甘いのどっち?

宇井

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噛んで舐めて

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 あれよあれと言う間に僕は、四つんばいの体勢になっていた。
 お尻を天上に突き上げているのに、腰にまわったマイカの手が動きさらに角度をつけるから、僕の顔は枕に埋まって肘と肩で体重を支える。

 明るい闇を作る、開け放たれたカーテン。
 僕の抵抗なんてマイカに敵うわけなくて、僕は枕を必死に抱えて息を整えた。
 こんなのいやだ。丸見えにもほどがある。
 マイカの顔も見えなくて感情が伝わらないのも怖い。最初にマイカにいたずらされた時も、背中に体温を感じてなかったら辛かっただろうと思う。あの後、本当は結構尾を引いたんだ……
 屈辱的なポーズを強制されるのって、心も征服されるみたいで憧れだった。
 けど実際にやってみないとわからない事ってあるんだ。バックが好きだなんて言える日が来るのかな……

 ふーっと冷たい息が僕の蕾に当たる。マイカが口をすぼめて息を吹きかけたのだ。マイカの顔が一番秘めておきたい場所であるお尻のすぐそこにある、そう思うと羞恥で震える。
 冷気ですぼまった場所にマイカの指がつんとかかった。
 香油は使っていないみたいで、ぬるついた感覚は訪れない。

「ノアの蕾は肌と同じ色だね。皺も細かくて、キレイだ」

 その一つ一つを広げるように、マイカの指が孔を一周する。

「あ……」

 たまに指がつっかえて、敏感な肌を外へ引っ張る。
 その度にマイカの息が荒くなって、信じられないほど大きな唾液を嚥下する事が聞こえた。

「すごいよノア、ちらりと見えるピンク色が堪らない。恥じらってすぐ隠れてしまうけど、それが誘っているようだ」
「あぁ……やめて……」

 マイカが僕の蕾に食いついた。
 全てを口内に納めるように、パクリと。
 舌で蓋をするように密着させて、ぐりぐりと押す。その刺激で、僕の怯えていたちんこが一気に立ち上がった。

 お尻はマイカが舐めやすいように、左右に限界まで開かれている。その力が緩んだり、また広げられたりする度にお尻が揺れてしまう。
 入り口の何センチが奥がじりじりとむず痒くて、そこに触れて欲しいと血の流れが集中する。僕の孔はこれまでにマイカの指をすんなり受け入れる事ができるから、それを覚えてしまった体は素直に反応する。そして圧を受ける事を待ってしまう。

 あうっ……

 指とは明らかに違う物が、穴の中に入り込み這う。
 固い指とは違い、繊細な動きを見せるのは、尖ったマイカの舌。入り口をうねるり、上へ下へとのたうち回るように複雑な動きをする。けれど、あと少しの部分には届かない。きゅっと肉を窄ませ奥へ誘導するように力を入れると、マイカが息を呑むのがわかった。
 柔らかな棒になったマイカの舌は、前後運動に切り替わる。出入りが激しくなるのに、水音は控えめなのが卑猥で、僕は高くなりそうな声を抑えるしかなかった。

 キスする時に絡めた舌、甘いお菓子を溶かした舌、美しい紅色のマイカの舌が、僕の肛門を突き刺し犯している。
 でも、でも足りない。舌がどうやっても入っていけない場所が疼くんだ。
 
「マイカ、お願いだから、入れてっ……んはっ……ゆび……」

 ぴたりとマイカの動きが止まり、ベッド脇の引き出しから香油を取り出す。僕の願いは聞き入れられるようで、ほっとして泣きそうだ。
 さっきまで口許を引き縛っていたせいで、空気を求めて胸が上下する。

 ううっ……

 マイカの手の平で一度受け止められた香油が僕に伝う。
 温めきれていない粘度がぽたりと重く落ちる。
 お尻の割れ目を伝い、蕾を過ぎ、袋にねばつきながらシーツに落ち。まだ注がれ続けられる量は背骨に沿って首筋に降りる。

「うっ……」

 背中のとろみに気をやった途端、待ち焦がれた場所に温もりが触れる。
 それは決して中には入りこまず、音を楽しむように、ぴちゃぴちゃと揃えられた指が入り口を叩く。

「ノア、欲しいのは本当に指?」
「ふぇ……」
「それとも、こっち……?」

 枕から顔を上げ首を後ろにそらす。
 と、マイカは膝立ちになり片手で僕のお尻を割り、もう片方は自身を指で支えていた。
 今僕に当たっているのは……指じゃなくて、マイカの……おちんちん。
 僕たち、繋がるの!?

