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第16章・リスタート
◆ 7・プラス思考 ◆
しおりを挟むゼリーのような、何とも言えない感触の手。
彼は人間とは違う瞼の動きで瞬きをする。
「今までが失敗してるんだ、今までと違うなんて最高のアプローチ要件じゃないか」
私はポカンと口を開けて彼を見た。
「生きよう、チャーリー。これが消化試合だと言ったのはボクだけど、それは定義の話でしかないよ。今まで失敗してきているなら、今までと違うことをして模索するんだ。正解なんて考えずに挑戦しよう!」
なんて事だろう……。
私は彼の緑色の頬にキスをした。
驚いたように停止する彼に微笑む。
「ありがと、……やっぱあんたは最高ね」
アレックスから身を離し、空を見上げる。
そうよね、上の奴らの思い通りになんて進ませるもんですか!
「……で、アレックス。雰囲気を壊してなんだけど、……具体的にどうするの?」
停止していた彼は噴き出す。
「そうだね、チャーリー。そうなんだよ、問題は。今までと違う言動を選び取るのも、道が少ないんだ」
長い時間をかけて、色々としてきたのだから――。
「そうよねぇ」
「ボクの考えでは、キミの父上に協力を求めることかな」
「お父様に?!」
灰色推進委員会会長とでもいうべき父は、聖女を半分闇落ちさせて、魔王を半分光属性にぶっこんでくれたのだ。それさえなければ、私はここまで苦労していないだろう。
「確かに、お父様に協力を求めたことって……お金の無心以外ではないけど」
「うん、そうだよね。でもキミの父上の協力を得るのが一番かなと思うよ。彼はまだ謎も多いし、今回そこを暴いていこう」
お父様に……。話した瞬間、殺されたりしない?
思えば、今まで父に直接的な暴力を受けたことはない。
「ボクにはキミを守ろうとしているようにも見えるんだよね、もちろん直感であって体感ではないけど」
「はぁ」
曖昧に頷く。
「キミは父上と、ボクは弟たちと……しっかりぶつかろう」
「キャメロンのこと?」
「どっちもだよ」
第二王子のことも言ってるらしい。あの腰抜け王子は本気でアレックスを悪魔と思っているのだから、まともに話せるとは思えない。
「うん、まぁ……がんばって。私も、お父様と話してみるわ。でもその場合、仮に殺されたら……またゼロスタートよ?」
「それはそれで、本来の流れに戻ったとプラスに考えよう」
事もなげに言うアレックス。
「あんたって、プラス思考ね」
「どちらに転んでも痛手は少ないし、ボクはそうならないと思ってるよ」
どこから自信がくるのだろう、そんなにうまくいくのか、と首を傾げる。
「ボクはキャメロンと話すよ」
彼の視線が遠くを見る。
促されるように視線を映せば、ちょうど馬車が一台、門からこちらに向かってくるのが見えた。黒塗りの豪華な馬車には第三王子の紋章。
キャメロンの到着だ。
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