αは僕を好きにならない

宇井

文字の大きさ
26 / 34

本当の気持ち

しおりを挟む
 都心に向かいニ十分、案内されたのは、大人が集うに相応しい落ち着いた店。テーブル席の間は適度に遮られていて、会話は抜けるけれど人目を気にする必要はない。
 黒崎お勧めの、理人にとっては慣れないワインで乾杯したが、理人の動作と表情で不慣れな事には気付いただろう。それでも黒崎は愛しい人を見る柔らかな目を向けていた。

「今日は俺自身の話をしよう。と言っても何のドラマもないけど」

 あまり期待するなと黒崎は言う。
 グラスを半分まで減らした所で、そこからは黒崎専務が誕生するまでの話になった。
 思えば理人と黒崎は何度も二人きりで会ってきたが、黒崎のバックグランドと言える踏み込んだ話をするのは初めてだった。
 興味がなかったどころか、黒崎が普段どんな仕事をしているのかはずっと気になっていた。それでもあまり深く聞くのも失礼だろうかと遠慮していたのだ。
 例えば自分の家庭の話題などを聞かれたら理人は困ってしまう。
 親は自営業者でインテリア関係、そこまでならスムーズに話せるが、それ以上となると口を噤んでしまう事が多い。上手く誤魔化す自信がないだけに、人と話をしてどこまで掘り下げてもいいものか、見極めるのは難しいと思っている。
 堂々として見える若き取締役である黒崎もそんな思いの一つや二つはあるだろうと、理人はそう考えていたのだ。
 黒崎が本社にやってきたのは、ごく最近で一年に満たない。
 数か月前まで山奥の研究施設にいた黒崎にとって、専務として本社に戻されるのは想定外だったらしい。断るつもりだったが、尊敬する上司が技術畑出身の役員が出るのは大歓迎だと言って背中を押してくれたらしい。
 身内の企業に入社した時点で失敗だったと渋い顔をする。どうやら黒崎姓ではあるが直系ではないらしく、これ以上の出世は望まないらしい。今後必要とされなくなれば、降格して現場に戻る選択も躊躇わないという。

「黒崎さんは理系だったんですね。てっきり蓮さんと同じ文系かと思ってた」
「共通の友達がいてたまたま知り合っただけだったんだ。まさかここまで長い付き合いになるとは、あいつも思ってなかっただろう。蓮は遊びも勉強もほどよくバンラスよく、一方俺はクソ真面目にやってたけどな」
「本当に?」
「本当。うちは厳しいから留年も多かったし、一つ一つの試験が成績に直結してシビアだったんだ。何とか四年やったけど、院へ進もうとは思えなかった」

 当時を思い出したのか黒崎は顔をしかめる。

「社会に出てからの方が断然面白かった。でも研究所にあるのは山と木だけ。リケジョなんて噂でしか聞かないし、周りは変わり者ばっかりだし、恋人もできない。仕事以外の面では最悪だったな」
「もてなかった訳じゃないでしょう?」
「どうかな。でも恋人って存在がいたのは、随分前だ」
「でもその割には、なんて言うか、色々と慣れてたというか……」

 初めての時は上手くリードされて流される事ができた。

「気持ち良かっただろ」

 ぶほっ。
 まさに浮かべていたその通りだったけど、流石にこの場で言われると焦る。ニヤリと口許を上げる黒崎が恨めしい。

「でもそれほど経験はない。あ、蓮はすごいけどね」
「そんなの信じられない……えっ、蓮さんって凄いの?……いや……僕は何も言えない」

 頬が熱いのはアルコールのせいだけじゃなかった。黒崎の肌の温もりと、濡れた髪の間から自分を見下ろす色っぽい顔を思い出したからだ。
 甘いワインは口に合うし、黒崎は話が上手で、それからも会話は途切れる事がなかった。
料理も美味しくて、久しぶりにお腹が満たされ、理人が酔いを自覚する前に黒崎からストップがかかった。思った以上に飲んでいたらしい。