 驚きに目を見開くと、マイカは握った自分をまた僕に擦り付け始めた。入り口を縦に動き、時に袋を弄ぶ。肌触りのいいマイカの先端が蕾から無くなると、そこが切なくて泣きたくなる。また戻って来てようやくほっとできる。
 マイカのおちんちんは芯が固くて、その周りを弾力のある肉で覆っている。張っている部分との段差があって逞しい。僕のとは大違いのご立派な物だ。
 もしも……何も通った事がない僕の穴を、その芯がめりめりと裂いた時、僕はどうなってしまうんだろう。
 それでも柔らかい肉は僕の襞に隙間なく密着して、優しく擦るんだ。カリは僕を宥め、様子をみながら先を進みしっかり捉えて、出る時には爪痕を残すようにひっかいて、内臓を攫うようにえぐって全身を持って行くんだ。

「マイカ、入れて……」

 僕は必死にシーツに指を立てて、頭の中で生み出した快楽に耐え、懇願した。
 無意識は体はマイカを求め動き、先端からはだらだら涎を垂らすちんこが跳ね、僕のお腹や足を濡らす。

「これがノアの奥に入ったらどれだけ気持ちいいんだろうね。でも、ノアが大きくなるまでは封印。私のものを根元まで埋めたら、ひ弱なノアを壊してしまう」
 
 合間に吐息を挟みながら、マイカは半ば自分に言い聞かせるように連ねた。
 ここまで煽っておいてお預けなんて嫌だ。

「入れて、お願い……ねえ、まいかぁ」

 僕は自分がとてつもなく恥ずかしい事を行っている自覚なんて失っていて、バカみたいに入れて入れてと強請った。
 頭の中は繋がる事しかなくて、腰を揺らして、マイカの後を追う。
 先がストンとはまっと思って、ようやくと口許が緩んだ瞬間には外されて、どれだけお願いしても入れてはくれない。

「あぁ、ノア……はぁ……ゾクゾクする。でもごめんね。お預けだよ」

 マイカが身を引こうとするのを察して、僕は段々と下がっていってしまっていた腰を上げた。
 その時、どんなタイミングだったのだろう、ぬるっとした感触とともに、蕾が押し開かれる感覚がした。ぐわっと未知の領域が目覚める。
 マイカが入って来る。
 僕のすぼまりを物ともせず、そのカリが強気に跳ねかえす。
 ぬちゅってこれまで聞いたことのない音。それだけで達しそう。
 欲しいと動きをつけたのは僕。だけど不意の熱さに、僕はこれまでになく叫んだ。

「うわぁ……んっ」

 挿入には至らない、浅い結合。ほんの先っぽがちょっとめり込んだだけかもしれない。
 だけど僕はその熱の移動が、粘膜が吸い付く感覚が、数秒では済まされないほど長い時間にも感じた。
 意識が行き届いていなかったちんこが、どくりと脈打ち、きゅんと袋が縮む。
 もっと、奥に……でも……

「いっちゃ……ああんっ……」

 飛び出した白濁はどこにも受け止められず、僕の体を汚す。
 その後、お尻がぼわんと熱くなった。
 襞に皺に白濁を塗り込めるように、マイカの先がまだ僕を虐めている。
 ふっと力が抜けて、腰がベッドに落ちる。僕の背中に被さり、体重を預けるマイカも脱力していた。
 まだ上気しているお互いの肌がくっついて離れない。

「ちょっとだけ、入っちゃった……?」
「少し沈み込んだんだよ」
「うそ……それだけで、あんなに気持ちいいの。僕、飛んでしまうかと思った」

 極限まで高められたせいで、僕もマイカも暴発……ちょっと笑える。
 くすっと声に出すと、マイカが僕の耳をかかる髪も気にせず噛んだ。
 加減しているのだろうけれど、思わず顔を歪めるほど痛い。
 甘い痺れの残った体には、その痛みだけがリアルに感じられた。

「ノア痛い?」
「痛いに決まってる……」
「本番は、きっともっと痛く苦しい。できればノアには、快楽だけを与えたい。でもその痛みを与えるのが私であると思うと、胸がざわついて落ち着かない。受け入れる苦しみに耐えるノアを、この目に焼き付けてみたいとも思う」

 今日は、マイカの方が変態だね。
 でももう耳を食むのは止めてって、体を捻じって見上げると、マイカは僕の肩に齧りついた。

「いたっ……」

 今度こそは声が抑えられなかった。これ絶対に歯型が残る。
 じんとした痛みが皮膚の奥へ沁みて、散ろうとする衝撃をなかなか引かせない。
 僕はその中に痛覚だけでない何かを感じ取ろうと、ぎゅっと目を閉じた。
 ぺろぺろとマイカの舌が這う。
 鞭のあとの飴は極上で、僕は鼻から抜ける息とともに、どちらの感覚も受け入れた。
 痛み、それを紛らわせる慰め。ジワリと顔を出すのは、小さな快感。
 もっと噛んでいい。僕にマイカを刻み付けていい。だけど、その後はこんな風にただ優しくして欲しい。
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