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50 お兄さん
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長いようで短かった夜会。
そしてドレス問題に振り回された、胃の痛む一週間がようやく終わった。
一夜があけ、私の部屋に届けられいたのは、控え室に置いてきたドレスだった。私のために作ったドレスは私のものだと、送られてきたのだ。
あの夜、ありがとうございますと、すべてのことにお礼を言う私に、ジェド様はそのほとんどを提供したのは自分ではないと言った。
「できればネタばらしはしたくないけど、そうもいかない」
ずっと私に言わないできたことを教えると言えれ、私はこの夜、待ち合わせ場所である東門へ来ていた。
どこに行くのかな。
いつもの服に着替えて、寒さのためきっちり上着を着んだ。
ジェド様は自分がセレブではないと夜会で言っていたけれど、私からしたら彼は社交の得意な立派な紳士だ。
そしてずっと思ってきたこと。
私はジェド様の顔にどこか見覚えがあったのだ。そしてそれが悪い記憶でない事もぼんやりと感じている。だけど、どこでどう会ったのかがどうしても思い出せないし、その記憶は確かなのだという確信が持てずにいた。
彼の軽い第一印象が仇となってしまい目くらましを受けてしまったけれど、彼に懐かしさを感じるのは……幼い頃に出会っていたから……?
上手く思い出せない回転の悪い頭を恨みつつ待っていると、当のその人がツカツカと、しかし満面の笑みでこちらにやってきた。
歩みとともに揺れる顔は幼くて、どこかで見たことが。
ぼんやりと、何かが掴めそうな気がして、ついその顔を凝視してしまう。
あの目元って……
過去の彼の顔が一瞬だけ重なる。
懐かしい、あの人……
まさか、あの、魔力鑑定してくれた、お兄さん!?
服装とか、言葉遣いとか顔とか、全然違っているけれど、絶対にそうだ。
「あの、ジェド様は……!」
「その顔は、ようやく思い出してくれたんだね」
声も出せずにあわあわしている様子でわかったのか、ジェド様は嬉しそうにしている。
「やっぱりジェド様は、あの時の魔力鑑定のお兄さんですよね」
「だね。やっと気づいてくれた。それと、名前、私もパットって呼ぶから、ジェドって呼んでくれる。そうすると呼び名が似てるしいいよね」
あの時も若いお兄さんだと思ったけれど、今も変わらず若い。
「じゃあ、ジェドさんってお呼びします。それにしても、ジェドさんって一体おいくつなんですか? あの時も今もお若いって!? どういうことでしょう」
「私? いま二十九だよ。初めて会ったのは十九だったから、あれから十年たってことか。パットは大人になっちゃったね。自分の魔力が陰だと説明されて泣きそうになっていた女の子が、夢を叶えて近衛に入隊しているなんて思いもしなかったよ。今さらだけど、入隊おめでとう」
右手を取られジェドさんの両手に包まれ、大きな握手をされた。
近衛に入隊となると、やっぱり世間では夢を叶えたと取られるらしい。夢と言えば夢だったけれど、そうでないとも言える微妙な感じだ。
お金を第一に考え入隊するなんて、きっと近衛の中でも私くらいのものだろう。
せっかくの言葉を訂正する気はなくて、私はありがとうございますと返しておいた。
夜の街は人通りも多く、ただ歩くだけでも苦労する通りがあった。
それでも波をかわすように歩くジェドさんの後ろに続けば、人波にのまれることはなく、小さな通りへ脱出できた。たまに腰に回される手も、私が歩きやすいように誘導しているだけで、そこに不埒さは感じなかった。
案内されたのは、酒の肴のひと言では片付けられない完璧な料理を出すと有名なお店らしい。店の中は大人の雰囲気満点だった。
テーブルが三席、あとはカウンター席。
カウンターの奥の棚には、私とはまったく縁がないお酒がずらりと並びラベルを見せている。
