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第15章・共謀する聖人
◆ 17・至る(前) ◆
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「ですが、マスター。ここはチジョウではありません」
確かに、地下だけど……。
「ここは『……』へとイタるカイロウ」
「待って待って、聞こえないんですけど? 何になる道って?」
犬は沈黙し、そのまま私を乗せた床は廊下を滑っていく。
◆◇◆
唐突に床が停止する。
何もない白い空間を見回す。壁の境目も床の境目も分からない。唯一、私の乗っている床だけが浮いているように見える。
これでも途中までは普通の廊下だった。
もはや全てを受け入れる心地だから、黙って待ちもした。
だが――。
これ、逃げ道として使える気がしない……。
金色の光がポツリと生まれる。
その光はスルリと半円を描き、真ん中にも線を一つ。
「扉、よね?」
「マスター、あなたはこのニンゲンをツれてニュウシツしますか?」
「え?」
隣のアレックスを見る。
まず彼を人間と断じたことに驚いたのだ。中身は人間ことカエルの姿な王子だが、外見は悪魔ルーファのもので、能力もルーファ由来のものだというのに、だ。
「連れて入るわ、当然でしょ」
犬は一つ頷き、顎をしゃくる。
「では、どうぞ。おフタリでトビラを」
アレックスと顔を見合わせ、扉へと手を伸ばす。
隣に並んだ彼は左手を、私は右手を――ひんやりとした扉に触れさせた。
瞬間、扉が消え――。
「さっっっっ……むっ!!!!」
冷気が私たちを包み込む。
吐く息は白く、開いた口すらも凍りそうだ。慌てて目を閉じ両手で己を抱きしめるも、歯がカチカチと鳴った。
「な、……っん、なの! ……こ、れっ……!!」
必死に声を出す。
犬は平然と、一言。
「おススみを」
アレックスが私の手を掴み、先へと引っ張った。
踏み出す一歩。
同時に寒さは遠のき、まるで春の陽気となった。
「ほんと、何よ……」
目を開けば、緑豊かな森。小鳥の囀りからも生物が住んでいるのだと知れる。いつか見たオリガの空間のような美しい風景だ。
振り返れば、犬が向こう側で頭を垂れていた。
「おめでとうございます、マスター」
犬の声が小さく聞こえる。
何??
私より頭のいい人物の感想を聞きたくて、アレックスの方を見る。
「え?」
見知らぬ男が立っている。だらりと長い金髪が顔を隠している見るからに怪しい男だ。
混乱するも、私の手を掴んでいるのだと理解した。瞬間、慌てて手を振りほどき距離を取る。
「誰……!?」
警戒しながら声を出す。
犬がこちら側に来ない以上、こちらの部屋にはこちらの案内人がいるのかもしれない。それなら、この相手がそうである可能性は極めて高い。
だが、アレックスをどこにやったのかは聞かねばならないし、事と次第によっては敵だ。
睨みつける私に、相手は驚いたように私と振りほどかれた己の手を見つめ、問いかける。
「チャーリー?」
アレックスの声だ。
確かに、地下だけど……。
「ここは『……』へとイタるカイロウ」
「待って待って、聞こえないんですけど? 何になる道って?」
犬は沈黙し、そのまま私を乗せた床は廊下を滑っていく。
◆◇◆
唐突に床が停止する。
何もない白い空間を見回す。壁の境目も床の境目も分からない。唯一、私の乗っている床だけが浮いているように見える。
これでも途中までは普通の廊下だった。
もはや全てを受け入れる心地だから、黙って待ちもした。
だが――。
これ、逃げ道として使える気がしない……。
金色の光がポツリと生まれる。
その光はスルリと半円を描き、真ん中にも線を一つ。
「扉、よね?」
「マスター、あなたはこのニンゲンをツれてニュウシツしますか?」
「え?」
隣のアレックスを見る。
まず彼を人間と断じたことに驚いたのだ。中身は人間ことカエルの姿な王子だが、外見は悪魔ルーファのもので、能力もルーファ由来のものだというのに、だ。
「連れて入るわ、当然でしょ」
犬は一つ頷き、顎をしゃくる。
「では、どうぞ。おフタリでトビラを」
アレックスと顔を見合わせ、扉へと手を伸ばす。
隣に並んだ彼は左手を、私は右手を――ひんやりとした扉に触れさせた。
瞬間、扉が消え――。
「さっっっっ……むっ!!!!」
冷気が私たちを包み込む。
吐く息は白く、開いた口すらも凍りそうだ。慌てて目を閉じ両手で己を抱きしめるも、歯がカチカチと鳴った。
「な、……っん、なの! ……こ、れっ……!!」
必死に声を出す。
犬は平然と、一言。
「おススみを」
アレックスが私の手を掴み、先へと引っ張った。
踏み出す一歩。
同時に寒さは遠のき、まるで春の陽気となった。
「ほんと、何よ……」
目を開けば、緑豊かな森。小鳥の囀りからも生物が住んでいるのだと知れる。いつか見たオリガの空間のような美しい風景だ。
振り返れば、犬が向こう側で頭を垂れていた。
「おめでとうございます、マスター」
犬の声が小さく聞こえる。
何??
私より頭のいい人物の感想を聞きたくて、アレックスの方を見る。
「え?」
見知らぬ男が立っている。だらりと長い金髪が顔を隠している見るからに怪しい男だ。
混乱するも、私の手を掴んでいるのだと理解した。瞬間、慌てて手を振りほどき距離を取る。
「誰……!?」
警戒しながら声を出す。
犬がこちら側に来ない以上、こちらの部屋にはこちらの案内人がいるのかもしれない。それなら、この相手がそうである可能性は極めて高い。
だが、アレックスをどこにやったのかは聞かねばならないし、事と次第によっては敵だ。
睨みつける私に、相手は驚いたように私と振りほどかれた己の手を見つめ、問いかける。
「チャーリー?」
アレックスの声だ。
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