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ロミーとルルアは帰っていった。
ルルアの体調からしてもしかしたら小屋に帰ってくる可能性もあると考えたのだが、体に負担のかかる帰還でもロミーは強行したようだ。
前庭にも家には人の気配がないのだが、そこに出された卓と、その上に倒れている果実の残骸が宴の後を思わせる。
アスランは泉から汲んできた水を卓に向かって豪快にかけ、残っていた果実と匂いを流した。
アスランは泉で自分についての話した後、コウを寝室に連れ込んでいた。
疲れて眠ってしまっているコウを置いて外に出てみればやはりこのあり様で嫌になったのだが、ロミーとルルアがやってきたのは結果的によかったのかもしれない。
複数でお喋りしながら飲み食いするのも初めて、そして友達ができたのも初めて。
コウにとっては刺激が多く気も張っていたのだろう。いつもであればベッドでアスランが動く気配があれば身じろぎくらいはするのだが、今はそれさえもなくぐっすりと眠っている。
アスランは水で濡れる卓をみながら、愉快そうに微笑んだ。
たった一人で過ごすはずだったのに、どうしてここまで賑やかになったのだろう。
アスランがこの神域ビブレスに来てすぐに小屋を訪問してきたのは精霊だった。ガマの姿で抱けなどと我慢ならないことを言うので投げつけた。
そして次にやってきたのはジイだった。
一人でここは寂しいだろう、国には戻らないと言うし番も持たず、まだ若いのに意欲のないアスランに、ジイは番を持てと言った。
アスランはそれを聞いているふりをしながら、それでも無碍にはできず適当な言葉を並びたてた。
そしてすぐさまやってきたのがロミーで、家の前には荷物が転がっていたのだ。荷物の中身がコウだった。
ジイは本物の結びの神になったのかもしれない。
本来であればジイの方が先に引退していてもおかしくないのだがとアスランは国いる同胞を思った。
ジイは長年、王に次ぐ宰相職についている。
引き続き宰相のまま今世国王をサポートするので忙しいし、何しろ年を重ねた老龍だ。その身は五十代と若々しく見えるが中身はそうではないから、神域に何度も出入りするには体力がもたない。ジイはもうここへは来ないだろう。
そしてロミー。
あの遠縁は何かとすばしっこくアスランとは年も近いくせに、ここぞという面倒事からは上手く逃げおおせる才能に長けている。
あのひょろりとした頼りない見かけは、王座を逃れるための策略のひとつではないかとつい穿ってしまう。そうすれば、二人が並べばどうあってもアスランの方が目立ってしまうのだ。
本当は顔立ちも身長もそう違いがないはずなだが。
おかげで王位を継ぐことになったのは今でも恨めしい。
俺面倒は嫌だもん、と番も求めることもせずふらふらとしているロミー。
名前のある役職には決してつかずただの文官として働き、たまにジイの間諜のようなことをして各地を飛び情報を集めていた。たまに非情さをうかがわせる時があって、アスランでさえも薄ら寒くなる。
とは言ってもここ数年は今世国王の即位に忙しく、リジルヘズの城で大人しくしていたはずだ。
そのジイとロミーの荷物が思わぬ幸運をアスランにもたらすことになった。
コウと出会い、その匂いを嗅ぎ、初めて自分の鼓動がこれほど高鳴るのかとドキドキした。
そのコウと暮らすことになってから、今度は亀の格好で精霊がやってきた。エロ神のように卑猥なこと言うのでコウの教育上よくないと判断し潰してやった。
そしてまたまたロミーがやってきて、とんでもない爆弾猫ルルアを運んできた。
静かな保養地であるはずのビブレスは時に騒がしかった。
しかしもうここへは何も誰も来ないだろう。最多訪問数をほこるロミーも。
アスランはそう思っていた。
ルルアの体調からしてもしかしたら小屋に帰ってくる可能性もあると考えたのだが、体に負担のかかる帰還でもロミーは強行したようだ。
前庭にも家には人の気配がないのだが、そこに出された卓と、その上に倒れている果実の残骸が宴の後を思わせる。
アスランは泉から汲んできた水を卓に向かって豪快にかけ、残っていた果実と匂いを流した。
アスランは泉で自分についての話した後、コウを寝室に連れ込んでいた。
疲れて眠ってしまっているコウを置いて外に出てみればやはりこのあり様で嫌になったのだが、ロミーとルルアがやってきたのは結果的によかったのかもしれない。
複数でお喋りしながら飲み食いするのも初めて、そして友達ができたのも初めて。
コウにとっては刺激が多く気も張っていたのだろう。いつもであればベッドでアスランが動く気配があれば身じろぎくらいはするのだが、今はそれさえもなくぐっすりと眠っている。
アスランは水で濡れる卓をみながら、愉快そうに微笑んだ。
たった一人で過ごすはずだったのに、どうしてここまで賑やかになったのだろう。
アスランがこの神域ビブレスに来てすぐに小屋を訪問してきたのは精霊だった。ガマの姿で抱けなどと我慢ならないことを言うので投げつけた。
そして次にやってきたのはジイだった。
一人でここは寂しいだろう、国には戻らないと言うし番も持たず、まだ若いのに意欲のないアスランに、ジイは番を持てと言った。
アスランはそれを聞いているふりをしながら、それでも無碍にはできず適当な言葉を並びたてた。
そしてすぐさまやってきたのがロミーで、家の前には荷物が転がっていたのだ。荷物の中身がコウだった。
ジイは本物の結びの神になったのかもしれない。
本来であればジイの方が先に引退していてもおかしくないのだがとアスランは国いる同胞を思った。
ジイは長年、王に次ぐ宰相職についている。
引き続き宰相のまま今世国王をサポートするので忙しいし、何しろ年を重ねた老龍だ。その身は五十代と若々しく見えるが中身はそうではないから、神域に何度も出入りするには体力がもたない。ジイはもうここへは来ないだろう。
そしてロミー。
あの遠縁は何かとすばしっこくアスランとは年も近いくせに、ここぞという面倒事からは上手く逃げおおせる才能に長けている。
あのひょろりとした頼りない見かけは、王座を逃れるための策略のひとつではないかとつい穿ってしまう。そうすれば、二人が並べばどうあってもアスランの方が目立ってしまうのだ。
本当は顔立ちも身長もそう違いがないはずなだが。
おかげで王位を継ぐことになったのは今でも恨めしい。
俺面倒は嫌だもん、と番も求めることもせずふらふらとしているロミー。
名前のある役職には決してつかずただの文官として働き、たまにジイの間諜のようなことをして各地を飛び情報を集めていた。たまに非情さをうかがわせる時があって、アスランでさえも薄ら寒くなる。
とは言ってもここ数年は今世国王の即位に忙しく、リジルヘズの城で大人しくしていたはずだ。
そのジイとロミーの荷物が思わぬ幸運をアスランにもたらすことになった。
コウと出会い、その匂いを嗅ぎ、初めて自分の鼓動がこれほど高鳴るのかとドキドキした。
そのコウと暮らすことになってから、今度は亀の格好で精霊がやってきた。エロ神のように卑猥なこと言うのでコウの教育上よくないと判断し潰してやった。
そしてまたまたロミーがやってきて、とんでもない爆弾猫ルルアを運んできた。
静かな保養地であるはずのビブレスは時に騒がしかった。
しかしもうここへは何も誰も来ないだろう。最多訪問数をほこるロミーも。
アスランはそう思っていた。
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