「お前って本当に世話が焼ける。うちの太郎にそっくりだよ」
「太郎って、誰?」

 どうしてここで知らない男の名前が出てくるんだ。自分の知らない、自分に似ているらしい太郎に対して小さな嫉妬がわき口が尖る。

「太郎ってのは、実家の飼い犬。捨て犬。雑種」
「犬」

 雑種の犬……それに僕がそっくりって……

「そんな顔するなって、太郎は本当に可愛いんだ。飼い始めの頃はよく脱走して迷子になってたし、散歩に行けば俺の顔ばっかりみて歩くから、電柱によくぶつかってたな。俺がたまに実家に帰るとウレションするし、でもそこまで愛されると嬉しい。あのバカ面に無性に会いたくなる時があるんだよ」
「なにそれ、太郎っておバカなの?」
「そう。そのおバカの瞳は、黒が深くて綺麗で、そこが理人に似てる。本当の理人は、猫を被った犬だから似てるだろ」
「それって全然、嬉しくないんだけど」
「会えばその可愛さがわかる。よかったら今度見においで。理人なら太郎も歓迎する。きっと仲良くなれるだろう」

 黒崎の家。しかも実家。犬を見るだけとはいえ誘われた事が驚きだ。頬は抑えようとしても勝手に緩む。

「やっぱ、嬉しいかも。僕も太郎に会いたくなった」
「理人、お前、その顔反則」

 黒崎は手にしていたグラスを置いて隣に移動してきた。
 強引に肩を抱かれて、力抜けって命令されたら、体は勝手にそれに従っていた。

「理人の威勢がよかったのは最初だけだったな」
「そうだっけ?」
「精気のない顔してて、ちょっとでも触れたら崩れるってわかったけど、そのまま放っておく方が心配だった。あの時はかなり無理させた」

 アルコールでふやけた頭でも、黒崎の言うあの時が初対面の時だとわかる。

「理人が楓と一緒に現れた時から何となく想像ついた。蓮にふられて、親友に奪われて、それでも懸命に平気なふりして。でもさ、そのとき俺も同時に失恋したんだよ、理人にね。それでガキみたいに理人のこといじめちゃった。西さんに助言されてからはずっと理人のそばにいるようにしてきた。いや、俺がしたいからそうしてきたけど。俺の気持ちはもう充分伝わってるはずだよな」

 どういうこと。
 辛かった時の事に、黒崎まで失恋したと言う。それに西の助言とか。一度にそれだけ言われても整理がつかない。
 顔をそっと上げると、黒崎の綺麗で色気のある顎のラインが目に入る。そんな部分でさえ黒崎は理人の心を掴む。
 けど、蓮さんに失恋した僕。僕に失恋してた黒崎さん……って、もう意味がわからない。

「実は俺、前から理人のこと知ってたんだ。なあ、そろそろ移動しようか。ずっと色っぽい瞳で見つめられてたから、我慢できなくなってきた。俺、理人が欲しくてたまらない」

 髪に落ちる黒崎の吐息を感じて蕩けそうになった。

 駅直結のマンションに連れてこられて、煌びやかなグランドエントランスに理人の酔いも吹き飛んだ。
 蓮の金持ちぶりを非難していた黒崎だが、こっちも相当だ。
 その次に見せられたのが、殺風景な部屋。
 分譲かな。なんか凄い部屋なのに、もったいない。
 広いLDKで目立つのは布団とパソコン。個室が二つあるはずなのにここだけで生活しているのがわかる。だったらワンルームで良くない? そんな感じだ。
 生活感があるのはキッチンのシンクに積み上がったアルコールの缶とビンだけ。
 これを見て見ぬ振りがつらいのは、理人の主婦歴が長いせいだろう。

「これ、軽く片付けていいですか?」

 袋に入れるだけでも随分すっきりするだろう。
 ジャケットを脱ぎ袖を捲り、やる気を見せる理人を黒崎は阻止するように正面から抱き込む。

「それはまた今度。手料理とか楽しみにしていい?」
「得意っていうか、やらなきゃ誰もしれくれないから身に着いただけで。僕の料理はすごい庶民派ですよ」
「俺だっていつも定食屋で飯食ってるだろう」

 離れようとする理人を強引にまた胸に戻す。

「この部屋、まだソファーとかベッドとか揃ってない物がいっぱいあるから、今度買い物に行こう。もし一緒に住むことになったら理人も使う事になるんだし。だったら二人で選んだ方がいいだろ」
「えっ、それって」

 同居っていうか、同棲するかもってこと?