すぐ近くまで漂うのはお肉が焼ける香ばしい匂い。それが鼻より先にお腹に届いた感じで、そこでようやく自分の空腹に気付いた。
一応ジェドさんと出かけることにずっと緊張していたのだ。
店のコンセプトとは逆の、食事をメインとして頼むようだ。ジェドさんは料理を次々と注文していく。
外でのお酒にいい思いはないので、私は勧められれてもジュースをお願いしておいた。
ジェドさんは店に慣れているようなので、リストを見て店員さんと楽しそうに話す人を見守ることに徹する。
それほど待たずに飲み物がやってきて、その間二人で会話するすきもなかった。
料理まであっという間にそろい狭い丸テーブルが一杯になる。
「欲張り過ぎたか……」
注文した物が全部揃って、ふたりで食べきれるのかと心配になる。料理の向こうにいるジェドさんと目が合うと自然に笑いあった。
「高級な店じゃなくてごめんね。でも私はこっちの方が性にあってるんだ」
「私も賑やかな方がいいです。昨日は緊張しっぱなしでしたし、もう堅苦しいのはいやです」
「じゃあ、乾杯しようか」
グラスを上げると、ジェドさんの腕がのび二つのガラスがぶつかった。
「じつはね、パットが私に気付かなかったのも無理はないんだ。実は……私の顔は以前とは変わっているんだよ」
「顔が変わるって……成長で?」
「いや違う。五年前に仕事がらみの事故があって、顎と鼻が砕けたんだ。それを魔力で補正してくれた人がいて、何とか今の顔になったってこと。昔はもっと顎がとがっていて、面長のいい男だっただろう?」
「でも、今だっていい顔じゃないですか」
顔の骨が砕ける大事件。そっちも気になるけど、体に負った傷は辛く大変だっただろう。
しかも、それを魔力で治せる人がいるんだ。
「私はね、もう少し早く行動していたらって悔やんでるんだ。まさか君があのファーガス殿下と恋人 同士になってしまうなんてね」
「んんっ……ど、どうしてそれを!」
「知ってるかって? 俺は魔力が感知できる。ある時王城の一角から産まれたばかりのような無垢な魔力を感じた。それを辿ってみると獣がいた。その隣にいたのはファーガス殿下だった。もっと観察してみると、その隣にはパットがいた。そういう訳」
「それって、いつ見たんですか。どれくらい前ですか」
「いつかって言われるとはっきりしないけど、そうだな……二人が楽しそうにお喋りしてて、その後、手を繋いで、けしからん茂みに移動して……」
「ちょ、ちょっと待って、ください」
一番マズイ見られたくない場面を、ばっちり見られているってことじゃないですか。
私はジュースを零しそうになり、グラスをテーブルに置いた。
「大丈夫、そこから先はさすがに見ていないから。俺もそこで傷心した訳だし……あ、ごめん。本当は『私』って一人称は公式の場でしか使わないんだ。普段は『俺』だから」
カラッと笑うジェドさんだけど、私はその前に言われたことで赤面しながら睨む。
「ごめんごめん。でもさ、あいつって何なんだよ。何気に肩乗りなんてさせてるけど、あのちっこいのだって一応希少種だから」
そいつをペットにしてしまうなんてあり得ないってぶつくさ零す。
魔獣に関しては私が深くかかわっていることを言えない。
「研究所って魔獣も研究対象なんですか?」
「過去も現在も魔獣は扱ったことがないな。うちは基礎研究とか魔力持ちの管理とかが主で、伝統はあるのに地味過ぎてなかなか評価はされないんだよね。俺も年の半分は地方を回っているし、兼業で作家と編集なんてやってると忙しくて。魔獣には興味がないとはいわないけど、それほどでもないかな。魔獣を欲しがるとしたら、近衛の魔学部あたりじゃない」
ジェドさんが作家……
そういえば、本の編纂とかをしてるって言ってたっけ。それにしても多才すぎる。
「二つの仕事をしているなんて凄すぎます」
「凄いというか、逃げというか。自分の魔力が嫌になっていた時期があってね、俺は研究所に片足突っ込んだまま、籍を置いたまま逃げたんだ。ほら、サロンやクラブにさ」
