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45 ドレス問題
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私たちはゆっくりと話ができるということで、私の部屋に移動した。
「何もない部屋だな。入寮したばかりの頃を思い出す」
馬鹿にするというより、感心したように先輩は部屋を見渡して言った。
先輩にはたったひとつの椅子に座ってもらい、私たちはベッドに腰かける。
自分の部屋にダナがいるのは当たり前のように受け入れられるけれど、先輩がいるのは奇妙な光景にしか見えない。
これまで私はこの人とまともに喋ったことがないことに今更ながら気付く。この人とはいつも剣を持って向かい合ってきたのだ。そしていつも私が負かされてきた。
先輩の手の上にはルルがいるのだけれど、興奮している割にはあまり動きがない先輩は歓びのあまり硬直しているというか、どう振る舞うのが正解かがわかっていないようだ。
「先輩、普通にしていいんです。ルルは噛み付かないですし」
「……よし、わかった」
「大丈夫です。ウィルマさんのやりたいように、存分に撫でたくればいいんです」
先輩を決して先輩と呼ばないダナは、子供に言い含めるように言う。すると先輩の手はギクシャクと不器用にルルの茶の背中を指先で撫でた。
「実家でも子供の頃から猫を三匹飼っていたのだが、まったく私に懐かずにいてな。どうしてかこの手のものには逃げられてばかりだ。しかし、この子は逃げない……不思議だ」
撫でることにすぐに慣れたのか、表情が柔らかに変わる。そのほっとした息に場の空気が和んだ。
「それにしても、面倒なことをする奴がいるものだ……」
口を開いたのは先輩だった。
もしかしたら、この人も関わっているのかと知らずに思っていたせいか、思わずダナと顔を見合わせてしまう。
つまりダナも、もしかしたらこの人も関わって……と失礼なことを思ってしまっていたのだ。
「私は卑怯なことはしない。裏でちまちまと小細工するのは性格に合わない。やるなら堂々とやるべきだ。しかも大切な私信である手紙を奪うとは犯罪とも言えるのに、それに気付いてもいない。いかにも侍女共がやりそうな手口だ」
先輩の言葉に一番反応したのはダナだった。
「その通りですウィルマさん! 私はパトリシア宛ての手紙を侍女の女性から受け取りました」
「やはりそうだろう。あいつらは王族の身近にいるせいか、自分たちが一番だと思っているしプライドも高い。実際にそれなりの家の出であることが自信の裏打ちになっているから、それを自分の力だと勘違いしている。きっと自分が使用人だとは思っていないのだろう。やはりファーガス様とパトリシアの噂を聞いて面白くないと企んだ奴がいるんだろうな」
「近衛は噛んでいないと?」
「ああ、断言できないけれど、そう思っていいだろう。私たちの場合は陰口ではなく思ったことは本人の前で言う。辛辣なことも言って因縁を残すこともあるけど、いざこざは表に出ることの方が多く周りもその関係性を知っている。伝統的にそういう体質だ」
言われてみれば納得できる。
私も学生の頃から散々だったけれど、どれもが自分の耳で聞いてきたことであって、伝聞であったことは少ないから。
それがいいか悪いかは置いておいて、今回のような悪質さはなかったはずだ。まさか何か月も前に届いていなければならないはずの手紙を隠されるとは。
女性特有のどろどろというのは、これが本物だと教えられた気がする。
「えげつない状況に置かれているというのに、パトリシアは冷静だな」
「いいえ、ウィルマさん。パットはこう見えて凄く動揺しているんです。今は混乱して頭の動きが超絶鈍くなっているだけです。しばらく放っておけば戻ってきます」
「なるほど。そんな顔だな」
二人は私の顔をのぞきこんで納得しているけれど、確かにまあ、私は意外と冷静だ。