「前は理人の気が変わらないうちにホテルに連れ込まなきゃって焦ってたけど、一緒にいたい、大事にしたいって気持ちは変わらない」
「ほんと、に?」
「本当。自分の家にいるのが息苦しい。だったらここへ来ればいい」
「蓮さんに聞いたの?」

 黒崎は頷く。

「理人の為と言うより、俺の為にできればそうして欲しい」
「黒崎さんの為に……」
「俺は本気。本気で理人を落としにかかってる。さっきの店で途中で理人に飲ませたワインわかるか。お前は散々酸っぱいだの何だの零してたけど、あれで俺の給料半分飛んだから」
「嘘だっ」

 専務してる人の給料って幾らだ? 僕の給料の半分でも相当な額だ。

「理人って飲ませがいがない子だよね。でもそういう所がいい。凄くかわいいって思っちゃうんだ」

 顎をそっと押し上げられ、目を閉じたらキスをもらった。
 この唇を体は覚えていて、柔らかい感触をもらうために隙間を開けて誘い込んでいた。
 黒崎に抱かれただけで、すごく幸せな気分になっていることにはとっくに気付いている。
 あの時散々泣いて、ようやく心が晴れた頃、思い出すのは、意地悪で優しい黒崎の事ばかりだった。
 あの日のこと、何度となく思い返してきた事が、また現実になっている。こんなの、夢みたいだ。
 黒崎の大きくて熱い舌が、理人の深い場所まで潜り込んで来る。びっくりしたけど理人もそれに必死に応えた。
 ぷぱっと息継ぎをしてもキスは終わらなくて、労わるように優しいだけの触れ合いに戻った時、理人は彼の下唇を挟み込み、食んで舌でなぞっていた。

「なにそれ、必死でかわいすぎるんだけど」
「そんなことない。僕がかわいい訳ない」
「俺にはそう見えるんだ。理人、好きだよ。ずっと好きだった」
「僕も……好き」

 ゆっくりと床に追いやられ、彼の手に背を支えられながら後ろ向きに倒れる。
 着ていた服は順に脱がされ、最後の一枚まで取られる。この前とは違って淫靡な照明はなく、あるのは天井付けの明るすぎるライト。
 黒崎には余裕があるようで、視線がじっくりと体の線をなぞり観察している。
 これって凄く恥ずかしい。
 理人の隣にそっと横になり、膨らみのない胸をもんでくる。指先が頂きを摘んだり潰したりするうちにピンと立っていた。すごく感じてはいないけど、息が荒くなる。
 ただの飾りだと思っていたそこが、黒崎にかかると性感帯になる。
 下へと滑りだした手はお腹を通り、僅かな繁みを撫でる。しばらくそこで遊んだあと、真っ直ぐに下に向かう。

 あっ……
 半勃ちになっている先端を弄ばれて、その気持ち良さに甘い吐息が出る。
 もっと足を開くように誘導されて、さらに深い場所へと指が移動する。固く閉じるそこに入ろうとする指に背中がぞくりとして固まった。
 どこからか取り出したローションの助けを借りて解されれば数秒と経たずに、蕾からくちゅくちゅと音が溢れだして、余りの羞恥に目を閉じる。
 初めての時よりほぐれるのが早いのか、入って来た指に襞がまとわりつく。体は勝手に黒崎の動きを感じ取ろうと蠢いている。じりじりと差し込んでは引く、そのもどかしさに腰が揺れてしまう。
 与えられる快感に浸っていると、胸の先にぬめりを感じる。視線を下げると、尖らせた舌先で頂を舐める黒崎と目が合って顔が発熱する。そこからは酔いが復活したみたいに、身体中を血が巡って、頭がぼうっとしてきた。
 色づいた場所の全てを口内に含まれて、コリコリと噛まれる。すると緩やかな刺激が腰まで走って、先走りの蜜が溢れ出るのがわかった。
 ダラダラと流れ続ける液は腰を濡らす。黒崎はわざとしているのか、胸からも蜜口からもいやらしい音が途切れない。
 理人の口は閉じる事なく、吐息を漏らしている。

