不幸少女は二度目の人生でイージーモードを望む

天宮暁

文字の大きさ
136 / 188

132 うちのパーティがギスギスしててもうダメかも

しおりを挟む
「なんで私、なりたくもない魔王になるためにMMOの最難関レイドみたいなコンテンツを周回させられてるんだろう……」

「しっかりして、ミナト。言ってることがだんだんわからなくなってきた」

「だって安定して百連勝だよ!? 最初に勝った以外で一回も勝ててないのに! 私はヌルゲーが好きなんだって何度言ったらわかるんだよ!」

 コントローラーがあったらぶん投げたい。

「くそっ、こんなにも実力差があるものか……トウゴウだけじゃない、エンドウもミナヅキも、引き出しの数が底知れない……誰を相手にしても一瞬たりとも油断ができん。油断したら死ぬし、油断しなくてもいずれ死ぬ」

「馬っ鹿じゃねえの!? こんな化け物、何度やったって勝てるわけねえって! しかもこいつらなんか強くなってねえか!?」

『エルミナーシュ・システムは汝らの戦闘行動を解析し、エミュレーターにフィードバックしている。エミュレートされたグランドマスターたちは汝らのことを学習しているということだ。
 さあ、次のセットを始めよう』

「やだあああっ!」

「うわあああああっ!」

「なんで俺が、なんで俺が……」

 こんな精神状態で勝てるはずもなく、私たちは十秒ももたずに壊滅した。

『……ふむ。これではどうにもならんな。これから汝らの主観時間で丸一日の時間を与えよう。第一層への転送法陣も開いておくゆえ、力を蓄える必要があるなら利用するがよい。第一層へ行く場合は事前に帰還を申告すれば、一週間でも一ヶ月でも主観時間を確保できる』

 エルミナーシュが休憩を告げると、私たちは精根尽き果てたように崩れ落ちた。

「……ちくしょう。なにがきついって、毎回殺されるのが痛くて痛くてしょうがねえ。殺されるのなんて本当にくたばる時の一回こっきりで十分だ」

「あいつら、わたしたちを殺した後に死体を蹴るわ燃やすわ引き裂くわ……ええい、腹がたつ! やつらには武人としての節度がないのか!」

「ないんじゃないの。当然の権利のように死体蹴りするような連中だし」

「わたしなんて最後に殺されるだけの役なんですよ!? どれだけ怖いと思ってるんですか!」

 アーシュが涙目で震えてる。

「あいつら、個人個人が強いのはもちろんだけど、連携も取れてるんだよね。アイコンタクトもなしに当然みたいにフォローやフェイントを入れてくる」

「対するこっちは寄せ集めだぁ。いくら四天魔将だと言っても、肉体を得てさほど経っちゃねえから、連中の動きに身体がついてかねえ」

「しかもこちらの手の内は学習され、封じられる。魔槍を出したい瞬間を狙ってピンポイントで攻撃を仕掛けてくるのだぞ。おかげで槍を生み出す隙すらなくなった」

 私たちは愚痴り、揃ってため息をついた。

(これってさ、仲の悪い中ボス二体を率いて、ラスボス倒した後の勇者パーティと戦ってるようなもんだよね)

 勝てるわけがない。
 あっちは古代魔王すら倒した伝説の勇者たちなのだ。

 私はつぶやく。

「魔王の力がほしい……喉から手が出るほどほしい……」

 いまイムソダに夢枕に立たれたら即座にはいと言ってしまいそうだ。

 グリュンブリンが立ち上がって言った。

「ふぅ……だが、こうしていてもしかたない。なんとか我々も連携を取ろう」

「あっさり見透かされて逆に罠を仕掛けられるような雑な連携をか?」

「他にやりようがないだろう!」

「できねえことはできねえと認める! それが俺の主義なんだ! この局面を打開するには、なにか新しい発想が必要なんだよ!」

「そんなものがどこにある!? 貴様なら思いつくと言うのかボロネール!」

 とうとうつかみあいのケンカを始めたグリュンブリンとボロネールをぼーっと見る私。
 何をしてるのかって? 放心してるだけだよ……。

(実際、ボロネールの言うことも当たってる)

 連携のプロみたいなグラマス三人に、即席のなんちゃって連携が通じるはずがない。
 サッカーのプロチームと、体力だけは五分くらいの陸上の個人種目選手がサッカーの試合をしたら、体力の差以上のボロ負けをするに決まってる。

「やっぱり大事なのは力なんだ」

 私はつぶやいた。

 ……なんかヤバいことを言ったような気がしないでもない。

「私、第一層に行ってくる。一週間くらい潜ってきて、連中を圧倒するくらいの力をつけてくる。
 そうだよ! レベルを上げて物理で殴る――基本に立ち返ればよかったんだ!」

「あ、ミナト、待ってください、私も!」

「あー、好きにやってこい。俺は束の間の休息を噛み締めたい……」

「何を言っている、連携を考えるんだ! やつらも驚くほどの連携を!」

「どうせすぐに対応されちまうんだろ? 俺は霊感が降りてくるのを大人しく待つぜ」

「勝手にしろ! わたしはひとりでも連携を考える!」

「……いや、ひとりで連携考えてどうすんだよ……」

「み、みなさん!? しっかりしてください! 正気に戻って! みんなで力を合わせればきっと――」

「はいはい、それはもういいから。グリュンブリンに殺されるとまずいから、アーシュは私が連れてくよ」

「おう、いてらー」

「ふん、元から羽虫の力など当てにはしておらん!」

 がったがたのパーティから離れ、エルミナーシュの用意した転送法陣にアーシュと乗る。

 一瞬後、私は「地獄」にいた。
 最初はまさしく地獄のようだと思った煉獄の第一層。
 だが、息苦しい固定パーティがいないだけで、こんなにも空気が清々しく感じられるのか!

「レっベル上げっ! 楽しい楽しいレベル上げっ!」

「ミナト、性格変わってる!」

 私はきわめてさくさくと地獄にいるモンスターを狩っていく。

(ああ、癒される)

 紙のような装甲、連携の「れ」の字も知らない烏合の衆、攻撃も小春日和のお日様のように生ぬるい。

「み、ミナト! 待ってください!」

 アーシュの声に、我にかえる。

「はっ! 意識が飛んでた!」

「その状態であんなにたくさんのモンスターを狩ってたんですか!?」

「敬語に戻ってるよ」

「そ、そうだった。
 じゃなくて! ですね!
 あと、えっと、ですね、じゃなくて、じゃなくて、だね!」

「わけわかんなくなってるよ」

 比較的普段通りに見えて、アーシュも心にキてたみたいだ。

 アーシュは、自分の胸に手を当てて言った。

「私にも戦わせて!」

「えっ、でも、アーシュは魔王の力が……」

「エルミナーシュの言う通りなら、その力だって私のものじゃなかったみたいだし。
 でもそれ以上に、私は、私自身の力で戦いたい。
 みんなの後ろで、みんながやられてくのを見てるだけなのはイヤ!」

「アーシュ……」

 そりゃそうか。
 見てるだけなら戦うよりマシだろなんてのはこっちの理屈だ。
 アーシュはアーシュでつらいはずだ。
 魔王だと言われてたのに、実はその力の器で、アクセスキーのようなものだなんて話も出た。それなのに、その後の試練のせいで、掘り下げることもなくうやむやになってしまってた。

「そだね。じゃあ、簡単なことからやってみようか」

「うん! お願い!」

 というわけで、私は主観時間で一週間をかけて、アーシュを鍛えることにしたのだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

処理中です...