死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第16章・リスタート

◆ 20・父の正体(中) ◆

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 父の目から逃れるように視線を落とす。
 毛足のしっかりとした絨毯はメイドたちの努力が詰まっている。色は季節などによって違うが、入っている柄はいつも同じ――リードの葉模様だ。
 ヨーク家を表す刺繍だが、正直なところ雑草にしか見えない。


 うちの家って格調高いし歴史もあるし金もあるのに、なんでこんな雑草なんだろ。実物みても全然好きになれなかったし、もっと薔薇とか百合とか選べなかったの? お父様がいつ『下』に来たのかは知らないけど、そこからうまいことオシャレにしてくれくれても良かったんじゃないの? オシャレに無頓着なわけ? いやいやモテてるんだから顔だけだじゃなくてそれなりにいわゆるそれなりに……って。
 うん……。
 問題はそこじゃないわね……。


 大きく息を吸う。


 うん、……あー……。
 ……つまり天使ってことね??
 なんだかんだと質問内容はぐらかしてるけど、そのふんわり回答から察するに結局は天使ってことでしょ?! だってこのループを記憶持ち状態で一緒にループしてるってことは、そういうことにならない?
 いや、もちろん悪魔って可能性もあるけど、どっちにしろ人外よね!!!!


 息を吐く。
 長く吐く。
 そうして、私は心は決めた。


 今回は先の読めない特殊回なわけだから、このまま先をうまく進んだとして正解に行きつける可能性はとても低い。
 でもだからこそ、味方は増やさないとだわ。
 たとえ人格破綻のくそったれお父様であろうともよ? 味方には欲しいわ。


「お父様、リードの葉は変えられなかったんですか?」

 父はポカンとする。

「私のイメージですけど、天使も悪魔のイメージが羽なんです。便宜上『天使』くくりしたりしますけど、そこに入ってる系なお父様なら、いわゆる結構長生きだったりとかしてるわけですから、そのこちらの地上に来た時に、折角なんだからそこから変えられたのでは?」

 なるべくやんわり話したいと思って口を開いたのだが――着地点が可笑しくなってしまった。


 でも、この感じならいきなり鈍器で殴打されて撲殺とかには行きつかないはず!


「娘1、失念しているようだから敢えて言おう。お前の言う『天使』の枠に入れた場合、父様も心が読めるということになるんだよ?」
「は……っ」
「そう、『人格破綻のくそったれ』とかそういうの全部ね?」
「……っっ!!!!」


 どうしよ……っ、息が吸えないっ。


 頭はグルグル、心もグルグル。
 呆然としたまま、荒い息を繰り返す。

「別に気にしてないから、深呼吸しなさい」
「ほんとバカすぎるっ」

 おっさん天使がケラケラ笑っている。
 必死で呼吸を整える私。

「娘1、リードの何が不満なんだい? リードはお前にこそふさわしい植物だ。土をかきまぜられ、ちぎれ、命が終了したかにみえても、また再生し生きていく。お前にそっくりだ。だから」

 父が絨毯の模様を見つめ、ふんわりと笑う。

「だから、リードにしたのさ」
「……、れ……はっ」


 それは、ヨーク家の始まりから『下』にいたってことよね?
 それも……いつかの、このリスタートを見据えて? 設定したと?

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