死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第15章・共謀する聖人

◆ 1・死者との交信(前) ◆

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「お嬢様、本日のご予定をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 朝食の席についた私に、メイドの一人が問いかける。
 いつぞやの気の弱そうでいながら、私を陥れた女だ。

 二日前、カリム邸に戻った私たちを出迎えたのは怯える使用人。
 私を長老会とやらに差し出したのだから当然だ。大いに怯えればいいとさえ思ったが、アレックスが止めた。彼が言うには彼女たちにはまだしてほしい事があるのだと言う。
 仕方なく彼の進言に従い、陥れられた事に気づいていないフリをした。
 それもどれほどの効果があったか知れないが――旅先での日常は戻っている。

 整えられたベッドに、用意される食事の数々。
 普通に饗されている。
 ここは他人の館だというのに、今や私の家のようだ。

「せいじょせいじょせーいーじょーーっ、せいじょはしんだ、しんだしんだしんだー。ちまみれせいじょとちぞめのだいち、ちに……」

 傍では不快な歌を歌い続ける堕天使フローラ。
 聖女の首を落として以来、この始末だ。
 壊れた楽器のようにずっと歌い続けている。右から左に聞き流す事でやり過ごして入るが、最初は気が狂いそうだった。


 人間、何事も慣れるものね。


「今日は町の様子を見に行くわ」

 メイドは「かしこまりました」と言い、出かける準備をしてくれると付け足し部屋を出て行った。

「おはよう、チャーリー」

 アレックスが朝食の場に現れる。
 彼はメイドにいくつかの言伝をし、席につく。

 同時に止む歌。
 どういうわけか、フローラはいつもアレックスの姿を見るとどこかに消えるようになっている。
 フローの首を落として、埋めたアレックス。 
 ただ埋めたんじゃない。彼は彼女の頭と胴体を別々の場所に埋め、その上に重石にもならなそうな草を植えた。私だって不気味さに慄いたし、アレックスへの不信が少しも芽生えなかったわけじゃない。
 もしかしたら堕天使なだけに、彼女には彼の中の暴力性だか狂気だかが見えたのかもしれない。恐れをなしたわけでもないだろうが、聞いても答えてはくれなかった。

「アレックス、……城は見つかった?」

 表面上はお互い変わらない。私もいつも通りの口調でやるべき事の最上位、魔王の城について問う。
 彼は「残念ながら」と、残念そうな様子など微塵も見せずに答えた。


 本当はもっと突っ込んだ話をするべきなんだろうけど……、流石に勇気がでないわね、私も。


「でも見つける『あて』はあるんだ」
「へぇ?」
「啓教会こと聖女教は、こちらでは流行ってない。こちらにはモンスターをありがたがる風習があるからね。それらを取りまとめているのが長老会という議会になる」


 まさか、また長老会と関わる気だろうか?


「ボクの調べでは、王ですらもこの長老会には命令できないようだよ」

 嫌な予感的中だ。
 次の言葉など分かり切っている。

「そこで、長老会のメンバーを数人攫ってきたよ」

 食事をしようと、カトラリーを持った手が止まる。


 今なんと言ったこの男……?


「だから、すぐに見つかるよ」
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