ファーガス様とのことが少し広まっていたり、だしぬけにパーティーの話が湧いて出てきて、ファーガス様と私をのことを良く思わない人達の存在まで知って。
正直、どこからどう飲み込んでいけばいいのか、わかっていない。さっきまでファーガス様の親友であるネイハム様と話していて疲労が極限にあったせいもある。
一難さってまた一難。
まさにその言葉に相応しい事態に見舞われている。
「私はパットの言う、仮病を使って欠席するのは最も悪い手だと思うんです。何より悪意に屈するようで気にいらない。ドレスの都合さえつけばすべて即解決だと思うんですが、ウィルマさんの力でどうにかならないでしょうか?」
ダナが前屈みで詰め寄ると、先輩はしばらく考え込む。
「仕立ててくれる店を知らないこともない。しかし、私の口利きで動いてくれるかはわからん」
「どうしてですか? ウィルマさんの実家は伯爵家ですよね。ばんばんドレスを発注してくれるお得意様ってことですよね。こんな強力な後ろ盾はないと思いますが」
「悪いが、私は近衛に入隊することで家に見捨てられた存在なんだ。入隊を夢みていた頃から応援してくれていたのは、幼馴染であり婚約者だった人だけだった。金銭の援助も学生の頃から親からではなくその人から受けていた」
「ええっ!」
家に見捨てられた。そして既に婚約者がいる。その二つのどちらもが私たちを驚かせるには充分だった。
先輩の意外な告白に、自分の置かれたピンチなど忘れて大声をあげてしまう。ダナも興味深げに質問をしてしまう。
「だったら、休日に里帰りして、実家でドレスを着て伯爵家のお姫さまに戻ってっていう、そんな生活はしていないんですか?」
ダナが疑わしげに先輩の目をのぞく。
「ああ、していない。ドレスなんてどれくらい作っていないか……」
「へえ、てっきり家ではつかう側に回って優雅に茶でも飲んでいるのかと思ってました」
「休日だって連休だって帰りはしない。婚約者殿には会うが、家に帰ってもいいことなんてありはしない。私は四番目の子供だからな。扱いは雑だ」
「私も四番目ですよ」
意外な共通点を見つけた二人は急に距離を縮めたように見える。
「とにかく、この時期の仕立て屋は忙しいはずだ。舞踏会があるのは城だけではないし、冬の分の受注はもう終わっているかもしれない」
なるほど、そんなものなのか。
社交やドレスに疎い私とダナは黙って先輩の言うことを黙って聞くしかない。
「そうだパット、同じ王都にいる姉さんに連絡をつけてみたら? 商売してるって言ってだたろ。知り合いも多いはずじゃないか?」
「私も考えたけど、何しろお嫁に出た人だし、手紙のやりとりなら頻繁だけど、手紙じゃ間に合わないかもしれない」
「そうか。姉妹なら気安いしドレスも借りやすいと思ったんだけど……」
「あのな、一応言っておくが、決して隊服で出るなよ」
少しだけギクリとしたのは、どうしても出席しなければならないとなった時、最後にはそれでもいいかと思っていたからだった。
隊服だって一応正装であって、これで王の前に出ても失礼にならないからだ。
「場に応じた服装は重要だ。隊服で行ったら笑われるどころではなく、主催者に失礼だと取られる。くれぐれも間違いを犯すな。お前ひとりの問題ではなく、近衛全体の恥になる事案になるぞ」
「わかりました」
しゅんとすると、先輩は仕方のない子供を見るような顔をする。
「社交の場ってのは面倒だ。好きな女性の方が多いのだろうが、私は昔から苦手だった。ドレスにも流行りすたりがある。そのシーズンの流行りの色や形があるし、その場に相応しい装いも決まっている。しかし……」
「しかし?」
「今回のそれの場合は何ともな。私はその団体の夜会に出たことがない。チャリティーか。どの程度の正装が正解なのかいまいちわからん」
先輩は小さく溜息をついて、膝の腕にいるルルを手の平全体で撫で顔を上げ口を開く。