「黒崎さん……きもちいい……」
「気持ちいい? これはどう、好き?」

 増やされていた指の束が、一気に引き抜かれ、入り口の浅い部分だけを擦り続ける。緩い刺激に、声もなく息を吐く。
 ゆったりとした快感が初心者の理人には優しくて、いつまでもこの中に浸っていたいと思わせた。
 縋るように手を伸ばすと、黒崎はそれを受け取って背中へと誘導する。そしてキス。
 頭の中が真っ白になって、ぎゅっと黒崎の指を締め付ける。もっと奥へ、内へ内へと誘うように動く。
 快感に浸る理人の額にキスをして、黒崎は避妊具をどこから取り出したものの、一旦パッケージを開けたそれを、どういう事が脇に放り投げた。
 足の間に割入り、曲げていた膝をぐっと持ち上げる。理人のお尻が大きく浮いて、持ち上がった自分の下半身の肌色が視界を埋めた。


「理人……今日はつけない。いい?」
「うん、つけなくていい。今日は僕も……そのままの黒崎さんを感じたい」

 腸がその違いを感じとれるとは思えないけど、薄い膜の隔たりでさえ今の理人には邪魔でしょうがない。
 
「すごくいい眺め。理人の気持ちよさそうな顔も見えるし、胸も、袋も穴も丸見え」
「そんなこと、言うな……」
「ほら、今ので理人の先からまた溢れてきた」

 こぷりと粘度のある液が先端で水玉を作り、奥から押し出されるようにして形を崩し、それが胸に滴り落ちる。
 理人の反応を見ながら黒崎が楽しんでいるのがわかる。いたずらか何かの間違いみたいに、太い楔が蕾に沈み込んでくるからだ。

「ああっ」

 すぐに出て行ってしまう物を惜しんで、蕾がひくひくと切なく動く。
 きっとそれ以上はまだ痛みがあるのはわかっている。わかっているけど、思いっきり突いて中を一杯にして欲しい。
 過ぎる快感にシーツを握り込み耐えていると、黒崎がじりじりと挿入を開始した。
 指とは圧倒的に違う異物をずるずると咥え込んでいく。
 理人は思い切って黒崎の腰に足を巻き付け、その動きを助けた。
 蕾はぎゅうぎゅうとペニスを締め付ける。そのせいか、んんっと声を耐えるのは理人だけじゃなかった。
 黒崎が自分で感じてくれている事が嬉しくて、体温が上昇する。
 奥も入口も、包む全部が黒崎を感じ取ってしまう。そこからリズムよく突かれて、理人は早々に高められた。
 黒崎の太い物で貫かれて、限界まで拡がって密着している。
 内臓ごと持って行かれるように、ギリギリまで引き抜かれた物が、次の瞬間には奥に届いている。
 ぐちゅん。

「うわっ……」

 ぶつかり合って、理人のの一番の奥と黒崎の先がキスしている。
 失いかけた物が満たされる喜びに、その落差に理人は夢中になった。ふわふわとした曖昧な感覚だったのに、確実な快感として襞が捉えている。


「あっ……なんか、へん……」
「理人、中でいけそうなのか?」
「わ、かんない……あっ……」

 早くなる動きに合わせて体も揺さぶられる。奥に到達した後に、黒崎はグリッと腰を回す。それ以上の奥を目指すように。

「そのグリグリいやだ……」
「理人、ちゃんと感じて、痛いわけじゃないだろ」
「……だって……おかしくなる……」
「俺の前なんだから、いいだろ。俺だってとっくに、おかしくなってる」
「でも……んっ、黒崎さん」
「なあ、祐也って呼べよ」
「ん……ゆうや」

