死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第15章・共謀する聖人

◆ 12・流れる光(前) ◆

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 今までの悪役は、どんな最期だった?


 その言葉が喉元まで出かかる。
 聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちがせめぎ合う。

「……チャーリー、あの中心、穴があいてない?」

 彼が指さす先には宙に浮いた球があり、確かに小さな黒点が見える。
 距離があるせいで、それは穴かどうかも怪しい。

「何かしら?」
「もうちょっと近寄ってみないと何とも」

 彼は結局、歩みを進める。「気を付けてよ?」と忠告し、私も彼と共に球の真下まで近寄る。

「うん……どうみても穴ね。なんか……向こう側の天井見えるし?」
「そうだね。チャーリー何か感じる?」

 よく見ようと一歩を踏み出せば、球がくるくると回った。


 これ、まずいんじゃ……!


 回る球はやがて白光し、穴の部分が下へと伸び、形を変えていく。
 球はグニグニと潰れ膨れ、漏斗のような形へと変化した。驚く私をよそに、球だったものの先端が私に向かって伸びる。
 それは予想よりもずっと早く鋭い。
 まっすぐ顔に近づいてくる先端を、なすすべなくただ茫然と見つめた。


 まずぃ……!


「……チャーリー!!!!」

 腕を引っ掴まれて身体が降り飛ばされる。
 床に転がった私の横に、音を立ててソレは刺さった。

「……チャーリー……、かった」

 引っ張られた腕が痛い。
 かなり強い力で引っ張られたのだと気づき、床に刺さった漏斗の先端を見つめる。間一髪だったようだ。それの先端は床にしっかりと刺さっている。

「あ……りがと……っ」

 礼を言ってから気付く。
 私の腕を掴む彼の手が震えていた。

「アレックス?」
「……あ、焦ったよ……っ、流石に……」


 カエルでも焦るんだ……。


 こういう焦り方は初めて見る気がする。今までも私の我儘に取り乱した事はあった。
 だがそれらとは違う。彼も死の近さに驚いたのかもしれない。

「嫌になるわよね……、ホント、何でこんなに死が近いのやら」

 苦笑すれば、彼は視線を落とした。

「そうだね。……君が、死にかけたり死んだ姿はルーファの記憶で見てきたよ。それでも、こんなに間近で……今生きている君が死のギリギリに置かれてる姿を見ると、やっぱりね」
「……私の死なんて見慣れたでしょ……」
「見慣れはしないけど、いっぱい死んでたね」

 彼は笑った。
 軽く言われたが、嫌な気分はない。白光する漏斗は時折、ブルリと震える。

「……これ、何だと思う?」
「チャーリーを攻撃したわけじゃないみたいだね? 何かを、流し込んでるね」


 液体っぽいのよね、音が……。


 水が流れるような音がしている。案外本物の水かもしれない。



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