「研究所が嫌なんじゃなく、魔力が嫌になった?」
「そう。俺と同じ能力を持った人間はある頻度で現れるんだ。一人引退したら一人発見されて、欠けた部分を埋めるように一人死んだら一人生まれる。その事実を知ったら何だかやりきれなくなっちゃったんだ。若さもあって消耗品ってのが耐えられなかったんだなあ。でもそこを出たからって唯一無二になれないこともわかって、今に至るって感じ。その点パットの魔力は独特だね」
「でも良いことは一つもありませんから」
「活かせる場所はあるはずなんだけど」
「そんな場所があるなら行ってみたいですよ」
「スパイでもする?」
「求められるのであれば考えます」
私の本気にジェドさんは噴き出した。
そしてドレス問題に振り回された、胃の痛む一週間がようやく終わった。
一夜があけ、私の部屋に届けられいたのは、控え室に置いてきたドレスだった。私のために作ったドレスは私のものだと、送られてきたのだ。
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彼の軽い第一印象が仇となってしまい目くらましを受けてしまったけれど、彼に懐かしさを感じるのは……幼い頃に出会っていたから……?
上手く思い出せない回転の悪い頭を恨みつつ待っていると、当のその人がツカツカと、しかし満面の笑みでこちらにやってきた。
歩みとともに揺れる顔は幼くて、どこかで見たことが。
ぼんやりと、何かが掴めそうな気がして、ついその顔を凝視してしまう。
あの目元って……
過去の彼の顔が一瞬だけ重なる。
懐かしい、あの人……
まさか、あの、魔力鑑定してくれた、お兄さん!?
服装とか、言葉遣いとか顔とか、全然違っているけれど、絶対にそうだ。
「あの、ジェド様は……!」
「その顔は、ようやく思い出してくれたんだね」
声も出せずにあわあわしている様子でわかったのか、ジェド様は嬉しそうにしている。
「やっぱりジェド様は、あの時の魔力鑑定のお兄さんですよね」
「だね。やっと気づいてくれた。それと、名前、私もパットって呼ぶから、ジェドって呼んでくれる。そうすると呼び名が似てるしいいよね」
あの時も若いお兄さんだと思ったけれど、今も変わらず若い。
「じゃあ、ジェドさんってお呼びします。それにしても、ジェドさんって一体おいくつなんですか? あの時も今もお若いって!? どういうことでしょう」
「私? いま二十九だよ。初めて会ったのは十九だったから、あれから十年たってことか。パットは大人になっちゃったね。自分の魔力が陰だと説明されて泣きそうになっていた女の子が、夢を叶えて近衛に入隊しているなんて思いもしなかったよ。今さらだけど、入隊おめでとう」
右手を取られジェドさんの両手に包まれ、大きな握手をされた。
近衛に入隊となると、やっぱり世間では夢を叶えたと取られるらしい。夢と言えば夢だったけれど、そうでないとも言える微妙な感じだ。
お金を第一に考え入隊するなんて、きっと近衛の中でも私くらいのものだろう。
せっかくの言葉を訂正する気はなくて、私はありがとうございますと返しておいた。
夜の街は人通りも多く、ただ歩くだけでも苦労する通りがあった。
それでも波をかわすように歩くジェドさんの後ろに続けば、人波にのまれることはなく、小さな通りへ脱出できた。たまに腰に回される手も、私が歩きやすいように誘導しているだけで、そこに不埒さは感じなかった。
案内されたのは、酒の肴のひと言では片付けられない完璧な料理を出すと有名なお店らしい。店の中は大人の雰囲気満点だった。
テーブルが三席、あとはカウンター席。
カウンターの奥の棚には、私とはまったく縁がないお酒がずらりと並びラベルを見せている。
すぐ近くまで漂うのはお肉が焼ける香ばしい匂い。それが鼻より先にお腹に届いた感じで、そこでようやく自分の空腹に気付いた。
一応ジェドさんと出かけることにずっと緊張していたのだ。
店のコンセプトとは逆の、食事をメインとして頼むようだ。ジェドさんは料理を次々と注文していく。