 祐也が理人の中で膨れあがるのがわかった。
 上半身が密着し、しっとりとした肌が吸い付く。首の後ろと腰にまわった腕にがっちりとホールドされて僅かな身動きしかできない。
 黒崎の腰は激しい動きをやめ、奥の壁をほぐすように、円を描くように変わっている。
 噛みしめるような呼吸が耳の近くに落とされて、じれったい快感に甘い溜息が出た。
 ゆっくりと、こねるような腰遣いに行き止まりの壁が痺れる。

「理人は奥が大好きなのに、この前はあまり触ってあげられなかったからな」

 黒崎の硬い芯が、ねっちこく奥だけを狙い蕩かし、もっと奥にある未開の部分を執拗に溶かそうとする。
 熱い。

「あついよ……あぁ……」

 その先に何があるかなんてわからないけど、寒気だけではない、解放されない熱が湧き上がる。
 ぐちぐち。
 音が後を引くように変わっている。擦られ続けるその一点から蕩けそうで、頭の中はぼうっとしてくる。

「これ……なにしてるの……?」
「この前の時にも思ったんだけど、やっぱりそうだ。理人の秘密の場所を、見つけたかもしれない」
「なんか、とけそう……そこで、僕の奥と、祐也さんのが……」
「とろけて、くっつくまで、時間をかけて柔らかくするよ」
「でも、それ以上は無理……行きどまり……」
「本当にそうか。これから確かめる」
「あっ……」
「ここ?」
「……うぁん」
「こうした方がいい? いいんだ」

 細かなゆさぶりが、四肢から力を抜かせ、完全に脱力し気が遠くなった瞬間、その隙を突くように、奥というよりは、お腹側を執拗に擦り上げ、角度を変えねじこもうとしている。そこに黒崎の段差が引っかかる
 体の全部の機能が凍り、理人は息を止めた。
 きっと黒崎が言っていたのは、理人の持つ内殖器の事だ。真っ直ぐに突き上げるのでは入らない、秘密の場所。
 妊娠しないのはわかっている。だけど、怖い。自分のそれがどう成長しているかなんて、わからない。
 内緒にしていたその存在を暴かれてしまう。
 そこはダメな場所。押し入ってはいけない場所だ。どんな造りになっているかもわからない。

「……入っちゃだめだ。だめ……絶対にだめ……んんっ……」
「どうして? ここに入れるのは、運命の番だけ。だったら俺が入ってもいいだろう。最初に理人の中に入った時から、そうじゃないかと思ってはいたんだ。指で確かめたから大丈夫。開けるよ」
「でも、だけど……そこに祐也さんが来ちゃったら、僕、どうなるか……ああっ、くるっ、やだぁ」

 ジタバタしても、黒崎の力に勝てるわけがない。
 今までとは違う場所に、熱いぬるぬるしたものが入って来る。
 優しかったはずの黒崎が強引に押し付けてくる。
 硬い入口を通り抜け、あっと思った時には、ばちゅんと肌が鳴り、今まで以上に密着していた。

「……悪いっ、全部入った」
「ぜんぶ」

 あの長さの全部を咥え込んでいるなんて、信じられない。直腸では受け入れられなくても、内殖器側では黒崎の全長が入ったのだ。

「理人の一番大事な場所が受け入れてくれた。しばらくは……このままでいよう。俺も凄く気持ちいいよ」

 黒崎は差し込んだ場所を明け渡さないままキスを仕掛けてくる。理人はこれから与えられる未知の感覚を、頭から追い払うように舌を絡めた。
 あり得ない場所を黒崎は時間をかけてほぐし、理人の体はそれを許した。黒崎がいるのは、自分の体で最も忌々しい場所。そこに堂々と居座っている。
 信じられない……
 どれだけキスをしたのだろう、唇がぽってりと腫れているのがわかる。きっと咥え込んでいる場所も、こんな風に腫れぼったく、黒崎に纏わりつきねぶっているのだろう。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

【運命】に捨てられ捨てたΩ

あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

処理中です...