死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第15章・共謀する聖人

◆ 11・古城というより廃墟(扉) ◆

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 その空間は不思議な場所だった。
 ツルリとした材質の壁と床は炎に照らされ、黒曜石のように煌めいている。入ってきた場所は半円の穴になっていた。
 先ほどまでのカビ臭さもなければ、温度も丁度いい。

「……注意して行こう」

 アレックスに促され、頷く。
 一歩を踏み出せば、地震のように床が揺れる。よろめく私を支える彼と一緒に跪く。
 床がスライドしている。

「な、……によ、これ……!」

 こんな魔法は知らない。
 床がひとりでに前へ前へと進むのだ。
 音もない。よく見れば、私たちは薄い板のような上にいるようだ。

「失われた文明の一端、かな」

 アレックスが呟く。


 失われた文明?


「これ、古い魔法ってこと?」
「……ルーファの記憶でも似たものを見たことがあるんだけど、彼は古代に流行した技術だって言ってたよ」
「……へぇ……、で、コレどうやって降りれば?」

 周囲の暗い空間を見回す。
 変わりばえのない景色だ。ゆっくりと立ち上がるも、止まる様子はないし揺れも少ないためバランスは取りやすかった。

「いや、このまま行こう」
「えぇ……?」
「どこまで続いてるのか気になるし、逃亡ルートを探す上でもこの道行きの先が気になるよ」


 ごもっともだけど……変なモンスターとか出てきたらどうするのよ。というか、永遠に止まらなくて餓死する未来だってあり得るのでは?


 不安が心に影を落とす。

「大丈夫だよ、チャーリー」

 やけに自信たっぷりアレックスが言う。
 私は根拠を求めず、ただ景色を眺めた。


◆◇◆


「……リー……ャ-リー……、チャーリーっ」

 揺さぶられて、目を覚ます。
 やけに明るい、白い空間だ。天井は高く、ドーム型の空間にツルリとした白い壁と床。私の下には移動していた床がある。それだけが黒い。
 天井付近の中心に丸い球が浮かんでいる。かなり大きい。


 止まったのね……。


 いつの間にか寝入っていたようだ。変わらぬ景色に警戒が馬鹿らしくなり、座り込み、やがて寝転がり――現在に至る。
 アレックスは興味深そうに球の真下へと歩いていく。

「ちょっと……っ、ま、待ちなさいよ! 怪しい空間で怪しい物に近づくなんて、あんたの危機感どうなってるのよ!」

 慌てて駆け寄り、腕を掴む。
 彼は驚いたように私に見て、首を傾げる。

「でも……気にならない?」
「気になるわ、もちろん気になるわよ? でもね、そうやって近づけてアレを落としてくる気かもしれないわ! 危険よっ、怪しいわ」
「そんな浅い仕掛けなんてしてないと思うけど……、こんなにすごい部屋なんだし」
「甘いわ! 私がどれだけ死んで来たと思ってるの! 油断は禁物よっ」
「えぇ……寝てた君が言うの……」

 苦笑いをしながらも彼はそれ以上、近づかなかった。

「この部屋は何だろうね。何のために作られたんだろう? チャーリーを鍵としてここへの扉、道が開いたと考えられるわけだけど、そうなるとココは悪役にとって重要な部屋っていうことになるよね?」
「まさかココが悪役殺す部屋とかなんじゃ……」
「いや、それはないよ。ルーファの記憶で見た限り、人間の観衆がいる中での殺害だったからね。ここじゃない」


 うわぁ……。ありがたくない知識ね。


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