死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

文字の大きさ
352 / 375
第15章・共謀する聖人

◆ 29・三人のシャーロット(後) ◆

しおりを挟む

◆◇◆


「うん、分からないわね」

 三人の『今まで』を出し合い、照し合わせての第一声だ。
 何も分からない。
 なぜ、それで正解できたのかも分からなければ、どうしてそんな道を選んだと自分のことながら互いに問い合った。
 もちろん、収穫がゼロなわけではない。どうすれば成功かは分からないが、失敗の流れだけはつかめた気がする。

「分かったことは、ちょーっとでもフローレンスを殺しちゃダメなのね」
「そうよ、灰。こっちの進行具合に合わせてフローレンスを害したら失敗になると思っていいわね」

 黒が重々しく頷く。二人は私のことを『灰』と呼ぶ。せめてグレイとかにしていただきたいが、とりあえず三人に共通するのは、時間欲しさに妹を害した結果、失敗に繋がっていることだ。

「どうもねぇ、魔王と聖女の覚醒スピードを一緒にすることが大事みたいなのよね」

 また黒が言う。
 だが、どうやって合わせればいいのか分からない。魔王や聖女の到達したレベルというものが、こちらには分からないのだから判断もつかないのだ。


 しかも、記憶がなくなるのよね……この後、私って……。
 せめてアレックスが覚えていてくれれば少しはやりやすいだろうに。


「そうだわ! 私には天使にしたミランダがいるわ! 悪魔で枠外の存在だから記憶残ってるってことよね?!」

 勢いこんで二人に聞けば、彼女たちは顔を見合わせる。

「さっきも話したけど」

 白が言う。

「私の天使は第三王子にしたのよ? でも彼は記憶を失ってたでしょ。もちろん、彼は悪魔じゃなかったけど、天使も枠外だと思うのよね」
「それは聞いたけど……」
「白の言う通りよ。私だって天使にはライラを設定したのよ? 彼女や第三王子がかすかに記憶があるっていうのは、もしかしたら天使に設定したからだったのかもしれないけど、それでも全てを記憶してないんでしょ? 天使になったってことも覚えてなかったんでしょ?」
「まぁ……そうだけど」

 だが今回は事情が違う。
 ミランダは半分悪魔なのだ。それにあの場に到達した第三者はアレックスが初めてだ。

「黒白、そういえばこの空間には私、あとどれくらいいられるの?」
「さぁ……。でも、生まれる瞬間や戻る瞬間の記憶はないわね」

 白が肩をすくめる。

「あぁ、黒灰は知ってるからしら? お父様のこと」
「世界灰色推進委員会の会長みたいなアレならね」

 私が応じれば、黒が不思議そうに首を傾げた。

「灰色? お父様は境界を壊すことが目的だって言ってたわよ? 天地に境をなくすんだって。そのためにまず私は地にいくべきだって、魔王たちと交渉させられたのに」
「それをいうなら、私は人の世をあるべき姿に戻すために天使と啓教会の密約を探るよう命じられたわ。結果、私は一段上に入り浸りすぎて人間性を失い……白となったわけだけど……」

 本質に差はないだろう。
 どちらも二人に命じたことを考えるに、二人にさせた行動や理念を色にすれば灰色といっていい。

「それで白は何を言いたかったの?」

 黒が聞けば、彼女は思案気な態度で口を開いた。

「お父様、もとは勇者だったらしいわ」



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...