外でのお酒にいい思いはないので、私は勧められれてもジュースをお願いしておいた。
ジェドさんは店に慣れているようなので、リストを見て店員さんと楽しそうに話す人を見守ることに徹する。
それほど待たずに飲み物がやってきて、その間二人で会話するすきもなかった。
料理まであっという間にそろい狭い丸テーブルが一杯になる。
「欲張り過ぎたか……」
注文した物が全部揃って、ふたりで食べきれるのかと心配になる。料理の向こうにいるジェドさんと目が合うと自然に笑いあった。
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「私も賑やかな方がいいです。昨日は緊張しっぱなしでしたし、もう堅苦しいのはいやです」
「じゃあ、乾杯しようか」
グラスを上げると、ジェドさんの腕がのび二つのガラスがぶつかった。
「じつはね、パットが私に気付かなかったのも無理はないんだ。実は……私の顔は以前とは変わっているんだよ」
「顔が変わるって……成長で?」
「いや違う。五年前に仕事がらみの事故があって、顎と鼻が砕けたんだ。それを魔力で補正してくれた人がいて、何とか今の顔になったってこと。昔はもっと顎がとがっていて、面長のいい男だっただろう?」
「でも、今だっていい顔じゃないですか」
顔の骨が砕ける大事件。そっちも気になるけど、体に負った傷は辛く大変だっただろう。
しかも、それを魔力で治せる人がいるんだ。
「私はね、もう少し早く行動していたらって悔やんでるんだ。まさか君があのファーガス殿下と恋人 同士になってしまうなんてね」
「んんっ……ど、どうしてそれを!」
「知ってるかって? 俺は魔力が感知できる。ある時王城の一角から産まれたばかりのような無垢な魔力を感じた。それを辿ってみると獣がいた。その隣にいたのはファーガス殿下だった。もっと観察してみると、その隣にはパットがいた。そういう訳」
「それって、いつ見たんですか。どれくらい前ですか」
「いつかって言われるとはっきりしないけど、そうだな……二人が楽しそうにお喋りしてて、その後、手を繋いで、けしからん茂みに移動して……」
「ちょ、ちょっと待って、ください」
一番マズイ見られたくない場面を、ばっちり見られているってことじゃないですか。
私はジュースを零しそうになり、グラスをテーブルに置いた。
「大丈夫、そこから先はさすがに見ていないから。俺もそこで傷心した訳だし……あ、ごめん。本当は『私』って一人称は公式の場でしか使わないんだ。普段は『俺』だから」
カラッと笑うジェドさんだけど、私はその前に言われたことで赤面しながら睨む。
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「研究所って魔獣も研究対象なんですか?」
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ジェドさんが作家……
そういえば、本の編纂とかをしてるって言ってたっけ。それにしても多才すぎる。
「二つの仕事をしているなんて凄すぎます」
「凄いというか、逃げというか。自分の魔力が嫌になっていた時期があってね、俺は研究所に片足突っ込んだまま、籍を置いたまま逃げたんだ。ほら、サロンやクラブにさ」
「研究所が嫌なんじゃなく、魔力が嫌になった?」
「そう。俺と同じ能力を持った人間はある頻度で現れるんだ。一人引退したら一人発見されて、欠けた部分を埋めるように一人死んだら一人生まれる。その事実を知ったら何だかやりきれなくなっちゃったんだ。若さもあって消耗品ってのが耐えられなかったんだなあ。でもそこを出たからって唯一無二になれないこともわかって、今に至るって感じ。その点パットの魔力は独特だね」
「でも良いことは一つもありませんから」
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