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第15章・共謀する聖人
◆ 19・至る(後) ◆
しおりを挟む私の葛藤を返して頂きたい。
彼は頓着なく、前髪を含めた全てを後ろで括らせた。
金髪碧眼男は、王子にふさわしいながらも第二王子と同様で、特殊な美形でもない。美形極地のようなルーファを見慣れた私にとってみれば、普通の域を出ない。性格がにじみ出たような柔和な顔も、私とそう変わらない身長も、一時間後には忘れてしまいそうなほど特徴が薄い。
カエルの方がよほどインパクトも個性もある。
「ルーファの身体がリハビリになったね。カエルから急にこの身体になったらパニックを起こしたよ」
「でしょうねぇ。でも何で急に呪いが解けたの?」
「うん。多分、ここにあるのは魂だけなんだよ」
思い出すのは一段上の世界とやらに行った時のことだ。
「つまり……ここは天使たちの領域ってこと?」
「それは分からないけど、地上とは別なんだと思う。オリガの呪いはボクの肉にかけたもの。魂だけの姿となったから、ボクも本来の姿になってるんじゃないかな」
「あんたって、……動じないわね」
彼は一瞬ピタリと止まり、何事もなかったように笑った。
「ボクも、精神年齢は十代じゃなくなったしね」
納得半分で、周囲を見回す。
静かで美しい森は見ればみるほど、オリガの空間を思い出させる。
「ここ、オリガがいたりするのかな?」
「……彼女はいない気がするよ。ここは魂の回廊を抜けた先で、言い方を変えれば神や天使の領域。彼女と天使たちの関係を考えるとね」
「なるほど」
先に進むことにして、歩き出す。
数歩と進まないうちに、正面から何かが飛んでくるのが見えた。
「あ……!」
段々と近づいてくるにしたがい、姿がはっきりと見える。鳥――金色だ。
「モリガミ様よね!?」
アレックスを振り返れば、彼の方も驚いたように目を見開く。
「いや、あれは……色は確かに。だけど……形が……」
彼の言う言葉を理解しようと視線を戻す。
鳥はまっすぐに降り立つ。シャープな線に鋭い瞳、よくよく見れば鳩ではなく烏だ。
「イタりしモノ、タンジョウをカンキヘイフクす!」
鳥の声は鋭く、高く、鼓膜を破りそうなほどの大音響だ。
なになになにっ??
「コンキ、イタりしモノ、フタヒト!」
同時にカランカランと上から鐘がなる。まるで時計の鐘のようだ。
「イタりしモノ、ナノリあれ!」
ナノリ? 名乗れって??
だがこちらが悩んでいるうちに、空から私とアレックスの名が降った。
文字通り、金色の文字が降っているのだ。雪のように地面に積もっていくソレに重みはなく、軽やかな羽のように積もっていく。
とんでもない事が始まりそうな予感だけが強まっていく。
「なるほど、これは悪役の立ち位置……」
アレックスが呟く。
何か分かったなら説明してもらいたいものだ。
「タマシイのハてにイタりしモノ、コンキのカミよ! テンシショウライせよ!」
き、聞き捨てならないことがいっぱいあった気が……。
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