」
首が落ちたのだ。
どんな生物だろうと、首が完全に切り離された状態で生きてはいられないだろう。それでも信じたい気持ちはある。
信じられない気持ちと、最も信頼してきたアレックスの言葉の間で揺れる。
彼の手が私の手を握る。
いつの間にか目線を合わせているアレックス。
「君が想ってくれるように、ボクだって君を想ってるから……手段は選ばないし、ミスも犯さない」
過去の彼の姿が脳裏をかすめる。
私は頷かず、ただ彼の手を強く握り返した。
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