「思ったんだが……案外、パトリシアをパーティーに出さないように画策したと言うより、場違いな格好でやってくるのを嘲笑う為に、と考えた方がいいのかもしれないぞ」
先輩の言葉には私もダナも衝撃を受けた。
「何もない部屋だな。入寮したばかりの頃を思い出す」
馬鹿にするというより、感心したように先輩は部屋を見渡して言った。
先輩にはたったひとつの椅子に座ってもらい、私たちはベッドに腰かける。
自分の部屋にダナがいるのは当たり前のように受け入れられるけれど、先輩がいるのは奇妙な光景にしか見えない。
これまで私はこの人とまともに喋ったことがないことに今更ながら気付く。この人とはいつも剣を持って向かい合ってきたのだ。そしていつも私が負かされてきた。
先輩の手の上にはルルがいるのだけれど、興奮している割にはあまり動きがない先輩は歓びのあまり硬直しているというか、どう振る舞うのが正解かがわかっていないようだ。
「先輩、普通にしていいんです。ルルは噛み付かないですし」
「……よし、わかった」
「大丈夫です。ウィルマさんのやりたいように、存分に撫でたくればいいんです」
先輩を決して先輩と呼ばないダナは、子供に言い含めるように言う。すると先輩の手はギクシャクと不器用にルルの茶の背中を指先で撫でた。
「実家でも子供の頃から猫を三匹飼っていたのだが、まったく私に懐かずにいてな。どうしてかこの手のものには逃げられてばかりだ。しかし、この子は逃げない……不思議だ」
撫でることにすぐに慣れたのか、表情が柔らかに変わる。そのほっとした息に場の空気が和んだ。
「それにしても、面倒なことをする奴がいるものだ……」
口を開いたのは先輩だった。
もしかしたら、この人も関わっているのかと知らずに思っていたせいか、思わずダナと顔を見合わせてしまう。
つまりダナも、もしかしたらこの人も関わって……と失礼なことを思ってしまっていたのだ。
「私は卑怯なことはしない。裏でちまちまと小細工するのは性格に合わない。やるなら堂々とやるべきだ。しかも大切な私信である手紙を奪うとは犯罪とも言えるのに、それに気付いてもいない。いかにも侍女共がやりそうな手口だ」
先輩の言葉に一番反応したのはダナだった。
「その通りですウィルマさん! 私はパトリシア宛ての手紙を侍女の女性から受け取りました」
「やはりそうだろう。あいつらは王族の身近にいるせいか、自分たちが一番だと思っているしプライドも高い。実際にそれなりの家の出であることが自信の裏打ちになっているから、それを自分の力だと勘違いしている。きっと自分が使用人だとは思っていないのだろう。やはりファーガス様とパトリシアの噂を聞いて面白くないと企んだ奴がいるんだろうな」
「近衛は噛んでいないと?」
「ああ、断言できないけれど、そう思っていいだろう。私たちの場合は陰口ではなく思ったことは本人の前で言う。辛辣なことも言って因縁を残すこともあるけど、いざこざは表に出ることの方が多く周りもその関係性を知っている。伝統的にそういう体質だ」
言われてみれば納得できる。
私も学生の頃から散々だったけれど、どれもが自分の耳で聞いてきたことであって、伝聞であったことは少ないから。
それがいいか悪いかは置いておいて、今回のような悪質さはなかったはずだ。まさか何か月も前に届いていなければならないはずの手紙を隠されるとは。
女性特有のどろどろというのは、これが本物だと教えられた気がする。
「えげつない状況に置かれているというのに、パトリシアは冷静だな」
「いいえ、ウィルマさん。パットはこう見えて凄く動揺しているんです。今は混乱して頭の動きが超絶鈍くなっているだけです。しばらく放っておけば戻ってきます」
「なるほど。そんな顔だな」
二人は私の顔をのぞきこんで納得しているけれど、確かにまあ、私は意外と冷静だ。
ファーガス様とのことが少し広まっていたり、だしぬけにパーティーの話が湧いて出てきて、ファーガス様と私をのことを良く思わない人達の存在まで知って。
