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第八章 後悔、そしてその先へ

4. 決心

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 仕事を終えると、できる限りのスピードで彩子の家へ向かった。

 鍵を開けてドアを引いてみれば、それは抵抗なく開いていった。約束通りドアチェーンはかけずにおいてくれたようだ。


 家の中は真っ暗で物音もしない。そっと寝室を覗いてみれば、ベッドに横たわる彩子の姿があった。

 それを確認して洋輔はようやく安堵の息を漏らした。


 彩子はパジャマに着替えた状態で眠っている。本格的に寝ているのだろう。

 洋輔は彩子のそばによると、そっとその頭を撫でた。

 彩子の存在を感じたくて触れていたかったのだ。


 しばらくそうしていると彩子が身じろぎをして、そっとその目を開いた。何度か瞬きをしたあとに洋輔に視線を合わせると彩子はふわりと微笑んだ。

「ごめん、起こしちゃった?」
「ううん、大丈夫」
「どう? 具合は」
「うん、落ち着いたよ。しっかり寝たから」
「うん、ならよかった。ご飯は食べた?」
「軽く食べた」
「うん、わかった。何かいるものはある?」
「ううん、大丈夫」
「じゃあ、寝てて?」
「うーん、でも目覚めたから、いったん起きようかな。洋輔はご飯は?」

 ここで洋輔のことを気にするのが彩子らしい。

「まだ食べてないけど、お弁当買ってきたから、それ食べるよ。他にもゼリーとかいろいろ買ってあるから、食べられるものあったら彩子も食べて?」
「ふふっ、うん。ありがとう」



 明るい電気の下で彩子を見てみれば、顔色は随分よくなっているようだった。

 今は洋輔が買ってきたゼリーをおいしそうに食べている。

「顔色よくなってよかった」
「うん……心配かけてごめん」
「ううん。彩子が元気ならそれでいい」
「うん……ありがとう」
「彩子」
「ん?」

 好きだと言いそうになって、洋輔は慌ててその言葉を飲み込んだ。

 今、それを言えば傷つけてしまう。全部を伝えたあとでなければならない。

「お風呂もらっていい?」
「うん、いいよ」


 洋輔はシャワーを浴びながら、精神統一を図った。

 今夜すべてを伝えるつもりだ。

 それをしたとき、彩子と自分がどうなるのかわからない。正直こわいとも思う。だがここを乗り越えなければ二人の未来はないのだ。

 洋輔は気合を入れるように大きく息を吐きだした。
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