死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第16章・リスタート

◆ 19・父の正体(前) ◆

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 おっさん天使の声が頭の中身を――心を、揺する。
 視界が揺れる。


 何だ、これ……?


「……ー、ス」

 また彼が呼ぶ。
 視界が急速にしぼみ、広がり――拡縮を続ける。体が震えているのかもしれない。

「に……ま」

 口から零れ落ちた言葉。
 目覚めるのだと、気づいた。


 ……アーラ……、起きるのね?


 死んだも同然だった運命共同体が生きていて、また言葉を交わせることは素直に嬉しい。だがあくまで状況が違えば、の話だ。

「おやおや、こういう行為は困りますね?」

 暖かなぬくもりが肩に触れ、私は顔をあげる。
 父の手だった。
 父は愉快そうに笑い、私を見降ろしている。揺れる視界が収まり、息をつくと同時に現状が見え始める。


 まずい……、私、お父様に見せていい範囲を越えて色々伝えちゃってない? アーラのことまでバレてしま……いや、そもそも天使は心を……。
 いやでも……。


「シア様」

 父がその名を口にする。

「あなたにとってはすべからく、汚らしい肉袋。何もこの娘に限らず、そうなのでしょう。それは私も同意します。この地上にはそういった消耗品ばかりです」
「お、父さま……っ」


 これ、ヤバいパターンなんじゃ……。


 ゴクリと喉が鳴る。
 逃げ出す為に立ち上がりたくとも、体の震えはまだひいていない。

「そうして考えれば、とても面白いです。そんな厭うている肉袋の中に、アナタの大事なモノがアるのですから」

 クスクスと笑う父。

「あなたの妹君にはもう少し寝ていてもらいたいんですよ、私。……私の計画の為に、ね。『針』も、あと一回分ありますし?」
「なーんで、オマエはココにいるんだ?」

 父の言葉を塞ぐようにおっさん天使が問う。

「お遊びが過ぎるんじゃないか? 我々にだって規定がある。オマエのしていることがどれだけ逸脱したことか、分かっているんだろう? ココで消されても文句は言えないんじゃないか?」
「ですね」
「いっそ、ココで消してやろうか? オマエも面倒なループに疲れてきたんじゃないか? 最近ではいらない動きも目についているし、もう……ツいていけなくしてやろうか」
「陳腐な脅しですね、大いなる力の方とも思えぬ言い口だ」

 不穏な会話の合間に逃げ道を模索するべきだ。
 それなのに、私は問いかけていた。

「お父様……、は、天使なの?」

 今更すぎる問いで、意味も薄い内容だ。それでも聞かずにはおれなかった。
 おっさん天使がいる前で、彼の妹が入った私を殺しはあしないだろうという少しの打算。何よりおっさん天使だって、私に指令を出している立ち位置なのだから直接的に殺しは――。

「……娘1、テンシなんておとぎ話を信じているなんて、まだまだ子供なんだねぇ」

 更に、長い時を生きているというのに可笑しい子だと続ける。

「あのね、テンシやカミなんてモノは、妄想の中にしかいないんだよ。それがお前にも、いいかげん分かったと思っていたのになぁ」
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