326 / 375
第15章・共謀する聖人
◆ 3・死者と交信(後) ◆
しおりを挟む
「うん。チャーリーが生き抜く為に横たわる障害は、教団でも世間の評判でもないんだ。君の邪魔になるものは、せその『ヒト』ではない『モノ』なんだよ」
その言葉自体に衝撃はない。
私の最大の敵など、最初から――こんな境遇に追い込んでくれたおっさん天使たちなのだ。
「一つ分からないわね。私のリスタート人生の中で、フローが死んだ事があったわよ? 記憶があるって言うわりには、今までの人生で死亡回避をしようとした素振りも感じられないし……、不思議なのよね」
彼女が成功ルートにこだわったのは今回が初めてだ。
今までのルートでの彼女はあくまで脇役に徹していた。
「……君の人生をボクが外から見た感想だけど、恐らく天使や君が思っている成功ルートと、君の妹が考えている成功ルートは違うんだよ」
「というと?」
「たぶん、彼女は聖女として世界を救う気はないんじゃないかな」
それって、……永遠にリスタート状態にならない?
「ボクが見ても、今回のルートはそう悪いものじゃないよ。魔王の城に行きつこうとしているし、こまごまとした真相にも辿り着いてるからね」
「そ、そうよね?」
私もそこは気になっていた。
フローレンスは失敗だという今のルートは今までで一番進んだルートなのだ。もちろん、私の記憶がない頃の軸ではもっと進んでいた可能性もあった。
だが、アレックスの言葉から考えれば今回のルートも成功と考えて良さそうだ。
「ちなみに、フローが違うゴールを狙っているとして、私はどうすればいいの? フローを引き込めって事? 私たちの思い描く成功ルートこそが正解なんだって」
「それは難しいだろうね。チャーリーも気付いてると思うけど、あの子に聖女的感性はないよ?」
「まぁ……」
ルーファをして『闇聖女』と言わしめるのだから納得の言葉だ。
「すでに改竄されすぎたんだ、君の父上に。あそこまで感性がズレてしまってから戻すのは無理だ。ボクは、聖女を挿げ替える方が早いと思ってるよ」
「そ、そんな事できるの?!」
彼は頷く。
「するよ」
明言?!
「必要なのは器だけでいい。魔王の中にいらない成分が混じってるように、外部の……本来はいらない価値観をもったモノを入れ込むんだ」
確かにエイベルの中には別の魂が入っている。
「つまり、同じように外部の存在を召喚して……聖女に入れ込むって事?」
天使でも神でもない私たちにそんな事……。
「どちらも必要なのは『形』であって中身じゃないんだ。……異界から、あぶれた魂に協力してもらうつもりだよ」
エイベルが異世界の死人だった事を考えれば『あぶれた』の意味もおのずと行きつく。
私が思っているよりずっとアレックスは、過去を研究してきたのだろう。
「チャーリー、そういうわけで聖女の障害問題を減らして行くつもりだけど、肝心のエイベルの方は難しい。戦力的にも、立場の上でも彼の協力は君にとって必要になる。本当に……彼が人間の魂を持っていた事は幸いだよ」
「どうして?」
彼はグラスを手に取り掲げる。
「人間には、付け入る隙が生まれるからね」
その言葉自体に衝撃はない。
私の最大の敵など、最初から――こんな境遇に追い込んでくれたおっさん天使たちなのだ。
「一つ分からないわね。私のリスタート人生の中で、フローが死んだ事があったわよ? 記憶があるって言うわりには、今までの人生で死亡回避をしようとした素振りも感じられないし……、不思議なのよね」
彼女が成功ルートにこだわったのは今回が初めてだ。
今までのルートでの彼女はあくまで脇役に徹していた。
「……君の人生をボクが外から見た感想だけど、恐らく天使や君が思っている成功ルートと、君の妹が考えている成功ルートは違うんだよ」
「というと?」
「たぶん、彼女は聖女として世界を救う気はないんじゃないかな」
それって、……永遠にリスタート状態にならない?
「ボクが見ても、今回のルートはそう悪いものじゃないよ。魔王の城に行きつこうとしているし、こまごまとした真相にも辿り着いてるからね」
「そ、そうよね?」
私もそこは気になっていた。
フローレンスは失敗だという今のルートは今までで一番進んだルートなのだ。もちろん、私の記憶がない頃の軸ではもっと進んでいた可能性もあった。
だが、アレックスの言葉から考えれば今回のルートも成功と考えて良さそうだ。
「ちなみに、フローが違うゴールを狙っているとして、私はどうすればいいの? フローを引き込めって事? 私たちの思い描く成功ルートこそが正解なんだって」
「それは難しいだろうね。チャーリーも気付いてると思うけど、あの子に聖女的感性はないよ?」
「まぁ……」
ルーファをして『闇聖女』と言わしめるのだから納得の言葉だ。
「すでに改竄されすぎたんだ、君の父上に。あそこまで感性がズレてしまってから戻すのは無理だ。ボクは、聖女を挿げ替える方が早いと思ってるよ」
「そ、そんな事できるの?!」
彼は頷く。
「するよ」
明言?!
「必要なのは器だけでいい。魔王の中にいらない成分が混じってるように、外部の……本来はいらない価値観をもったモノを入れ込むんだ」
確かにエイベルの中には別の魂が入っている。
「つまり、同じように外部の存在を召喚して……聖女に入れ込むって事?」
天使でも神でもない私たちにそんな事……。
「どちらも必要なのは『形』であって中身じゃないんだ。……異界から、あぶれた魂に協力してもらうつもりだよ」
エイベルが異世界の死人だった事を考えれば『あぶれた』の意味もおのずと行きつく。
私が思っているよりずっとアレックスは、過去を研究してきたのだろう。
「チャーリー、そういうわけで聖女の障害問題を減らして行くつもりだけど、肝心のエイベルの方は難しい。戦力的にも、立場の上でも彼の協力は君にとって必要になる。本当に……彼が人間の魂を持っていた事は幸いだよ」
「どうして?」
彼はグラスを手に取り掲げる。
「人間には、付け入る隙が生まれるからね」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです
志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑!
10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。
もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。
(頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる