死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第15章・共謀する聖人

◆ 4・料理と親交(前) ◆

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「エイベル、姉様が食事を作ってあげたわよ!」

 その日の昼、私は弟の為に食事を用意し、部屋に殴り込み――もといお邪魔した。
 メイドたちが用意しようとする豪華な食事を断り、食材から手にいれる事で『愛』と『情』を示そうと考えたためだ。
 食事第一の弟の心を篭絡するならば、やはり食事だろう。
 銀の盆に載った皿を差し出す――食材はムカデだ。たっぷりの塩と油でソテーをしたから、きっとお好みに仕上がっているはずだ。
 なんといっても、蜥蜴や蠍といった足がたくさんあるモンスターを食していたエイベルの事だ。見た目は少しばかり悪いが、食事など見た目よりも味だろう。
 だが、エイベルは眉をピクリと動かして皿を一瞥しただけだ。

「この姉が、手頭から食材をかき集めて火を起こして焼いたのよ! もっと喜びを表してよ!」

 弟は皿を再度見て、一言。

「うめなよ」
「……うめ……っ」
「しんだものはうめるべき」
「いやいやいや! これは料理で!」
「じゃー、オネーサマ、先にどーぞ」
「……ぇぇ……、いぁ……」

 エイベルは口元をゆがめる。

「りょーり、なめてんの?」


 まさか……、このエイベルに繊細な味の感性があったなんて……っ。
 今までモンスターを文句も言わずバクバク食べてたじゃないの! ナマとかナマめのとか……!


「あのさ、オレ食べた、いろいろ。あれ、きんきゅーで食べた。おいしーほうがいいに決まってる」

 ぐうの音もでない。
 せっかく年頃の淑女が草むらをかき分け、午前をムカデなどの虫取りに費やしたというのに、だ。部屋の虫かご内にいる虫は全部外に放すしかない。

「で? オレになにしてほしい?」
「え?」
「どーせ、そーゆーことだろ」

 しかも対価としての料理と読み取られている。

「いや……な、仲良くなりたくて? だから、別に何をってわけじゃ……」
「なかよく? なんのために?」

 弟は随分と冷たい態度だ。


 これと仲良くなるのは至難の技……っ、アレックス無茶言うわ!


「……埋めて、きます……」

 せっかく作ったが、ここでごねて機嫌を損ね嫌われても話にならない。私は素直に皿をさげる事にした。彼の部屋を後にして、メイドに食事を用意するよう指示も出す。


 ……つまり、普通の虫に興味はないって事ね? 魔王の食事はモンスターって事で、……モンスターを狩ってこないとって事か……。


「チャーリーチャーリーチャーリー」

 堕天使が耳元で呼ぶ。

「どうして虫? まおーのたべものなら、にんげんをささげましょーよ!」
「……火を通したいから却下」

 すげなく適当に答える私。
 だがフローラは成程と呟き、良い事を思いついたとばかりに手を打つ。

「そーだ! たましいをヤくなら、下のまおーにたのも! チャーリーはケイヤクしてるから、すぐしてくれるよっ」


 あぁ……私って冗談も言えないのね……?

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