正直、どこからどう飲み込んでいけばいいのか、わかっていない。さっきまでファーガス様の親友であるネイハム様と話していて疲労が極限にあったせいもある。
一難さってまた一難。
まさにその言葉に相応しい事態に見舞われている。
「私はパットの言う、仮病を使って欠席するのは最も悪い手だと思うんです。何より悪意に屈するようで気にいらない。ドレスの都合さえつけばすべて即解決だと思うんですが、ウィルマさんの力でどうにかならないでしょうか?」
ダナが前屈みで詰め寄ると、先輩はしばらく考え込む。
「仕立ててくれる店を知らないこともない。しかし、私の口利きで動いてくれるかはわからん」
「どうしてですか? ウィルマさんの実家は伯爵家ですよね。ばんばんドレスを発注してくれるお得意様ってことですよね。こんな強力な後ろ盾はないと思いますが」
「悪いが、私は近衛に入隊することで家に見捨てられた存在なんだ。入隊を夢みていた頃から応援してくれていたのは、幼馴染であり婚約者だった人だけだった。金銭の援助も学生の頃から親からではなくその人から受けていた」
「ええっ!」
家に見捨てられた。そして既に婚約者がいる。その二つのどちらもが私たちを驚かせるには充分だった。
先輩の意外な告白に、自分の置かれたピンチなど忘れて大声をあげてしまう。ダナも興味深げに質問をしてしまう。
「だったら、休日に里帰りして、実家でドレスを着て伯爵家のお姫さまに戻ってっていう、そんな生活はしていないんですか?」
ダナが疑わしげに先輩の目をのぞく。
「ああ、していない。ドレスなんてどれくらい作っていないか……」
「へえ、てっきり家ではつかう側に回って優雅に茶でも飲んでいるのかと思ってました」
「休日だって連休だって帰りはしない。婚約者殿には会うが、家に帰ってもいいことなんてありはしない。私は四番目の子供だからな。扱いは雑だ」
「私も四番目ですよ」
意外な共通点を見つけた二人は急に距離を縮めたように見える。
「とにかく、この時期の仕立て屋は忙しいはずだ。舞踏会があるのは城だけではないし、冬の分の受注はもう終わっているかもしれない」
なるほど、そんなものなのか。
社交やドレスに疎い私とダナは黙って先輩の言うことを黙って聞くしかない。
「そうだパット、同じ王都にいる姉さんに連絡をつけてみたら? 商売してるって言ってだたろ。知り合いも多いはずじゃないか?」
「私も考えたけど、何しろお嫁に出た人だし、手紙のやりとりなら頻繁だけど、手紙じゃ間に合わないかもしれない」
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少しだけギクリとしたのは、どうしても出席しなければならないとなった時、最後にはそれでもいいかと思っていたからだった。
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「場に応じた服装は重要だ。隊服で行ったら笑われるどころではなく、主催者に失礼だと取られる。くれぐれも間違いを犯すな。お前ひとりの問題ではなく、近衛全体の恥になる事案になるぞ」
「わかりました」
しゅんとすると、先輩は仕方のない子供を見るような顔をする。
「社交の場ってのは面倒だ。好きな女性の方が多いのだろうが、私は昔から苦手だった。ドレスにも流行りすたりがある。そのシーズンの流行りの色や形があるし、その場に相応しい装いも決まっている。しかし……」
「しかし?」
「今回のそれの場合は何ともな。私はその団体の夜会に出たことがない。チャリティーか。どの程度の正装が正解なのかいまいちわからん」
先輩は小さく溜息をついて、膝の腕にいるルルを手の平全体で撫で顔を上げ口を開く。
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